近年のコングロマリットの傾向は?
上記の事例のように、国内にはコングロマリット化によって成長を遂げた企業が多く存在する。しかし、近年ではコングロマリットの解体が相次いでおり、例えば大手電機メーカーである『東芝』は、2021年に会社分割のプランを公表した。
コングロマリット解体の波が広がっている要因としては、企業としての動きの鈍化が挙げられる。前述のように、グループが大きくなりすぎると連携を図ることが難しくなるため、コングロマリット化による成長には限界があるのだ。
リスクを分散できるメリットは大きいが、コア事業に経営資源を投下できなくなると、業界内でのポジションや競争力を失ってしまう場合もある。10~20年後には、さらに解体の波が広がる可能性もあるので、コングロマリットの計画は中長期的な視点で慎重に検討したい。
コングロマリットに関するQ&A
Q.コングロマリットとは?
A.コングロマリットとは、直訳すると「集団になった、密集的な」を表す言葉である。ビジネスでは、簡単にいえば「多くの産業・事業を抱える複合企業」として使われることが多い。一般的にコングロマリットは、親会社と複数の子会社によって形成されていることが多く、それぞれの企業が異なる事業を行っている。
企業がコングロマリットを形成する理由は、多様な事業によって中長期的な成長基盤を築くことが期待できるからだ。以前は、中長期的な成長を目指す大企業、海外展開を目指す企業などでコングロマリットが形成されることが多かった。現在でもこのようなコングロマリットは多い。
しかしスピーディーな成長を遂げるためにM&Aによってコングロマリット化(コングロマリット型M&A)を進める国内企業も多く見られるようになった。
Q.コングロマリット プレミアムとは?
A.コングロマリットを行うことで、企業はさまざまなメリットを享受できる。その一つが、コングロマリット・プレミアムだ。コングロマリット・プレミアムとは、簡単にいうとコングロマリットを行うことで相乗効果が発揮されている状態を指す。
例えば一つの企業で経営するよりも、複数の事業をグループ経営することでさらに大きな利益を生み出すことができる。コングロマリットにおける相乗効果のことをシナジー効果という。コングロマリットでは、以下のようなシナジー効果を得ることが可能だ。
・事業活動の共有などで発生する「事業間シナジー」
・ブランド力の強化にもなる「コーポレートシナジー」
・複数の事業のマイナス面を打ち消す「負のシナジーの回避」
Q.コングロマリット・ディスカウントとは?
A.コングロマリットを行うことで、企業はさまざまなメリットを享受できる一方で、デメリットもある。その一つがコングロマリット・ディスカウントだ。コングロマリット・ディスカウントとは、簡単にいうとコングロマリットを行うことで企業の価値が下落してしまうことを指す。
コングロマリットを行うことで複数の事業を展開できるが、複数の事業を展開するということは、経営資源を分散させることも意味する。企業の中心となる事業に経営資源を集中させることが難しくなると、その事業の成長を妨げることもあるだろう。
その影響で競争力が低下すれば、市場や投資家などの外部の評価や株価が下がり、融資や出資などによる資金調達が難しくなる可能性も出てくる。
Q.コングロマリット型M&Aとは?
A.M&Aとは、他社を買収したり合併したりすることで経営基盤の強化やシェアの拡大などを目指す形態である。コングロマリット型M&Aとは、異なる業種の会社を買収したり、合併したりするM&Aのことだ。コングロマリット型M&Aでは、異なる業種の会社にM&Aをすることで、新規事業への参入ができる。
またM&Aを伴う型でコングロマリットを行うことにより、技術もノウハウも市場も異なる企業を束ね、多角化を迅速的に行えるようになる点は魅力だ。M&Aには、大きく分けて同じ業種や業態の会社で行われる「水平型M&A」とサプライチェーン・マネジメントの効率化を図る「垂直型M&A」の2つがある。コングロマリット型M&Aでは、「水平型M&A」と「垂直型M&A」のどちらも行われる。
Q.コングロマリットのメリットとデメリットは?
A.コングロマリットには、次のようなメリットとデメリットがある。
・コングロマリットのメリット
コングロマリットのメリットには「コングロマリット・プレミアムが発揮される」「リスクを分散できる」「スムーズな事業再編が可能になる」の3つがある。コングロマリット・プレミアムとは、コングロマリットを行うことでシナジー効果が発揮されている状態を指す。またコングロマリットをすることでスムーズに多角化経営ができ、中長期的な成長基盤を築くことが期待できる。
・コングロマリットのデメリット
コングロマリットのデメリットには「コミュニケーションや連携が難しくなる」「コーポレートガバナンスが低下しやすい」「コングロマリット・ディスカウントが生じる」の3つがある。コングロマリット・ディスカウントとは、コングロマリットを行うことで、企業の価値が下落してしまうことを指す。
コングロマリットのデメリットは、3つとも経営面に深刻な影響を及ぼす恐れがあるため、注意しておきたい。