本記事は、安藤広大氏の著書『数値化の鬼 ーー 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています

「仕事ができる人」になる5つのステップとは

決意,ステップ
(画像=adam121/PIXTA)

ここまでの話を整理すると、次の2つに集約されます。

数値化された評価を受け入れる
自分の不足を数字として受け入れる

この2つさえ理解できれば、「主体的」な数値化のノウハウで自分の仕事に取り組むことができます。そして、いよいよ本題です。

これから本書で紹介する「数値化の鬼」について簡単に紹介しておきましょう。

ステップ1「行動量」を増やす
→自分の行動の数を正確に数えること

ステップ2「確率」のワナに気をつける
→割り算による安心感のワナに気をつけること

ステップ3「変数」を見つける
→仕事の中で何に集中するかを考えること

ステップ4「真の変数」に絞る
→ムダな変数を削り、さらに重要な変数に絞り込むこと

ステップ5「長い期間」から逆算する
→短期的と長期的、2つの軸で物事を見ること

以上の5つです。

仕事における数値化には、会計や統計学などの難しい知識は特に不要です。

「足し算、引き算、掛け算、割り算」という四則計算さえできれば問題ありません

ただ、その計算においてすら、数あるバイアスや誘惑があなたを襲ってくるはずです。

また、5つのステップはすべてが大事な考え方ですが、組織での「役割」によってそのウエイトが変わります。

後半にいくにつれて、役職がより上のポジションの人にとって重要な概念になります。

とはいえ、本書の目標は「仕事ができる人」になることです。

これを機に、まずは5つのステップすべてをマスターするようにしてください。

●「ニセモノの数値化」にダマされるな

さて、数値化の「注意点」にも触れておきましょう。

数値化において、重要なのが、「数値化に見えるニセモノにダマされないことです。

これは、本書でも非常に大事なメッセージなので、何度も繰り返し述べるようにします。

たとえば、「会話力」「英語力」という言葉があります。

これは「数字」ではなく「言葉」です。

ここでやっかいなのは、次のような考え方をする人です。

「来年こそは『英語力を2倍』にアップさせたい」

「私は『会話力が50点』なので、『70点』を目指したいです」

どうでしょう。

このような表現を使ったことがないでしょうか。

ロールプレイングゲームなどの影響かもしれませんが、「攻撃力」や「守備力」といった「○○力」という概念を、私たちは日常生活で使うことがあります。

これは果たして数値化なのでしょうか。

実際の世界では、「○○力」は感覚的なものとして扱っているでしょう。

「体力をつける」「忍耐力を上げる」「集中力を鍛える」なども同じです。

これらは、数値化に見せかけた「ニセモノの数字」です

理系出身の人や、数字に強い人は、こういう表現には敏感です。

「その『会話力』って具体的に何を表している数字ですか?」

「『忍耐力』は気合いで上がるものなんでしょうか?」

と、即座に考えることができます。

しかし、根っからの文系人間や感覚的に生きてきた人ほど、「ニセモノの数字」を使いたがります

言葉だけの目標は「定性的」と言います。一方で、ちゃんと数値化された目標は「定量的」と言います。

「○○力」という言葉を疑ってかかるようにしてください。

自分が使わないことはもちろんのこと、他者が言っているときも、そのウソを見抜ける人になってください。

部下や同僚が、「販売力と企画力を強化します」「モチベーションを倍に上げます」としか言わないときは、ちゃんとそれを具体的に数値化させてください

「英語力を上げる、ではなく、TOEICで800点をとる」
「販売力を上げる、ではなく、売上を15%アップさせる」

そこまで具体的にできて、初めて定量的な「数値化」と呼べるのです。

以上が、数値化をしていく上でのマインドセットの話です。

これまで都合よく考えてきた逃げの言葉を、1つ1つ潰していきましょう

一見、厳しさを感じるかもしれませんが、その痛みは一時的な筋肉痛のようなもので、確実にあなたを成長させている証拠でもあります。

最後に、数字で考えることをクセづけるために、実践方法を紹介しておきます。

あらためて、できているかを確認してみてください。

「数値化」をクセづける

頭の中で、いったん「数字」を考えることができるか。

その練習をしておきましょう。

1つのポイントとして、「形容詞、形容動詞」や「副詞」に注意してください。

・形容詞、形容動詞(「早い・遅い」「好き・嫌い」「良い・悪い」など)
・副詞(「よく」「とても」「もっと」「すごく」「かなり」など)

これらはいずれも、主観的な言葉であり、客観性がありません。

×「あの店がとても好きです」(主観)
○「あの店は週2回通っているほど好きです」(客観)

前者は主観だけの言葉です。後者は、誰が見ても明らかな事実を語っています。週2回という事実が「好き」という主観を補うデータになっているという関係です。

「好き」と口では言っておきながら、1年以上もその店に行っていないのなら、たぶん本当に好きではありません。つまり、「好き」には客観的なデータがないということです。

ということで、次の曖昧な言い方を数字の入った表現に変えてみましょう。

×「もっとダイエットする」
×「すごく仲良くなる」
×「なるべく早く提出する」

さて、どうでしょう。

例を挙げると、次のようになります。

○「ダイエットをして体脂肪率15%を下回る」
○「1日1回は話しかけて仲良くなる」
○「14時の締切に間に合うように提出する」

このように、数字を入れることで、誰にでも誤解なく伝えることができ、物事が前に進むようになります。

また、数字は世界共通の言語でもあります。

そのため、ある業界のことを、その業界を知らない相手にも理解させることができます。

たとえば、

×「この本がベストセラーになってすごい」

と言われても、どれだけすごいのかがわかりません。

これが、

○「1500円の本が10万部売れて、売上が1億円を超えている。毎日200冊の新刊が出るけれど、10万部を超えるものは1%にも満たない」

と言うと、誰にでもそのすごさを伝えることができます。数字に置き換えることで業界を横断して誰にでも理解させることができるのです。

曖昧な言い方をするクセをやめて、数字で言い換えること、数字で表現することをクセづけましょう。

数値化の鬼 ーー 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法
安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長。1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出会い、衝撃を受け、2013年に独立。識学講師として多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年あまりで上場を果たし、2022年3月現在、約2,700社以上に識学メソッドが導入されている。

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