新規事業やイノベーションを目指す経営者にとって、「魔の川・死の谷・ダーウィンの海」は無視できないものだ。事前に対策を考えておかないと、思わぬ失敗を招くリスクが高まる。本記事ではビジネスで注意したい3つの障壁と、成功に導くポイントをまとめた。
目次
魔の川・死の谷・ダーウィンの海とは?
魔の川・死の谷・ダーウィンの海とは、企業が技術経営で直面する障壁である。通常、技術経営は「研究・開発・事業化・産業化」の流れで進められるが、次の段階へと進む際には問題を抱えることが多い。このときに各段階で立ちはだかる障壁が、魔の川・死の谷・ダーウィンの海と表されている。
元々、魔の川・死の谷・ダーウィンの海はテクノ・インテグレーション社の代表取締役である出川通氏の著書(※)で提唱されたといわれている。簡単に言い換えると、新規事業やイノベーションを阻むハードルであり、特にスタートアップやベンチャー企業にとっては死活問題になりやすい。
(※)参考:光文社「技術経営の考え方 MOTと開発ベンチャーの現場から」
魔の川とは?
魔の川とは、「基礎的な研究」と「製品化」の間に存在する関門である。いくら研究に力を入れても、製品化の見込みが立たないとコストが水の泡のように消えてしまうため、その様子を川にたとえて”魔の川”と呼ばれるようになった。
魔の川は、準備段階である「シード期」に発生する障害であり、ここでつまずくと開発の本格化や製品化には進めなくなる。テストマーケティングさえできない状態であるため、魔の川を超えない限りは基礎研究に費やしたコストが無駄になってしまう。
世の中にはさまざまな商品がありふれているが、実際に研究開発の段階でとん挫するプロジェクトは多く存在する。その主な要因は、現代の多様化したニーズや経済活動と言われている。
特にイノベーション市場は移り変わりが激しいため、研究開発に時間をかけすぎると流行やブームが過ぎ去り、まさに魔の川にはまった状態になってしまう。
死の谷とは?
製品化の目途がたっても、その技術やプロジェクトを市場に投入できるとは限らない。事業化段階へと進む際にも困難に直面することは多く、この障壁は「死の谷」と呼ばれている。
死の谷はアーリー期に直面する障害であり、調達・生産・流通の土台を構築する必要がある。研究段階よりも多くの資源を投入することになるため、この段階でつまずくと大きなダメージにつながる恐れがある。
また、生産ラインや流通チャネルは将来のコスト・労力に関わるため、単に実装するだけではなく効率も意識しなければならない。
ダーウィンの海とは?
3つの目の障壁であるダーウィンの海は、「市場投入」から「プロジェクトの完遂(成功)」の間に存在する関門だ。市場に投入された商品は、競合他社や顧客からの要求といった脅威にさらされ、まるで荒波にもまれたような状態になる。
このときに競争力や適応力がないと、企業は生存競争から淘汰され、最終的には市場から追い出されてしまう。このような一連の流れがダーウィンの進化論と重なるため、市場投入を迎えてから直面する障壁は“ダーウィンの海”と呼ばれるようになった。
ちなみに、魔の川・死の谷を乗り越えても、ダーウィンの海で溺れたプロジェクトは失敗とみなされる。