2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下、「サブリース新法」といいます)が施行され不動産投資に新しいルールが加わりました。サブリース新法は、全46条の条文と附則で構成されており条文のボリュームが多い傾向です。そのため不動産投資家のなかには、以下のように感じる人もいるかもしれません。
- なぜサブリース新法が施行されたの?
- 不動産投資家にとってのサブリース新法の要点は?
- サブリース新法は不動産投資家にどのような影響があるの?
本記事では、サブリース新法の概要および施行の背景を述べたうえで不動産投資家に関わる重要なポイントを4つ紹介します。
「サブリース新法」とは?
サブリース新法とは、従来のサブリースにおいてオーナー(不動産投資家)とサブリース業者との間で問題になりやすかった点のルールを明確化するために施行された法律です。オーナーとサブリース業者との問題を未然に防止し良好な賃貸住宅を確保することを目的としてサブリース事業で必要な規制を設けるために施行された法律といえます。
サブリース新法が施行された背景は?
サブリース新法が施行された背景には、以下のような社会的情勢の変化があります。
- 単身世帯や外国人居住者の増加
- 少子高齢化等による賃貸住宅の重要性の増大
- 相続等に伴って不動産賃貸事業を開始するなど事業経験の浅いオーナーの増加
- 賃貸管理やサブリースをする業者の増加
世帯の多様化によって賃貸住宅のニーズが高まっています。そのなかで事業経験の浅いオーナーやサブリース事業に参入する業者が増えているため、賃貸住宅を取り巻く環境の質を保つためのルールを定めたというわけです。またオーナーへサブリースのリスクに関する説明が十分になされておらずサブリース契約が適切に締結されなかった事態が多発したことも背景の一つといえます。
具体的には、以下のような事項をオーナーが正しく理解しないままサブリース契約を締結した結果、家賃減額や契約解除などに関するトラブルが発生している実態が反映されているのです。
- サブリース業者がオーナーに支払う家賃が将来的に変更され得る可能性があること
- オーナーからサブリースの解除を申し出る場合の条件など
サブリース新法の施行で不動産投資はどう変わる?4つの重要ポイント!
オーナーにとってサブリース新法のなかで特に重要なポイントは、以下の4つです。
- 誇大広告等の禁止
- 不当な勧誘行為の禁止
- オーナーへの重要事項説明の義務化
- 登録制の導入による賃貸管理業の適正化
いずれもサブリースをはじめとする賃貸住宅の管理におけるルールを適正化しトラブルの防止とオーナーの保護を目的としています。
誇大広告等の禁止
誇大広告等の禁止は、サブリース新法第28条に規定されています。相手を誤認させるために実際より優良と見せかける「誇大広告」に加えて虚偽の表示により相手をあざむく「虚偽広告」が「誇大広告等」として定められているのです。具体的には、以下のような事項についてサブリース業者が広告を行う際に明瞭かつ正確な情報を記載することが求められています。
- オーナーがサブリース業者に支払う家賃の金額、支払期日、支払方法等の賃貸の条件ならびにその変更に関する事項
- 賃貸住宅の維持保全(清掃や設備点検等)の実施内容、頻度、実施期間等
- 上記維持保全のための費用負担に関する事項
- 契約の解除に関する事項
誇大広告等に該当するか否かは、上記事項に関する広告における文言の言い回しや記載場所、それを見たオーナーが受ける印象や認識などから総合的に判断される傾向です。国土交通省によると以下のような文言は、誇大広告等に該当するおそれがあると示されています。
- 「○年家賃保証!」「支払い家賃は契約期間内確実に保証!一切収入が下がりません!」等の表示
- 「○年家賃保証」等の記載から離れた箇所に、家賃の定期的な見直しがあること等のリスク情報が表示されている
- 「サブリースなら不動産会社が家賃保証するので安定した家賃収入を得られます」等、サブリース契約のメリットのみの表示
- 「30 年一括借り上げ」「契約期間中、借り上げ続けます」「建物がある限り借り続けます」等のみの表示で、サブリース業者からの途中解約の可能性についての言及がない
- 「いつでも自由に解約できます」等のみの表示で、オーナーからの解約申出時の条件について言及がない
不当な勧誘等の禁止
不当な勧誘等の禁止は、サブリース新法第29条に規定されています。同条においては、オーナーが契約に関する正しい情報を認識しておらず正しい判断ができない状態で契約をしてしまう事態を避けるため、「不当な勧誘等」として以下2つの行為を禁止しています。
