今や「SDGs」や「環境」「エコロジー」などへの意識は、ビジネス成功や発展のための大切な要素である。なかでも近年、世界的に注目度を高めているのがグリーンボンドだ。
日本でも2020年10月、当時の菅総理大臣が所信表明演説のなかで「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」の目標を打ち出し、社会全体で環境問題への意識が急速に向上。それに伴い、グリーンボンドが改めて関心を集めつつある。
そこで今回は、グリーンボンドとは何かについて詳しく解説し、メリットやデメリット、利回りの実情などについて紹介していこう。
目次
グリーンボンドとは?
グリーンボンドとは、ひと言で説明すると環境改善等に必要となる資金を調達するために発行する債券だ。企業経営者であれば、債券が資金調達手段の一つとして発行するものであることはご存じだろう。ひとくちに債券といっても資金調達(調達した資金の使途)目的によって特定の名称で呼ばれるものがあり、近年では「SDGs債」もよく耳にする。
SDGs債は、環境・社会課題解決を目的として発行される債券で「グリーンボンド」のほか「ソーシャルボンド」や「サステナビリティボンド」などもSDGs債という債券の一つだ。
グリーンボンドとは環境事業の資金調達で発行される債券
発行目的は、資金調達であっても一般債券とグリーンボンドでは異なる点が多い。冒頭で述べたようにグリーンボンドは、企業や地方自治体などが環境の改善に資する事業=グリーンプロジェクトに取り組むための資金調達が目的だ。近年、投資家のなかでも環境を含め社会問題解決に資する企業を選んで投資するESG投資を好む人も増えている。そのため「グリーンボンドを発行することで資金を集めやすくなる」と考える人もいるかもしれない。
しかし、環境分野への取り組み姿勢をアピールすることができるとはいえ、調達資金は確実に追跡調査されるうえ、それらについてグリーンボンド発行後のレポーティングを通じ透明性が確保される仕組みとなっている。なによりグリーンプロジェクトといっても後述する「グリーンボンド原則(GBP)」によって発行のために適格とされる事業区分が特定されている部分で一般債券と大きく異なる。
適格なグリーンプロジェクトの事業区分例
では、環境の改善に資する事業(グリーンプロジェクト)とは具体的にどのような事業を指すのであろうか。グリーンボンド原則におけるグリーンおよびグリーンプロジェクトの定義は、セクターや地理によっても異なるとしているが、当原則のなかで適格とされている事業区分例として以下のような事業がある。
- 再生可能エネルギー
- エネルギー効率
- 汚染防止及び抑制
- 生物自然資源及び土地利用に係る環境持続型管理
- 陸上及び水生生物の多様性の保全
- クリーン輸送
- 持続可能な水資源及び廃水管理
- 気候変動への適応
- 高環境効率商品、環境適応商品、環境に配慮した生産技術及びプロセス
- 地域、国または国際的に認知された標準や認証を受けたグリーンビルディング
出所:「グリーンボンド原則 2018グリーンボンド発行に関する自主的ガイドライン(2018 年 6 月)和訳版」より一部抜粋
例えば汚染防止や抑制に関する事業としては、大気排出の削減、温室効果ガス管理、土壌浄化、廃棄物の削減・発生抑制、廃棄物のリサイクルなどがある。気候変動への適応に関する事業であれば、気候観測および早期警戒システムといった情報サポートシステムの開発などがあるだろう。
グリーンボンドの主な発行主体
グリーンボンドの主な発行主体は、以下の通りだ。
- 一般事業者
- 金融機関
- 地方自治体
一般事業者は、自らが実施するグリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達するためにグリーンボンドを発行する。この事業者のなかには、主とする事業内容とは切り離しグリーンプロジェクトのみを行うために設立した特別目的会社(SPC:Special Purpose Company)も含まれる。
また金融機関は自らがグリーンプロジェクトを実施したり、グリーンプロジェクト資金を融資したりするための原資調達手段として発行する。地方自治体も同様だ。
主なグリーンボンドへの投資家
グリーンボンドへ投資する主な投資家は、以下の通りだ。
- 機関投資家
- 運用機関
- 個人投資家
グリーンボンドへの投資は、ESG投資を行うことを表明している年金基金や保険会社などの機関投資家、ESG投資の運用を受託する運用機関が主に行っている。しかし近年は、個人投資家のなかにもESG投資に関心を持つ人も増加傾向だ。個人投資家もグリーンボンドへの主な投資家といえるだろう。