本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

話を聞いてほしい時は一瞬の沈黙が効果的

ビジネスマン
(画像=PIXTA)

重要な話は、沈黙した後に話をはじめるとしっかり聞いてもらえます。

聞いてほしいのに沈黙? と、意外に思われるかもしれませんが、学校の授業中、騒がしい教室で「静かに!」と何度も大声で怒鳴る教師より、何も言わず黙っている教師の方が、みんなが静かになりませんでしたか?

教師が沈黙していることに気づいた学生から徐々に静かになっていき、最後には教室がシーンと静まり返り、学生全員が教師の話を聞く体勢になるという状況です。

学生が静かになるのは、急に沈黙した教師に一瞬戸惑い、「先生は今から何を話すのだろう?」と注目して、聞く耳を持ちはじめるからです。

プレゼンが上手い人は沈黙を上手く使います。演説の上手い人も、沈黙で人を惹きつけます。有名なエピソードは、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズの、iPhone発表でのプレゼンテーションです。ジョブズは、「2年間、この日が来るのを待っていた」と言って7秒間沈黙し、聴衆の注目を集めました。

沈黙というとネガティブなイメージですが、プラスにも活用できるのです。

一般的には、会話中にシーンと静まり返るほど沈黙すると、否定的な感情として受け取られるのでNGですが、「話をしっかりと聞いてほしい」と思ったら、言いたいことの前にあえて一瞬の沈黙を入れると、聞き手の興味を引くことができます。

人は話を聞いてもらいたい時、多くを語ろうとして早口で続けざまにしゃべってしまいがちです。でも、それよりも効果的なのが「沈黙すること」なのです。

プレゼンや商談では「ここを聞いてほしい」という直前に数秒間沈黙する時間を取り、聞き手の興味を引きます。聞き手の興味が自分に集中したら、相手の印象に残るキラーフレーズでインパクトを与えると説得力や信頼感が増します。

ビジネスシーンだけでなく、普段なかなか話を聞いてもらえない家族や恋人との会話でも、沈黙するのが話を聞いてもらえる近道です。ともすれば、「ちょっと、人の話聞いてるの?」と相手に怒りをぶつけたくなりますが、そうすると言い争いになるだけです。

それより、「あのね」と言って7秒程度沈黙すると、相手が「どうしたの?」と注目して聞く耳を持ちます。そのタイミングで話をはじめると、相手は落ち着いてしっかりと話を聞いてくれるでしょう。

心理学が証明! 何度も会うと無理なく好かれる

たとえば、あなたが買い物に行ったとします。いろいろなメーカの商品が並んでいる棚を前に、どの商品を買えばいいのか迷うことがありますよね。そんな時に、コマーシャルで見た商品を買ってしまった、という経験をしたことはありませんか?

これは、何度もコマーシャルで見ているうちに、その商品に対して親近感を覚えるからです。この現象は品物だけでなく、人に対しても同じことが起こります。

このような現象は、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した「何度も会うと好感度が上がり信頼感が増す」という心理効果で、ザイアンスの法則と呼ばれています。

ザイアンスは論文の中で、次のようなエピソードを紹介しています。

ある日、学校の教室に頭から大きな黒い袋を被って、裸足の足だけを出した謎の学生が座っていました。この「黒い袋の人」は、週に3回、午前11時にやって来て静かに教室で座っています。教師は、「黒い袋の人」を気にすることもなく淡々と授業を進めます。

この状況が続く中で、学生が「黒い袋の人」にどんな感情を持ったのか、という実験を行った教師がいました。教室で「黒い袋の人」を見た学生たちは、不信感からはじめは敵意を抱きましたが、徐々に好奇心へと変わっていきました。そして、なんと最後には学生と「黒い袋の人」との間に友情が芽生えたということです。

ザイアンスはこのエピソードから、「会えば会うほど好きになってもらえる可能性が高い」と考え、さまざまな実験を行いました。その中の一つに、12人の男性の顔写真を、実験協力者に見せる回数を変えて提示し、回数と好意について調査を行いました。すると、提示回数の多かった男性に好意を持つことがわかりました。

「好きになってもらいたい」「自分に興味を持ってもらいたい」と思ったら、はずかしがらずに会う回数を増やせばいいのです。ビジネスでもクライアントと会う回数を増やすと、親近感を持ってもらいやすいのです。

ザイアンスの実験では、会う回数を増やすだけで好きになってもらえることが実証されましたが、さらに会った時の身だしなみや笑顔など、感じの良さがあれば鬼に金棒です。

最近では、オンラインでのコミュニケーションも増えてきました。お互いが遠方に住んでいる場合や訪問時間が取れない場合でも、ビデオコミュニケーションツールを使うと、モニター越しに会う回数を増やせるので、オンラインでもザイアンスの法則が生かせます。

心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術
寿マリコ(ことぶき・まりこ)
池坊短期大学教授。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。精神科医で森田療法家である北西憲二氏に師事し、心のケアや社会復帰のためのメイクセラピーの研究を行う。勤務校では「現代社会とコミュニケーション」などの講義を持つほか、外見印象やノンバーバルコミュニケーションの研究、メンタルヘルスに関する活動を行う。また、官庁関連機関や企業では就労支援講座を行っている。著書に『好印象で面接に勝つ!就活メイク講座』(ミネルヴァ書房)、『新社会人のためのビジネスマナー講座』(ミネルヴァ書房)がある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)