この記事は2022年3月30日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「どんな人がGo To/マイナポイント/ふるさと納税を利用したか?-男女/年齢層/学歴/年収層別の利用者の割合-」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. はじめに
  2. 調査概要
  3. Go To イートを利用したことがある人
  4. Go To トラベルを利用したことがある人
  5. マイナポイントを申請した人
  6. ふるさと納税で返礼品を受け取った人
  7. おわりに

はじめに

マイナンバーカード
(画像=komagym/stock.adobe.com)

経済対策や、行政の効率化、地域格差の是正など、様々な目的のもと実施されてきた政策には、Go To イートやGo To トラベル、マイナポイント、ふるさと納税のように、インセンティブを付与することで個々人の行動を促進するものがある。こうした個人へのインセンティブを伴う政策がどのような人によって利用されてきたのかを知ることは、その政策の妥当性を確認するために重要である。そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所が行った独自の調査をもとに、男女/年齢層/学歴/年収層別に、Go Toイートと、Go Toトラベル、マイナポイント、ふるさと納税の利用者の割合を確認した結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、こうした制度は、女性や年収が高い人の間で利用した人の割合が大きい傾向が見られた。

調査概要

本調査は、2021年の3月にWEB アンケートによって実施した。回答は、全国の26~65歳の男女(*1)を対象に、全国6地区の調査対象者の性別・年齢階層別(10歳ごと)の分布を、令和2年1月の住民基本台帳の分布に合わせて収集した。回答数の合計は2,601件である。


*1:マイボイスコム株式会社のモニター会員


Go To イートを利用したことがある人

図 - 1に、Go To イートを利用したことがある人の割合(*2)を、男女/年齢層別に示した。全体では約3割の人が該当した。男女を比較すると、男性の間では該当者の割合は約31%であるのに対して、女性の間では約34%で、女性の間の割合の方が少し大きい。また、女性の間では20代~40代の利用者の割合が50代~60代よりも高い傾向が見られる(*3)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

次に図 - 2は、Go To イートを利用したことがある人の割合を、大卒非大卒/年収層別に示したものである。大卒者と非大卒者の間には大きな違いは見られないが、年収層別にみると、年収の高い人の間で該当者の割合は大きい傾向が確認できる(*4)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

*2:「Go Toイートを利用したことがある」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を回答した人の割合を表示。
*3:「Go To イートを利用したことがある」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、説明変数に、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性が該当する確率は統計的に有意に高い傾向(p値0.01未満)が確認されたが、年齢層による違いは確認されなかった((20代を参照カテゴリーとして、有意水準10%で異なる年齢層のカテゴリー無)。
*4:注3の推計では、大卒者と非大卒者の間では有意水準10%で統計的に有意な違いは見られない。しかし、年収が高くなるほど該当する確率が高くなる傾向が確認された(年収130万円未満を参照カテゴリーとした場合、300万円~500万円のカテゴリーでは係数0.10、p値0.01未満、500万円~700万円のカテゴリーでは係数0.17、p値0.01未満、700万円以上のカテゴリーでは係数0.24、p値0.01未満)。


Go To トラベルを利用したことがある人

次に図 - 3に、Go To トラベルを利用したことがある人の割合(*5)を男女/年齢層別に示した。男女を比較すると、20代60代では女性の間で該当者の割合が大きい。また、年齢層別にみると、男女共通して50代の該当者の割合が低い(*6)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

さらに図 - 4に、Go Toトラベルを利用したことがある人の割合を大卒非大卒/年収層別に示した。大卒者と非大卒者を比べると、大卒者の方が該当者の割合は大きい。また、年収の高い人の間で該当者の割合は大きい傾向が見られる(*7)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

*5:「Go To トラベルを利用したことがある」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を回答した人の割合を表示。
*6:「Go To トラベルを利用したことがある」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性が該当する確率は統計的に有意に高く(p値0.01未満)、50代の該当する確率が統計的に有意に低い(20代が参照カテゴリー、p値0.05未満)ことが確認された。
*7:注6の推計では、大卒者が該当する確率が統計的に有意に高い(p値0.01未満)ことと、年収が高くなるほど該当する確率が高くなる傾向が確認された(年収130万円未満を参照カテゴリーとした場合、300万円~500万円のカテゴリーでは係数0.09、p値0.05未満、500万円~700万円のカテゴリーでは係数0.18、p値0.01未満、700万円以上のカテゴリーでは係数0.22、p値0.01未満)


マイナポイントを申請した人

次に図 - 5に、マイナポイントを申請した人の割合(*8)を男女/年齢層別に示した。男女の間に大きな違いは見られないが、年収や職業、在住都道府県等の条件を一定として比較すると、女性であるとマイナポイントを申請する確率が高い傾向が見られた(*9)。また、年齢層別にみると、男女ともに60代の該当者の割合が最も大きい(*10)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