- サブリース業者等(勧誘者を含む)がサブリース契約を締結するため、または契約解除を妨げるためにオーナーの判断に影響を及ぼし得る事項について故意に事実を告げない、または不実のことを告げる行為
- サブリース契約に関するサブリース業者等の行為のうち、オーナーの保護にかける行為
上記禁止行為に該当するか否かの判断は、オーナーの判断に影響を及ぼし得る重要な事項について事実の不告知・不実告知や契約の解除を妨げる行為があれば足りるとしています。そのため「実際にオーナーが契約を締結したか」「契約解除を妨げられたか」については問われません。国土交通省によると以下のような行為は、不当な勧誘等に該当するおそれがあると示されています。
- 将来的な家賃減額リスク、サブリース業者からの途中解約の可能性、オーナーからの解約は「正当事由」(借地借家法28条)がなければすることができない等の事実を告げず、メリットのみを伝える行為
- 「都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる」「サブリース事業であれば家賃100%保証なので絶対に損はしない」「家賃収入は将来にわたって確実 に保証される」等のことを断定的に告げる行為
- マーケットの実情とは異なる説明を行い、「周辺相場よりも当社は高く借り上げることができる」「周辺相場を考慮すると、当社の借り上げ家賃は高い」等のことを告げる行為
- 契約の申し込みの撤回もしくは解除を妨げるためにオーナーを威迫する行為
- オーナーの私生活や業務の平穏を害する執拗または長時間にわたる勧誘行為
オーナーへの重要事項説明の義務化
オーナーへの重要事項説明の義務化は、サブリース新法第30条に規定されています。同条では、オーナーに賃貸経営の経験や専門知識に乏しい人が多くサブリース業者との間に大きな情報格差があることに鑑み、オーナーにサブリース契約の内容を正しく理解させたうえで契約締結をすることを義務付けています。
具体的にサブリース業者は、オーナーに対して契約締結までに以下の項目をはじめとする14の項目について書面を交付して説明しなければいけません。(一部のみ抜粋)
- 契約期間に関する事項
- オーナーに支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件ならびにその変更に関する事項
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
- 上記維持保全のための費用の負担区分
- 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
- 契約の更新および解除に関する事項
- オーナーからサブリース契約の更新を拒絶する場合の法的要件 など
登録制の導入による賃貸管理業の適正化
賃貸管理業者の登録制度については、サブリース新法第3条に規定されています。自分で所有・管理している物件を除く賃貸住宅管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者に対して賃貸管理業登録が義務付けられました。登録には、審査があり一定の法定事項に該当すると国土交通大臣により登録が拒否されることもあります。
登録の有効期間は5年間です。有効期間満了後に更新申請がない場合は、有効期間満了と同時に登録抹消となります。本登録制度には、審査と有効期間があるため、以下のような業者は登録を受け続けることができません。
- 過去に破産をしている
- 刑に処されたことがある
- 賃貸住宅管理業に関して不正または不誠実な行為をするおそれがある
- 賃貸住宅管理業を遂行するための財産的基礎がない など
登録制の導入によってサブリース業者の安全性と業務の質を担保する効果が期待できるでしょう。
リスクの確認は不動産投資家も能動的に行いましょう
サブリース新法は、オーナーがサブリースに関してトラブルに巻き込まれ賃貸経営が破たんしたり賃貸住宅の質が低下したりするリスクを軽減するというオーナーおよび入居者の保護の観点から施行された法律です。誇大広告や不当な勧誘の禁止、重要事項の説明義務化等によってオーナーに対してサブリースのリスクが明確に示される体制になりました。
しかしオーナーは、決して受け身になることなく自身でも能動的にリスクの確認とリスクヘッジ策を準備する姿勢が必要です。
(提供:YANUSY)
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