一般的に不動産物件を売却する際は、不動産会社と媒介契約を結ぶことになります。その際、契約には3つの方法があるため、あらかじめ内容を知っておくことが必要です。本稿では、専任媒介契約のメリット・デメリットや一般媒介契約との違いを解説します。

目次

  1. 専任媒介契約とは
  2. 一般媒介契約とどう違う?
  3. 専任媒介契約のメリット
    1. 買主が早く見つかる
    2. 買主と仲介手数料なしで直接取引できる
    3. 不動産会社とやりとりしやすい
  4. 専任媒介契約のデメリット
    1. 囲い込みをされるリスクがある
    2. 営業社員の力量によって結果が左右される
  5. 専任媒介契約はこんなときにおすすめ
  6. 専任媒介契約で不動産会社を選ぶポイント
    1. 宅地建物取引業の免許を取得している不動産会社
    2. 売却の実績が豊富な不動産会社
    3. おとり広告や囲い込みをしない不動産会社

専任媒介契約とは

専任媒介契約がおすすめのケースとは?メリット・デメリットや一般媒介との違い
(画像=ururu/stock.adobe.com)

「専任媒介契約」とは、1つの不動産会社のみと契約することができ、自分で買主を見つけたときでも売買取引ができる媒介契約です。似たような名前の方法に「専属専任媒介契約」があります。こちらは、1社のみ契約ができるものの自分で買主を見つけた場合でも売買取引をすることはできません。専任媒介契約の契約期間は、最長3ヵ月と法律で決められています。

そのため3ヵ月以内であれば1ヵ月、2ヵ月の短期契約も可能です。仲介手数料は、専任媒介だけでなく専属専任媒介や一般媒介契約のいずれも上限は「物件価格×3%+6万円+消費税」の速算式で算出した手数料で共通しているため、契約方法による仲介手数料の損得はありません。契約期間中の中途解約については、条件付きで可能です。

例えば「不動産会社が積極的な営業活動を行わない」「定められた2週間に1回の活動状況の報告をしない」など不動産会社側に非がある場合が該当します。他にも「自分で買主を見つけた」「転勤のため売却する予定だったが転勤がなくなった」など売主側のやむを得ない事情が該当する場合もあります。

一般媒介契約とどう違う?

専任媒介契約は「一般媒介契約」と比べてどのような違いがあるのでしょうか。専任媒介契約では、1社の不動産会社と契約ができるのに対し一般媒介契約は複数と契約ができます。契約期間も専任媒介契約と専属専任媒介契約が最長3ヵ月と決まっているのに対し、一般媒介契約は上限がありません。ただし多くの不動産会社は、国土交通省推奨の標準約款に合わせて3ヵ月と設定している傾向です。

さらに一般媒介契約は、自分で買主を見つけることもできるため、最も縛りが緩い契約方法といえます。そのため人気の高いマンションなどは、一般媒介契約にして複数の不動産会社に依頼したほうがより高く売れる可能性があるでしょう。しかし人気の物件以外は、専任媒介契約で営業担当者と相談したうえで売却を進めるのが理想といわれています。

専任媒介契約のメリット

専任媒介契約には、以下のようなメリットがあるため、後述するおすすめのケースに当てはまる場合は検討するとよいでしょう。

買主が早く見つかる

不動産会社にとって専任媒介契約なら契約となった場合、確実に手数料が入るため、一般媒介契約よりも力を入れて買主を探してくれる可能性があります。結果的に一般媒介契約よりも早く買主が見つかることが期待できるでしょう。

買主と仲介手数料なしで直接取引できる

不動産売買においては、仲介手数料も大きなコストの一つです。専任媒介契約では、自分で買主を見つけた場合でも取引できるため、売買が成立すれば仲介手数料を節約できます。不動産会社に依頼しながら自分でも買主を探したい人に向いている契約方法です。

不動産会社とやりとりしやすい

契約している不動産会社が1社のみとなるため、買主が見つかった場合、別の会社からの連絡を待つことなく決定することができます。一般媒介契約で複数の不動産会社と交渉している場合は、連絡の頻度が増え対応に時間をとられてしまう点はデメリットです。また買主が見つかったときに他の不動産会社へ都度断りの連絡をしにくい一面もあります。

専任媒介契約のデメリット

専任媒介契約には、1社限定となるため、次のようなデメリットがあります。いずれも買主が見つかるのが遅くなりかねないため、注意が必要です。

囲い込みをされるリスクがある

不動産の仲介方法には、「両手仲介」と「片手仲介」があります。

・両手仲介
売主と買主の双方から依頼を受けて契約する方法です。売買が成立した場合、双方から仲介手数料を受け取れるため、不動産会社にとっては理想的な仲介方法といえます。