次に図 - 6に、マイナポイントを申請した人の割合を大卒非大卒/年収層別に示した。大卒者と非大卒者を比べると、大卒者の方が該当者の割合が大きい。また、大卒者非大卒者共に、年収が500万円以上700万円未満の人の間で該当者の割合が最も大きい(*11)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

*8:「マイナポイントを申請した」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を回答した人の割合を表示。
*9:「マイナポイントを申請した」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性の該当する確率が有意水準10%で統計的に有意に高いことが確認された。
*10:注9の推計では、60代が該当する確率は統計的に有意に高い(参照カテゴリーは20代、p値0.05未満)ことが確認された。
*11:注9の推計では、大卒者が回答する確率は統計的に有意に高い(p値0.01未満)ことと、年収300万円以上のカテゴリーの人が回該当する確率が高いこと(130万円未満が参照カテゴリー、300万~500万円のカテゴリーでは係数0.11、p値0.01未満、500万円~700万円のカテゴリーでは係数0.09、p値0.10未満、700万円以上のカテゴリーでは係数0.14、p値0.01未満)が確認された。


ふるさと納税で返礼品を受け取った人

次に図 - 7に、ふるさと納税で返礼品を受け取った人の割合(*12)を男女/年齢層別に示した。男女を比較すると男性の間での割合の方が大きいが、年収や職業、在住都道府県等の条件を一定として比較すると、女性の方が該当する確率は高い傾向が見られた(*13)。また、年齢層別にみると、男女ともに50代と60代の該当者の割合が小さい(*14)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

次に図 - 8に、ふるさと納税で返礼品を受け取った人の割合を大卒非大卒/年収層別に示した。大卒者と非大卒者を比べると、大卒者の方が該当者の割合は大きい。また、大卒者非大卒者ともに、年収の高い人ほど該当者の割合は大きくなっていく傾向が確認できる*15。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

*12:「ふるさと納税で返礼品を受け取った」に当てはまるかどうかを「はい」か「いいえ」で選択して回答頂く設問で、「はい」を回答した人の割合を表示。
*13:「ふるさと納税で返礼品を受け取った」に該当する場合に1をとるダミー変数を被説明変数として、女性ダミー、年齢層ダミー、大卒ダミー、職業ダミー、都道府県ダミー、年収カテゴリーダミーを含めた線形確率モデルの推計では、女性が該当する確率が統計的に有意に高い(p値0.01未満)ことが確認された。
*14:注13の推計では、50代と60代が該当する確率が統計的に有意に低い(参照カテゴリーは20代、p値0.05未満)ことが確認された。
*15:注13の推計では、大卒者が該当する確率が統計的に有意に高い(p値0.05未満)ことと、年収が大きくなるほど該当する確率が高くなること(130万円未満が参照カテゴリー、300万~500万円のカテゴリーでは係数は0.12, p値は0.01未満、500万円~700万円のカテゴリーでは係数は0.17, p値は0.01未満、700万円以上のカテゴリーでは係数は0.29、p値は0.01未満)が確認された。


おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が行った独自の調査から、Go Toや、マイナポイント、ふるさと納税は、女性や大卒者、年収の高い人の間で利用した人の割合が大きいという結果を紹介した。こうした傾向は、ポイントの活用をする人の特徴と共通している(*16)。これらの背後にある要因の検証は今後の課題だが、日本では夫婦のうち女性が家計費管理を担う傾向が強い(*17)ため、家計費管理の役割からくる節約意識を反映して、女性はポイントだけでなく、様々なお得な仕組みを活用している可能性が挙げられる。また、年収の高い人ほどふるさと納税やGo Toを行っている理由は、ふるさと納税は所得の高い人の方が実質2,000円の負担で寄付できる金額が大きいことや、経済的なゆとりのある人ほど外食や旅行をする傾向によるものと考えられる。さらに、年収を調整した上でも大卒者の利用率は非大卒者の利用率より高い傾向があることからは、教育年数と相関の強い金融リテラシー(*18)がポイント活用を促す役割を果たしている可能性が示唆される。


*16:岩﨑敬子(2022年3月29日)「どんな人が「ポイント」を利用しているか?-男女/年齢層/学歴/年収層別の利用者の割合-」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70681?site=nli)
*17:内閣府男女共同参画白書(平成15年版)
*18:Sekita, S. (2011). Financial literacy and retirement planning in Japan. Journal of Pension Economics and Finance, 10(4), 637-656.


岩﨑 敬子(いわさき けいこ)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 准主任研究員

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