先日筆者が主宰する「Fund Garage」に面白い質問をいただいた。それは「外貨建ての投資信託を買おうと思うのですが、為替リスクとはなんですか?」という、極めてシンプルな質問だった。

投資信託,円安
(画像=shaqualeek/PIXTA、ZUU online)

筆者のように「金融業界一筋37年」ともなると、さすがに何度も「金融業界の常識は、世間の非常識」という場面を経験しているが、案外性懲りもなく繰り返してしまうものである。つまり、自分たち金融業界の関係者にとっては常識のつもりが、世間一般の方々からすると実は「分かっていそうで分かっていない」ということは多々あるものだ。その典型が「為替リスク」である。

これは金融業界に限った話ではない。たとえば、筆者はコーヒーチェーン店のスターバックスをよく利用するのであるが、実は「ダブル・トール・カプチーノ」しか注文したことがない。したがって、隣の若いお客の注文を耳にしても実物を想像することはほとんどできない。だが、そのまるで呪文のようにさえ聞こえるオーダーを店員はきちんと理解している。筆者からみると凄い専門用語の羅列(られつ)にも思うのだが、スターバックスの職場ではそれが常識なのだ。

閑話休題。確かに言われてみれば、初心者にとって「為替リスク」とは何で、投資信託にどうかかわってくるものか、分からなくて当然だろう。質問をくださった方は「こんな初歩的な質問ですみません」と恐縮されていたが、「無知の知」ほど投資の世界で本来成功への近道となるものはない。知らないことを知らないといえる人が少ないという前に、自分が知らないことに気がついていないのだ。だから何の遠慮をする必要があろうかといつも思っている。本物の専門家ならば、普通は間違いなく喜んで説明してくれるはずだ。