投資目的で新築マンションを購入する場合、物件価格の次に気になるのが「その物件をどれくらいの年数使用できるのか」という投資可能期間ではないかと思います。初期投資額を中長期にわたって得られる家賃収入で回収していくのがマンション経営のビジネスモデルなので、物件の「賞味期限」が気になるのは当然のことです。
それでは実際のところ、新築マンションはどの程度の期間使用できるのでしょうか。そこで知っておくべき指標が「耐用年数」と「耐久年数」です。似た言葉ではあるものの意味は大きく異なるので、その違いも明らかにしつつ、マンション経営のメリットでもある耐用年数について解説していきたいと思います。
新築マンションを買ったらマンション経営は何年できる?
新築マンションに年齢をつけるとしたら、0歳です。0歳からマンション経営を始めてマンションが何歳になるまで家賃収入が得られるのかを知る指標が耐久年数です。
購入したマンションが50歳(つまり築50年)まで使用できるのであれば、耐久年数は50年です。この期間は長ければ長いほど投資家にとっては有利で、末永く家賃収入が期待できる物件となります。
耐久年数に法的な定めや明確な基準はない
実際のところ、この耐久年数に法的な定めや明確な基準はありません。
建設会社やマンションディベロッパーなどが耐久年数を提示していますが、それもメーカーが「これくらいの年数なら使用できます」と考えている年数であり、そこに具体的な保証があるわけではありません。
そのマンションに住める、住みたいと思う人がいる限りそのマンションは「現役」でいられます。
人が適切な健康管理をすると長生きできるのと同じように、マンションもオーナーがどれだけしっかりメンテナンスや定期的な修繕をしているかによって、耐久年数が大きく変わってきます。
中古マンション市場では築30年を超える物件であってもしっかりと取引がありますし、築年数が古いだけで無価値になることはありません。
オーナーが資産価値を維持するためのメンテナンスをしていれば、築50年を超えるマンションであっても十分使用できるでしょう。
耐用年数は法的な根拠のある指標
この耐久年数に対して、法的な根拠のある指標として耐用年数があります。
新築マンションを購入する場合にはこの耐用年数が節税の面でも重要な意味をもつので、すべてのオーナーが知っておくべき耐用年数について解説を進めていきましょう。
マンションの耐用年数は「47年」
ほとんどのマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造、もしくは鉄筋コンクリート造(RC造)です。これらの建物のうち住宅用のものについては法定耐用年数が47年と定められています。
(出典:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表)
この法定耐用年数というのは国が定めている「固有資産を使用できる法的な期間」のことで、その期間が過ぎると「資産価値がなくなる」と国が定義しているものです。
耐久年数と耐用年数の違い
先ほど解説した耐久年数はその建物を使用できる事実上の年数であるのに対して、耐用年数は国が定めている「資産価値がなくなるまでの年数」です。
・耐用年数・・・国が定めている資産価値がなくなるまでの年数
そのため、すでに耐用年数を過ぎている建物であっても十分使用できるといったことは珍しくなく、「耐用年数=耐久年数」ではないところに注意してください。
では、何のために国は耐用年数を定めているのでしょうか。
そこには減価償却費という会計処理が深く関わっています。しかもこの減価償却費はマンション経営の大きなメリットの1つなので、次項で詳しく解説していきたいと思います。
マンション経営の節税メリット「減価償却費」とは
マンションなど不動産にはいくつかの節税メリットがありますが、そのうちの1つが減価償却費です。
減価償却とは建物などの資産について年数を経るごとに価値が低下していくことに合わせて、その資産価値の目減り分を経費として計上することです。
先ほどマンションは法定耐用年数が47年だと述べました。この場合、マンションの価値は47年をかけて少しずつ減価償却が進み、47年後には会計上の価値がゼロになります。
つまり、マンションの建物部分は毎年資産価値が47分の1ずつ減っていくことになります。会計処理上は2.2%なので、毎年0.022(耐用年数47年の償却率)を掛けた金額が減価償却費となり経費として計上可能です。
マンションの価格×0.022
例
2000万円×0.022=44万円/年
しかし実際にキャッシュが出ていくわけではなく、会計上の経費として節税に役立てられるのが減価償却費のポイントです。
この減価償却は資産価値がゼロになったら終了なので、新築マンションを購入する場合は購入から法定耐用年数である47年間にわたって減価償却費を経費として計上できることになります。
アパートよりもマンションのほうが節税の効果が大きい
マンションだけでなくさまざまな資産に法定耐用年数が定められています。
マンションと並んで投資用の不動産として知られるアパートは多くが木造なので、木造建築物のうち住宅用のものとして法定耐用年数は22年と定められています。
不動産に少し詳しい方であればアパートよりもマンションのほうが節税の効果が大きいと見聞きしたことがあるかもしれません。
それは法定耐用年数がアパートよりもマンションのほうが長く、倍近くもあることも理由の1つです。
実際にマンションはどの程度使用できるのか
ここで話を再度、耐久年数に戻しましょう。法定耐用年数は法律によって決まっているので動かしようがありませんが、耐久年数つまり実質的な建物の使用可能年数はオーナーの努力次第で長くすることができます。
そのポイントは、先ほども述べたようにメンテナンスです。メンテナンスさえ適切に行っていれば、建物はとても長く使用することができます。
近年リノベーションによる再生などで注目されることが多くなった古民家はそのほとんどが木造ですが、築年数は浅いものでも50年以上です。
なかには100年を超えるような古民家も少なくなく、それが現存していて使用されていることを考えると、建物の寿命は多くの方が想像している以上に長いものだと実感できます。
RC造の建物で一例を挙げると、世界遺産にも登録された長崎県の「軍艦島」のアパートが象徴的です。
すでに無人島になっている同島ですが、そこには築年数が100年を超えるRC造のアパートがあります。
さすがに今はもう人は住んでいませんが、今もなおそれがアパートであることがはっきりと確認できる姿で現存しています。
この「軍艦島」はとても小さな島で四方を海に囲まれているため常に潮風に晒され、決して条件のよい立地とはいえません。
しかし建物としてしっかりと建てられていることと適切なメンテナンスが施されてきたことが幸いし、今や世界遺産として登録されるほどの価値を保っています。
使用できる期間が長いほど収益性は高くなる
これから新築のマンションを購入したとして、それが47年後に減価償却を完了したとしても突然住めなくなるわけではありません。
適切なメンテナンスを続けていれば賃貸マンションとしての機能を保ち続けることができ、新築時よりは安くなってしまうかもしれませんが、家賃収入を期待することも十分可能です。
特に新築マンションはメンテナンスについてもゼロからのスタートなので、オーナーの管理方針が寿命や耐久年数を多大な影響を及ぼします。
賃貸マンションとして使用できる期間が長ければ長いほど収益性は高くなるので、新築マンション経営を始める方は耐久年数と耐用年数の概念をしっかりと理解しましょう。
そして、節税メリットをしっかりと享受しながら耐久年数を長くするための維持管理を心掛けたいものです。
(提供:Dear Reicious Online)
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