この記事は2022年2月21日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「「東京都心部Aクラスビル市場」の現況と見通し(2022年2月時点)」を一部編集し、転載したものです。


要旨

東京都心部Aクラスビル市場
(画像=PIXTA)
  • 東京都心部Aクラスビルの空室率は、テレワークの普及など先行き不透明感が広がるなか上昇基調で推移し、3%台に達した。成約賃料は、2014年第4四半期の水準まで下落した。本稿では、東京都心部Aクラスビル市場の動向を概観し、2026年までの賃料と空室率の予測を行った。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大後も、人手不足の状況が継続している。また、オフィスワーカーの比率の高い産業では就業者の増加も確認できており、東京都心部の「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さい。また、「Well-being」など従業員にとって快適なオフィス環境を整備する取組みが継続するなか、「1席あたりオフィス面積」が大幅に縮小する懸念は小さい。

  • 一方、「在宅勤務」を中心とする勤務形態を導入する企業は増えており、オフィス出社率がコロナ禍以前の水準に戻る可能性は低い。また、「フリーアドレス」の導入が広がるなか、余裕のある座席数を確保する企業は減少すると考えられる。以上を鑑みると、今後のオフィス需要(オフィス利用面積)は力強さを欠くと見込む。

  • そのため、今後5年間の空室率は上昇基調が継続すると予想する。特に、2023年と2025年は大量供給の影響を受けて空室率が上昇し、2026年には約6%となる見通しである。 成約賃料(2021 年=100)は、2022年に「99」、2023年に「97」、2026年に「94」と、緩やかな下落を見込む。だだし、ピーク(2019年末)対比では▲32%下落するものの、2013年の賃料水準を上回る見通しである。