サンクコストに惑わされず合理的な経営判断をしよう
サンクコストはすでに支払ったコストであり、事業では将来の意思決定に関係しない。
しかし、サンクコストには経営者の判断を鈍らせる魔力がある。事業の撤退が合理的でも、不採算事業を継続してしまうことが珍しくない。
サンクコストに固執すると、コストが膨れ上がって、事業に悪影響を及ぼすことがある。今回紹介した対策を参考にして、サンクコストに惑わされず合理的な経営判断をしてほしい。
サンクコストに関するQ&A
Q.サンクコストバイアスの例は?
自社商品の増産のために新規設備を導入した後に市場の飽和によって利益率が下がり、投資の回収が厳しくなっているにもかかわらず、同じ商品の生産を継続するといった例がある。
サンクコストバイアスは、「これまでの投資がもったいない」という気持ちが働いて起こるものだ。合理的に考えれば間違った判断であっても、継続して投資し続けてしまうという心理状態を指す。
Q.サンクコストの具体例は?
ビジネス上で利用されている具体例として、会員ランクによって付与される特典が異なるWebショッピングサービスやサブスクリプションサービスなどが挙げられる。
会員ランクがサービスの利用金額や契約期間によってアップし、ランクが高いほどポイント付与率や割引率が上がるという特典があるとする。サービスの利用を止めるとせっかく上がった会員ランクが下がってしまうため、これまでの投資が無駄になるという心理状態になり、継続的に課金してしまうのがサンクコスト効果だ。
Q.サンクコストのデメリットは?
他の事業に経営資源を振り分けるための余力がなくなる恐れがある。
サンクコストはすでに支払ってしまっているコストなので、将来的な意思決定には関係ない。それにもかかわらず、不採算化している事業に経営資源を割り当て続けていると、収益性の高い新たな事業に取り組むための人材、資金といったリソースがなくなり、結果として機会損失になるのがデメリットだ。
コンコルド効果はなぜコンコルドなのか?
コンコルド効果という言葉は、超音速旅客機コンコルドの開発計画の失敗を事例として誕生したからだ。
コンコルド効果はサンクコスト効果の別名として知られており、投資し続けることが損失拡大を招くとわかっていても、それまでの人的・時間的・金銭的コストを惜しんで投資を止められないという意味だ。
コンコルドは、当時の旅客機の2倍程度の速度で飛行できる旅客機として注目を集めた。しかし、ソニックブームや燃費、安全性などのさまざまな問題があり、開発段階から想定以上のコストがかかっていたのにもかかわらず、計画はそのまま継続された。
実用化は果たしたものの、結果的に投資回収ができないまま2003年に商業飛行が終了している。
サンクコストの反対語は?
サンクコストの反対語は「機会費用(opportunity cost)」である。機会損失とも呼ばれるもので、あるものに投資することで、他の事業や投資商品にコストを費やした時に得られた可能性のある見過ごされた費用のことを指す。
たとえば、10万円の資金があり、年利5%で運用できる投資商品があるのに、年利1%の商品だけで資産を運用したとすれば、「5,000円−1,000円=4,000円」の機会費用を逃したことになる。
文・隈本稔(キャリアコンサルタント)
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