・片手仲介
売主と買主が契約している不動産会社が異なり、双方の不動産会社同士が交渉を行って売買取引を成立させる方法です。この場合、各不動産会社は売主と買主の片方からしか手数料を受け取れません。そのため他社経由で購入の問い合わせがあったとき「すでに買主が決まっている」と事実と異なる回答をして自社に直接問い合わせがあった場合のみ交渉を開始する不動産会社もあります。

このように両手仲介を意図的に作り出す行為が「囲い込み」という手法です。専任媒介契約の場合は、質の悪い不動産会社なら囲い込みされる可能性があることを心得ておく必要があります。

営業社員の力量によって結果が左右される

専任媒介は、1社のみとしか契約できないため、担当する営業社員の力量が足りない場合、売買成立が遅くなる可能性がある点はデメリットです。また担当者の交渉力が弱いと売主の希望通りの価格で売却できず、結果的に多少値引きして売買が成立するリスクもあります。複数の不動産会社に依頼すれば担当者の力量を比較できるため、より有能な担当者を中心に交渉を進めることが可能です。

営業社員の質に不安がある場合は、一般媒介にしたほうが無難でしょう。

専任媒介契約はこんなときにおすすめ

専任媒介契約を選んだほうがよいケースがあります。

・急いで売却したいとき
専任媒介契約を結ぶ場合は、契約日から7日以内にレインズ(不動産流通標準情報システム)への登録が必要です。レインズに登録すると売りたい物件の情報が全国の不動産会社に共有されます。他の不動産会社から当該物件に購入の問い合わせがあると双方の不動産会社でやり取りを行うのが特徴です。見込み客が増えることで早く売れる可能性が高まります。

また売主が仕事を持っていて複数の不動産会社と取引する手間をかけたくない場合もおすすめです。専任媒介契約にすれば買主の募集から問い合わせへの対応、内覧の受付、売買成立後の契約まで1つの不動産会社に任せられるため、忙しいビジネスパーソンなどには適した契約方法といえます。

・買い手が付きにくい物件を売却したいとき
郊外の不動産など立地条件があまりよくなく買い手が付きにくい物件を売却したい場合は、専任媒介契約にするのがおすすめです。なかには「一般媒介契約にしたほうが複数の不動産会社が募集をかけるので早く決まるのでは?」という感じる人もいるかもしれません。しかし専任媒介で依頼されている物件の成約に力を入れるのは、どの不動産会社も同じです。

そのため専任媒介契約にしたほうが逆に早く買い手が見つかる可能性が高まるといえるでしょう。

専任媒介契約で不動産会社を選ぶポイント

専任媒介契約を結ぶ際は、どのようなポイントで不動産会社を選べばよいのでしょうか。上場不動産会社であればコンプライアンス(法令遵守)が徹底されているのであまり気にしなくてもよいかもしれません。しかし地場の不動産会社の場合は、以下の3つのポイントを特にチェックする必要があります。

宅地建物取引業の免許を取得している不動産会社

最低限のチェックしたいポイントは「宅地建物取引業の免許があるかの確認」です。確認方法は、当該不動産会社が発行した売り出しチラシやWebサイト上などに登録番号が掲載されているため、簡単に確認できますが、万が一登録番号の記載がない場合は、無免許で経営している可能性があります。併せて国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索するなど、不動産会社が宅地建物取引業の免許を登録しているかどうか確認するようにしましょう。

売却の実績が豊富な不動産会社

売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶことも大事です。不動産会社には、売買が得意な会社もあれば賃貸が得意な会社もあります。販売実績をホームページで公開している不動産会社の場合は、ネットで実績を確認することが可能です。公開していない場合は、店舗に貼りだしている物件情報に「成約済み」の文字が多い会社なら活発に営業活動を行っていると判断できます。

おとり広告や囲い込みをしない不動産会社

おとり広告を出していたり前述した囲い込みを行ったりしている不動産会社は、要注意です。自社に優良物件があることをアピールするためにすでに売却済みの物件を現在も販売しているかのように見せかけている不動産会社もあります。あまりにも条件が良いのに長期間販売を続けている物件があった場合は、おとり広告の可能性があるため、購入可能かどうか確認してみるのも一つの方法です。

「つい先日成約したばかりです」といった回答があれば不誠実な不動産会社の可能性があります。そのような会社は囲い込みも行っている可能性があるため、特に注意が必要です。専任媒介契約と一般媒介契約には、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分が置かれている状況に合わせて最適な方法を選択しスムーズに物件を売却することを目指しましょう。

(提供:YANUSY

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