不動産投資を行うにあたり「どのくらいの利回りを得ることができるのか」については、最も重視する点ではないでしょうか。不動産の利回りについては、さまざまな計算方法がありますが不動産投資において不動産の価格を求める際に利用するのがキャップレートです。今回は、キャップレートについて解説します。

目次

  1. キャップレートとは?
    1. 不動産価格の計算方法
  2. キャップレートはどのようにして求める?
    1. NOIベース
    2. NCFベース
    3. キャップレートからその不動産価格を求める
  3. 表面利回りと実質利回りの違いとは?
    1. 表面利回りとは
  4. 不動産投資を考えるうえで重要なのは実質利回り
    1. 実質利回りの考え方
  5. 不動産投資におけるキャップレートの意味と活用の際の注意点

キャップレートとは?

不動産投資を行う際に理解しておきたいキャップレートとは?
(画像=tutul_1410/stock.adobe.com)

キャップレートとは、その資産の収益から資産価値を求める際に使われる還元利回りのことです。不動産だけでなくさまざまな金融商品の資産価値を求める際にも利用されます。不動産投資の際に用いることで当該不動産本来の価格を知ることが可能です。

不動産価格の計算方法

不動産の主な鑑定評価は「原価法」「収益還元法」「取引事例比較法」の3種類によって計算されます。収益物件において用いられるのは「収益還元法」です。参考までにこれらの計算式や対象となる物件について紹介します。

【1】原価法
建築費-経年減価+土地の取得価格

これは主に自家用や事業用の物件の価格を求める際に利用されます。

【2】収益還元法
純収益÷利回り(キャップレート)

収益物件全般に用いられる計算式です。

【3】取引事例比較法
近隣の取引事例

そのため不動産投資における不動産の価格は、純収益をキャップレートで除したものということができます。

キャップレートはどのようにして求める?

では、キャップレートはどのようにして求めるのでしょうか。キャップレートを求める方法は、2つです。純収益だけを用いて計算するものと、純収益から資本的な支出を除いたキャッシュフローを利用して計算するものがあります。

NOIベース

「NOI」とは、不動産投資における純収益のことで年間における満室想定賃料から空室および滞納損失を指し引いて求めた実効総収入からさらに運営費用を差し引いたものです。具体的には、管理手数料をはじめ建物管理費用や水道光熱費、固定資産税、原状回復費用、修繕費用など管理会社に支払う運営費用があります。

そのためいくら実行総収入が大きくても運営費用によっては、手元に残る純収益は少なくなることも少なくありません。このように求めた純収益を投資金額で除したものをキャップレートとして用います。

・キャップレート={(年間満室想定賃料-空室・滞納損失)-運営費用}÷投資金額

一般的に不動産投資で利用されるのは、NOIベースのキャップレートです。

NCFベース

NCFとは、ネット・キャッシュ・フローといわれるもので純収益から設備投資や敷金などの運用収益を加味して求めます。具体的な計算方法は、以下の通りです。

・NCF=純収益-設備投資+運用収益

このNCFを投資金額で除したものをキャップレートとして用います。

・キャップレート=NCF(純収益-設備投資+運用収益)÷投資金額

キャップレートからその不動産価格を求める

例えば純収益が1億円の物件を考えた際、キャップレートが2%と5%の場合、不動産価格はどのように変化するのでしょうか。キャップレートから不動産価格を求める式は、以下の通りです。

・不動産価格=NOI÷キャップレート

1億円の純収益に対しキャップレートが2%の場合、その不動産価格は1億円÷2%=50億円です。一方でキャップレートが5%になると不動産価格は、1億円÷5%=20億円まで下がってしまいます。このように同じ純収益でもキャップレートが高くなるにつれて不動産価格が下がることは覚えておきましょう。

表面利回りと実質利回りの違いとは?

不動産投資を検討する際に必ず意識するのが「利回り」でしょう。しかし物件資料などに掲載されている利回りは、実質利回りではなく表面利回りとなっていることが多い傾向です。これらの違いは、どのような点にあるのでしょうか。

表面利回りとは

表面利回りは、単純に「年間の満室想定賃料÷物件価格」で求められるものです。一般的に収益物件の利回りは、表面利回りで表示されます。投資判断を行うにあたり最初に確認するポイントですが表面利回りの数字が物件の正確な利回りではありません。なぜなら保有期間中に年間を通じて満室状態を維持できる可能性は絶対とはいえないからです。

空室や滞納のリスクを反映させなければ実際の運用に近い数字を求めることはできないでしょう。

不動産投資を考えるうえで重要なのは実質利回り

表面利回りと実質利回りは、計算の過程で大きな差が発生する可能性もあります。そのため実質利回りをどのように求めるかを知っておくことは、不動産投資において必須です。

実質利回りの考え方

実質利回りを考えるにあたり最も大切なのは、総収益率です。総収益率を求める際には、上述したNOI(純収益)を総投資金額で除す必要があります。総投資金額には、物件価格に加えて購入時にかかった諸費用を加算する点がポイントです。

・総収益率=NOI÷(物件価格+購入時諸費用)

NOIは、表面利回りから空室および滞納損失、さらには運営費用を差し引いて求めることが必要です。そのため運営費用がいくらかかるかによって実質利回りは大きく異なります。例えば1億円の物件で購入時の諸費用が700万円かかる場合、総投資金額は1億700万円です。また満室時の想定賃料が800万円の場合、表面利回りは800万円÷1億円=8%となります。

空室および滞納損失を100万円と考えるなら実効総収入は700万円です。以下で運営費用に100万円かかったケースと200万円かかったケースの最終的な総収益率を見てみましょう。

1. 運営費用に100万円かかったケース
・NOI=実行総収入(700万円)-運営費用(100万円)=600万円
・総収益率=NOI(600万円)÷総投資金額(1億700万円)×100=約5.6%

2. 運営費用に200万円かかったケース
・NOI=実行総収入(700万円)−運営費用(200万円)=500万円
・総収益率=NOI(500万円)÷総投資金額(1億700万円)×100=約4.67%

同じ表面利回りでも最終的な総収益率で比較すると約1%の差が発生します。このように不動産投資を行う際は、空室や滞納損失を考慮するだけでなく運営費用にどのくらいかかるのかを確認することが大切です。

不動産投資におけるキャップレートの意味と活用の際の注意点

不動産投資において不動産価格は、純収益をキャップレートで除して求めることが可能です。計算は、比較的シンプルですが他の株式や債券などの金融資産と比べると非常に違和感のある計算方法ともいえるでしょう。なぜなら純収益をキャップレートで除す考え方の根底には「その純収益が永遠に続く」という前提だからです。

例えば金融資産の価値を評価する際に用いられる代表的な方法には、DCF法というものがあります。これは、将来予測されるキャッシュフローを現在価値に割り戻しそれを評価額とするものです。債券など満期のある金融資産は、満期までに発生するキャッシュフローを使用してDCF法で評価します。さらに企業の価値評価を行う場合は、企業が永遠に存続すると仮定して永久還元で評価するのです。

不動産も既存の不動産の修繕投資や建て替えによって、その物件が永遠に存在し続けると仮定して評価を行っていることを忘れないようにしておきましょう。また不動産価格を決定するキャップレートは、市場金利の影響を受けます。市場金利の変動が顕著に反映されるわけではありません。しかし市場金利が下がればその不動産のキャップレートも低くなる傾向がある点にも注意が必要です。

(提供:YANUSY

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