ユニコーン企業を増やす鍵は投資にある
世界的なユニコーン企業のスピードや革新性などをみると、日本では経済成長に向けた投資が貧弱であることを痛感する。教育や研究の分野でも、唯一無二の個性を伸ばしていく教育や、革新的な技術開発を目的とした研究など、変革の余地は多いといえよう。
投資は、工場や施設の建設といったハードに限らない。人材に対する投資やアイディアを具現化するためのソフトウエア開発投資などもある。日本国内ではハード面の投資に着目されることが多いが、ソフトウエア開発を含め、本当に必要な分野に投資を行う機運が高まることを切に願う。
ユニコーン企業に関するQ&A
Q.なぜユニコーン企業というのか?
A. ユニコーン企業の定義は、時価総額が10億米ドル以上ある非上場のスタートアップ企業だ。ユニコーン企業の名称は、米国のカウボーイ・ベンチャーズのベンチャーキャピタリストであるアイリーン・リーが2013年に提唱したとされている。
ユニコーンは、もともとギリシャ神話に登場する幻の動物のことだ。一角獣ともいわれ、額の中央に1本の大きな角をはやした馬とされている。2013年当時の投資市場において、10億ドル以上の評価額を持つスタートアップ企業(ベンチャー企業)は大変珍しかったことから、幻の動物であるユニコーンに例えられた。
Q.ユニコーン企業ってどんな企業?
A. CBインサイツのユニコーンランキングのレポートによれば、上位20社は次のような企業となっている。
ユニコーン企業には主に2つの要件がある。
・要件1.創業から10年以内のスタートアップ企業であること
ベンチャーキャピタルなどの投資家は、高いリターンを狙うために大きな成長が見込める企業に目星を付ける。大成長を遂げるためには、未上場の若い企業が未開拓の領域で新規事業を立ち上げ、多額の資本投下によって市場を占有し、迅速にビジネスを遂行していかなければならない。そのため、創業10年以内という要件が設定されている。
・要件2.企業価値評価額が10億ドル以上であること
成長性を示す金額的な目安として、企業価値評価が10億ドル以上という基準が設けられている。100億ドル以上の企業はデカコーン企業と呼ばれ、1,000億ドル以上の企業はヘクトコーン企業といわれることがある。ちなみに、デカ(deca)は10倍、ヘクト(hecto)は100倍を意味する接頭語だ。
Q.日本のユニコーン企業数は?
A. 2023年1月時点におけるCBインサイツのユニコーン企業ランキングに含まれる1,204社の中には日本企業も6社含まれている。
Q.ユニコーン企業なぜ少ない?
A.日本においてのユニコ―ン企業が少ないとされている主な理由は次のようなものである。
・理由1.起業する人材が少ない
大きな理由として挙げられるのは、そもそも起業する人材が少ないことだろう。若い世代で安定志向が強いとされる日本では、大学や大学院を卒業した優秀な人材の多くが大手や有名企業に就職する傾向だ。そのため、若い起業家が生まれにくく、起業家の育成が進んでいないという現状がある。
・理由2.成功するスタートアップ企業が少ない
成功するスタートアップが少ないという問題もある。日本ではほかの先進国と比べ、ベンチャーキャピタルからの投資額が少なく、ユニコーン企業を育てる資金がそもそも不足している。初期投資が少ないと、急激な成長を遂げる可能性が失われてしまう。そのため、緩やかな成長線しか描けないスタートアップ企業も多い。
その結果、まとまった資金を調達しようとした場合は、消去法的にIPOを選択することになり、小規模の上場会社が増えるという悪循環が発生している。
Q.ゼブラ企業とは?
A.ゼブラ企業とは、サステナビリティを重視し、共存性を価値とするスタートアップをさす。ユニコーン企業に相反する概念だ。
ゼブラ(Zebra)はシマウマを意味し、企業の利益と社会への貢献の相反する目的を白黒模様にたとえている。ゼブラ企業の特徴は、社会貢献を第一目的とし、公共機関や顧客なども含めた全関係者の利益を目指すことにある。自社の利益や資源などをステークホルダーと共有するには、事業の透明性も求められる。
ユニコーン企業とは異なるゼブラ企業の提唱を機に、あらためて企業の存在価値を見直す時代が到来しているといえよう。
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文・風間啓哉(公認会計士・税理士)