急成長しているグリーンボンド市場

グリーンボンドの発行を世界で初めて行ったのは、2008年の世界銀行だ。その前年の2007年には、欧州投資銀行(EIB)がClimate Awareness Bondという呼称で債券を発行しているが、2008年に世界銀行が「グリーンボンド」という呼称で発行して以来、世界各国で順次グリーンボンドが発行されるようになった。

世界的に環境への関心が高まっていくなかでグリーンボンド発行額は増え続け、その市場規模は拡大しつつある。環境省のデータによると、全世界において企業や自治体が発行したグリーンボンドの年間発行総額は、2013年当時では109億米ドルだったが、5年後の2018年には1,828億米ドルと約17倍、10年後の2023年には5,693億米ドルと約52倍に増えている。2024年1月19日時点では、すでに315億米ドルが発行されている。

グリーンボンド市場は、世界規模で急成長中といえるだろう。

グリーンボンドの日本における展開

グリーンボンド市場は、日本においても勢いを増している。国内では、2014年に政府系金融機関が初めてグリーンボンドを発行したのを皮切りに発行件数、発行総額ともに順調に増えている。環境省によると国内でのグリーンボンド年間発行総額は2020年に1兆円を突破、以後も順調に増えており2023年の年間発行件数は120件、年間発行総額は約2兆9,734億円にのぼる。

民間企業によるグリーンボンドの発行も増加傾向にあり、トヨタファイナンスやニデック、セイコーエプソンなど主に大企業が発行主体だ。例えばトヨタファイナンスの場合、グリーンボンドによって集めた資金は、電気自動車を扱うトヨタ販売店への融資に充てられている。またニデックは電気自動車の開発、セイコーエプソンは環境にやさしい商品の開発などに融資されている。

一方で、中小企業でもグリーンボンドを発行した事例もあり、京都府にある株式会社カンポが2020年8月に京都府下の中小企業において初めてグリーンボンドを発行。同社では、固形燃料(RPF)の製造設備の改修を通して生産の効率化による電力消費量の抑制、ひいてはCO2の排出量の抑制を通じ、持続可能な社会の構築に貢献することを目的としている。

グリーンボンドのガイドラインであるGBP

グリーンボンドは、一般債券とは調達資金使途などにおいて異なる決まりがあることは上述したとおりだが、ここでは「グリーンボンド原則」(GBP)についても触れておこう。

グリーンボンドを発行する場合、国際資本市場協会(ICMA)が定めている自主的ガイドラインであるGBPに従うのが慣例となっている。GBPは2014年に策定されたが、その後も随時改定が行われ、2021年にも改定版が公表されている。

このGBPは柱ともいえる以下4つの原則を持っている。

①調達資金の使途(気候変動緩和策、気候変動適応策、自然環境保全、生物多様性保全、船対策のいずれかに貢献する事業が対象)
②プロジェクトの評価と選定のプロセス(投資家に対して評価・プロセス内容を伝達する)
③調達資金の管理(調達した資金は企業の財務諸表とは別勘定で管理する)
④レポーティング(資金調達の使途に関するレポーティングの内容を規定)

2021年の改定では、この4つの基本原則に加えて、新たに重要推奨事項として「外部レビュー」と「グリーンボンドフレームワーク」が追加されている。

「外部レビュー」とは外部レビュー機関が作成するレポートの内容や情報開示に関する規定で、外部レビュー機関が持つべき専門性や倫理的基準についても言及されている。

「グリーンボンドフレームワーク」とは債券に関する投資家向けの情報として策定するもので、改定原則のなかではグリーンボンド4原則との整合性(盛り込むべき事項)や事業選定の基準・認証制度(盛り込むことが奨励)に関して規定されている。