サンクコスト効果を回避するための対策4つ
サンクコスト効果は、コンコルド計画のように非合理的な判断につながることが少なくない。経営上のサンクコストにはどのような対策が必要なのだろうか。
対策1.事業投資の撤退ラインを事前に決める
経営におけるサンクコストの呪縛は、新規事業投資や開発計画などで起こりやすい。
たとえばM&Aによる事業拡大では、買収対象の企業検索やデューデリジェンス、買収後の対応などで多大なコストが必要だ。調査段階でメリットが確認できたとしても、M&A後の人員配置やシステム統合などで想定外のコストが発生する場合もある。
しかし、M&Aのために支払ったコストに固執すると、自社の基幹産業に悪影響を及ぼしかねない。業績が悪化すれば本末転倒である。
買収先の事前調査はもちろん重要だが、M&A後のサンクコストに執着してしまうリスクも考慮しなければならない。そのために、明確な事業投資の撤退ラインを決めることが必要だ。
対策2.機会損失についても考慮する
不採算事業であっても、維持費や人的コストが生じる。市場のトレンドが変化する中でいつまでも不採算事業を継続していると、新しい商品開発や市場開拓の機会を失いかねない。
対策として、定期的に事業の投資状況を把握する必要がある。
たとえば中期経営計画の立案時には、機会損失によって失われている利益について考慮したうえで、サンクコストになっている事業の縮小も検討したい。
対策3.経営判断は独断で行わない
中小企業の経営者は、事業存続に向けて連続的な決断を迫られることが多い。ときには、感覚を頼りに独断するケースも珍しくない。
事業がサンクコストになる要因には、経営者の「もったいない」という心理が関係することもある。収益を圧迫する事業に注力すれば、社員のモチベーションが下がりかねない。
事業の経営判断には、コストの数値化による現状把握が不可欠だ。また、経営に深く関わる幹部社員や社外取締役など、第三者の意見を参考にしつつ冷静な判断を下す必要もある。
対策4.ゼロベース思考で見直す
サンクコストを抱えたまま新規事業の立ち上げや経営改善などの重要事項に取り組むと、柔軟な発想ができなくなり、最終的な方針決定においても判断に迷いが生じる恐れがある。
事業に関わる重大な意思決定をする際には、サンクコストは考慮せずに社員も交えながらゼロベース思考でさまざまな案を抽出しよう。期待収益を算出した上で必要なコストを分析し、リソースが足りないことが判明すれば、その時点でサンクコストの精算についても検討すべきだ。