マーケティング理論には、行動経済学を活用した考え方が数多くある。その中のサンクコスト効果は、経営者にとって致命的な問題を引き起こす原因になり得る。本記事では、サンクコストの意味やマーケティングに関する活用事例、対策などについて解説する。
目次
サンクコストとは?
行動経済学は、消費者の非合理的な消費行動の分析など、心理学や社会学の要素を含む、経済学の中でも比較的新しい理論だ。消費者だけに当てはまる学問ではなく、経営者の意思決定に深く関わるサンクコストのような考え方もある。早速、サンクコストの意味や事例などを解説していく。
サンクコストの意味
サンクコストは英語でSunk Costとあらわされ、日本語で埋没費用という意味を持つ。支払いが完了しても取り返せないコストである。サンクコストには、資金のほかに時間や人的リソースなども含まれる。
主に、金融業界ですでに投資された資金という意味で使われる言葉であるが、経営やマーケティングにも少なからず関わってくる。
サンクコスト効果はコンコルド効果と意味は同じ
ビジネスでは、想定した収益が得られないとわかった場合、撤退するのが合理的だ。
しかし、コストに見合った成果を出さなければ、これまでの行動が無駄になるという心理が働き、継続という非合理な決断をしてしまうことがある。
超音速旅客機開発のコンコルド計画が代表的な事例だ。コンコルドは、当時の旅客機と比べて2倍程度の速度で航行する旅客機だった。しかし、開発計画段階で想定以上のコストが発生し、収益の回収が困難という試算が示され、計画の中止も検討された。
最終的に、それまでのサンクコストへの固執によって、コンコルド計画は継続された。結果として、16機の量産を達成して運行が開始されたが、外部環境の変化や機体設計の限界もあって、2003年に定期運行は終了した。
合理的に考えればプロジェクトを中止すべきだったのかもしれない。
非合理的な意思決定プロセスは、コンコルドの誤謬(ごびゅう)として知られるようになった。サンクコストの事例としてもよく使われることから、サンクコスト効果はコンコルド効果とも呼ばれている。