グリーンボンドの利回りにおけるグリーニアム現象

現在、投資家の間で環境問題に対する意識が高まり、グリーニアム現象という事態が起こっている。特にグリーンボンドの発行が進んでいる欧州で強く表れており、日本でも同様の兆候がみられる。以下では、企業にとって資金調達の機会が増えるグリーニアム現象とは何かについて詳しく説明しよう。

グリーンボンドが普通債よりも利回りが低くなる現象が生じている

グリーニアム現象とは、グリーンボンドの利回り(年間利益)が普通債よりも低くなる現象を指す。グリーニアム現象が起こると、投資家にとってはグリーンボンドよりも普通債を購入する方が多くの利益を得られる。そのため常識的に考えれば、グリーンボンドへの人気は低下していくことになる。

しかし欧州では、「地球の環境改善に貢献する」という点に価値を認めてグリーンボンドへの投資の応募が殺到し、利回りが低くても投資家の購入意欲が低下しない事態が起こっている。つまり、敢えて割高の債券を買うという状況が生じているのだ。

例えば、ドイツ政府は2020年の9月に10年返済のグリーンボンドを発行したが、発行額の3倍以上にのぼる投資の申し込みが殺到。その結果、グリーンボンドの利回りが、同じ返済年数の国債よりも0.01%低くなった。こうした状況はその後も続き、約半年後には0.01%から0.05%までその差は広がったのだ。

グリーニアム現象は投資する側にとって資産の運用低下を意味するのだが、地球環境を保護できるという達成感がその損失を埋めている。債券の発行主体である企業・自治体にとっては、低いコスト負担で資金調達を実現できるのだからお得な状況といえる。

日本でも起こりつつあるグリーニアム現象

グリーニアム現象は日本でも起こり得る兆候が生じている。というのも、「2050年までに温室効果ガス実質ゼロを目指す」という国家戦略が打ち出されたこともあってか、投資家のなかでグリーンボンドへの選好が生じているからだ。

実際、Jパワー(電源開発株式会社)が2021年1月にグリーンボンドを200億円発行したところ、投資家から1,000億円以上の応募があった。グリーンボンドへの需要は国内でも高まりつつあるわけだ。欧州と同様の事態が、日本にも到来しつつあるともいえる。

拡大するグリーンボンド市場に注目

グリーンボンドとは、企業や地方自治体などが環境事業に取り組むための資金調達をする際に発行する債券である。現在、グリーンボンド市場は世界的に急速に成長しつつあり、日本においても同様の現象が生じている。

ただし、グリーンボンドは発行する側、投資する側の双方に、メリットだけでなくデメリットもある。実際に発行する・投資する際は、デメリットへの対策を講じておくことも大切だ。

グリーンボンドへの需要は高く、今や普通債よりも利回りが低くなるグリーニアム現象まで生じている。日本は現在、脱炭素社会を目指して挙国一致で取り組んでいる最中だが、この状況が今後も続く限り、国内のグリーンボンド市場は拡大し続けるだろう。