レントロールは、一棟物件を検討するときに欠かせない重要な資料です。これを読み込めば、その賃貸物件の「リアルな稼ぐ力」が分かります。とはいえ初心者にとっては「見たこともない」「読み方がわからない」という方もいるのではないでしょうか。本記事の前半では、レントロールの基本、後半ではチェックポイントについて分かりやすく解説します。
目次
不動産投資でレントロールを入手するタイミングは?
はじめにレントロールを入手するタイミングから確認しましょう。一棟物件を探している人が気になる賃貸物件を見つけ不動産会社に問い合わせると物件の資料が提供されます。この物件の資料に含まれているのがレントロールです。家賃明細表とも呼ばれます。
【不動産会社から提供される資料の例】
資料名 | 内容 |
---|---|
物件概要書 | 物件の基本情報をまとめたもの (項目例:所在地、物件価格、構造、面積など) |
修繕履歴 | これまでの修繕履歴をまとめたもの |
不動産登記簿謄本 | 土地・建物の権利関係を記載したもの |
固定資産評価証明書 | 固定資産の評価額が示されたもの |
レントロール | 一棟物件の収入に関する情報をまとめたもの |
不動産会社からの資料提供の流れとしては、次の2つのパターンがあります。
- パターン1:まずは物件概要書が提供され濃い見込客だと判断された場合に追加情報がもらえる
- パターン2:早い段階ですべての情報が提供される
いずれにしてもレントロールは、一棟物件の購入検討中のどこかのタイミングで提供されるのが通例です。
レントロールには賃貸物件のどんな情報が載っている?
レントロールを見れば物件全体の家賃収入がつかむことが可能です。物件によっては、利回りや稼働率、年間支出などもレントロールに記載されていることもあります。レントロールの書式や項目はさまざまですが例えば以下のような項目を確認できます。
レントロールに載っている項目例
◆各部屋の基本的な契約情報 | ・家賃、共益費、敷金、駐車場 ・間取り、契約期間 ・入居者の属性 など |
◆物件全体の情報 | ・入居率、賃料ベースの稼働率 ・表面利回り など |
◆年間支出 | ・浄化槽の点検清掃 ・共有部の光熱費 など |
レントロールがない賃貸物件の購入は慎重に
購入意思(または強い興味)を示しているにもかかわらずレントロールが提供されない場合は、不動産会社にレントロールを請求しましょう。「さらに詳しい情報を知りたいのでレントロールをもらえますか」といった具合に依頼してみてください。「レントロールを請求したのにもらえない」「レントロールがそもそも存在しない」といった賃貸物件の購入は、慎重になるべきです。
大まかな表面利回りや家賃収入だけを見て高額の賃貸物件を購入するのはリスクがあります。ただ何らかの事情でレントロールなしの一棟物件を検討するケースもあるかもしれません。その場合もレントロールに記載されているような情報をしっかりと収集してから購入を決めることをおすすめします。
レントロールを読むときに意識したい4つのチェックポイント
レントロールが手元にあってもチェックポイントを押さえながら読まないと意味がありません。特に意識したいのは、以下の4つです。
チェックポイント1.家賃設定にバラツキがないか?
レントロールには、数多くの項目があります。そのなかで特に注目したい項目が「家賃設定」。一般的な賃貸物件の場合、すべての部屋がほぼ同じ間取りタイプ(例:1K×10室)、あるいは何種類かの間取りタイプ(例:1K×5室、2DK×3室)で構成されていることがほとんどです。 レントロールを見たとき間取りタイプが同じ部屋の家賃に大きなバラつきがなければ問題ありません。
しかし家賃にバラつきがある場合、家賃設定が割高な部屋、割安な部屋には、以下のようなリスクがあるため、注意が必要です。
家賃設定 | 状況 | リスク |
---|---|---|
家賃が割高 | 稼働中 | 次の入居者募集で値下げの可能性 |
空室 | 想定利回りを高く見せている可能性 | |
家賃が割安 | 稼働中 | 空室をムリに埋めている可能性 |
空室 | 家賃のさらなる値下げの可能性 |
チェックポイント2. 直近で新規契約が集中していないか?
レントロールでは、各部屋の「入居時期」も見逃せない情報の一つです。入居時期を見るときは「ある程度の築年数にもかかわらず直近で新規契約が集中していないか?」を確認しましょう。具体的には、1~3ヵ月内に契約した入居者が集中しているようなケースです。もちろん該当するケースでもたまたま新規契約が集中したことも考えられます。
しかし賃貸物件を高値で売るため、知り合いに名義を借りて稼働率を高く見せている可能性も否定できません。現オーナーに悪意があるようなケースでは、物件購入後に退去が相次ぎ稼働率が一気に下がる可能性もあります。
チェックポイント3.現実の家賃収入が示されているか?
レントロールに「年間家賃収入」の項目がある場合は、家賃収入が「想定家賃収入なのか」「現況家賃収入なのか」についての確認も大切です。両者には、以下の違いがあります。
◆想定家賃収入 | 満室を想定した家賃収入 |
◆現況家賃収入 | 現実の家賃設定や入居率に基づいて得ている家賃収入 |
分かりやすくいえば想定家賃収入は「満室時に期待できる収入」、現況家賃収入は「直近で入居している現実の収入」です。同じ家賃収入でも期待と現実では、意味合いがまったく違います。当然物件購入を検討時に重要なのは、現実(現況家賃収入)です。同様にレントロールに利回り記載がある場合も「満室を想定した利回りなのか」「現況の利回りなのか」で意味が変わります。
検討する際は、あくまでも「現実の家賃収入」「現実の利回り」を見て物件を購入すべきか否かを判断しましょう。
ポイント4.支出も示されているか?
レントロールには、支出に関する情報が記載されているケースもあります。例えば以下のような支出項目や目安金額が示されている傾向です。
- (一棟契約の)ケーブルテレビや Wi-Fiの料金
- (共有部の)光熱費や清掃費
- 浄化槽の清掃費用
- 雪下ろしや除雪の費用 など
レントロールには、支出の記載がないこともありますが支出をあいまいにしたまま賃貸物件を購入すると後悔のもとです。支出の詳細が分からない場合は「支出の項目とそれぞれの目安金額を教えてもらえますか」といった具合に不動産会社に依頼してみましょう。
レントロール以外の重要資料のチェックポイントも学ぼう
最後に本記事で紹介した内容をおさらいしてみましょう。レントロールとは、一棟物件を検討するときに重要な資料で、家賃収入に関する情報をまとめた家賃明細表のことです。掲載されている項目は、各部屋の基本的な契約情報(家賃・共益費・敷金など)や物件全体の情報(入居率や利回りなど)、支出が確認できることもあります。
またレントロールを読むときの主なチェックポイントは、以下の4つです。
- 家賃設定にバラツキがないか?
- 最近、新規契約が集中していないか?
- 現実の家賃収入が示されているか?
- 支出も示されているか?
レントロールは、あくまでも賃貸物件の重要な資料の一つとなるため、実際には物件概要書や修繕履歴などほかの資料とあわせて読み込むことが大切です。それぞれの資料に読むときのチェックポイントもあるため、そちらも学びつつ対象物件の資産価値と稼ぐ力を見抜く目を養いましょう。
(提供:YANUSY)
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