日本でユニコーン企業が少ない2つの理由

2023年1月時点におけるCBインサイツのユニコーン企業ランキングのレポートをご紹介したが、1,204社の中には日本企業も6社含まれている。しかし、米国や中国、欧州などの数と比較すると、日本のユニコーン企業は極端に少ないといえる。

なぜ、日本にはユニコーン企業と呼ばれるスタートアップ企業が少ないのだろうか?

理由1.起業する人材が少ない

大きな理由として挙げられるのは、そもそも起業する人材が少ないことだろう。

日本の若い世代は安定志向が強く、大学や大学院を卒業した優秀な人材の多くが大手企業や有名企業に就職する傾向だ。そのため、若い起業家が生まれにくく、起業家の育成が進んでいないという現状がある。

理由2.成功するスタートアップ企業が少ない

成功するスタートアップが少ないという問題もある。日本ではほかの先進国と比べ、ベンチャーキャピタルからの投資額が少なく、ユニコーン企業を育てる資金が不足している。

初期投資が少ないと、急激な成長を遂げる可能性が失われてしまう。緩やかな成長線しか描けないスタートアップ企業も増えるだろう。

その結果、まとまった資金を調達しようとした場合は消去法的にIPOという方法に頼ることとなり、小規模の上場会社が増えるという悪循環が発生してしまう。

ユニコーン企業を誕生させるために克服すべき2つの課題

日本でユニコーン企業が誕生するために克服すべき課題を考えてみたい。

課題1.リスクが許容される社会の構築

ローリスクからはローリターンしか得られない。ハイリターンを得るにはハイリスクの選択が不可である。失敗を恐れず革新的な事業を立ち上げるために、起業家の積極的なチャレンジが必要だ。

もちろん起業家だけでなく、投資家にもリスクの許容精神が欠かせない。失敗したプロセスを将来の成功に転換しやすい社会を構築しなければならない。

課題2.イノベーション人材の確保

革新的なテクノロジー開発には、独自のアイディアを有するハイスキルなイノベーション人材が不可欠だ。創業間もないスタートアップ企業において、社内での人材育成には限界がある。そのため、優秀な人材を集める必要があるが、資金がなければ人材を確保できない。

走りながら細々とした資金調達で人材を集め、再び少額の資金を調達する流れは好ましくない。

ユニコーン企業とは異なる新たな企業

数多くのスタートアップ企業が、次なるGAFAを目指すべく、大規模な資金調達や買収などで、世間を圧倒するユニコーン企業を目指してきた。

実際にユニコーン企業は、未開拓あるいは開拓途上の市場を圧倒的なスピードで独占し、巨額の利益を獲得している。

しかし、近年になってSDGsが社会的に注目され始めている。社会問題や環境破壊などを置き去りにしたまま、利益を追求する企業は社会的に評価されづらい風潮になった。

このような流れから、米国でゼブラ企業という概念も提唱され始めた。

ゼブラ企業の概要

ゼブラ企業とは、サステナビリティを重視し、共存性を価値とするスタートアップをさす。ユニコーン企業に相反する概念だ。

ゼブラ(Zebra)はシマウマを意味し、企業の利益と社会への貢献の相反する目的を白黒模様にたとえている。ゼブラ企業の特徴は、社会貢献を第一目的とし、公共機関や顧客なども含めた全関係者の利益を目指すことにある。自社の利益や資源などをステークホルダーと共有するには、事業の透明性も求められる。

ユニコーン企業とは異なるゼブラ企業の提唱を機に、あらためて企業の存在価値を見直す時代が到来しているといえよう。