本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

良かれと思ったアドバイスが嫌われる3つのNG

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(画像=PIXTA)

相手のことを考えて、良かれと思ってアドバイスしたのに、逆に嫌われる原因になることがあります。部下や後輩を成長させようと、あれこれアドバイスをしても、相手が聞く耳を持たないと、せっかくのアドバイスも単なる文句やありがた迷惑にしかなりません。

相手のことを思うなら、実りのあるアドバイスをしたいものですよね。

以下は、嫌われる3つのポイントです。アドバイスをする際の参考にしてみてください。

(1)過去の失敗を引き合いに出してアドバイスする

相手のミスを心配するあまり、「前回は期限に遅れたけど、今回は失敗しないように」など、過去の失敗を引き合いに出すことです。「前もこうだった」という先入観を持ってアドバイスをすると、相手の意欲や前向きな気持ちが失われてしまいます。

大切なのは、自分の経験や考えと照らし合わせて「評価しながら聞く」のではなく、まず「相手の話を聞くこと」に集中します。そのうえで、現在の状況を正確に把握してアドバイスをすると、相手も聞く耳を持ってくれます。

(2)相手を責めるような言い方でアドバイスする

仕事熱心な人ほど、部下や後輩がミスやトラブルを起こした時に「なんでこんなこともできないんだ」と、相手に怒りをぶつけてしまいがちです。でも、頭ごなしに感情をぶつけられた相手は、反省するどころか心の中で反発してしまいます。

相手が心を閉ざすと問題が表に出にくくなり、やがて業務に支障が出る恐れもあります。過失を一方的に責めるのではなく「努力していたのはわかっているよ」と、いったん相手を受け入れ「ミスをしないように改善策を考えよう」と、具体的にやるべきことを伝えると、相手の気持ちを傷つけずにアドバイスができます。

(3)聞かれてもいないのに自分の経験談からアドバイスする

聞かれてもいないのに、過去の経験談を話していませんか?「すごいですね」と言われると気を良くして「○○さんも、もっとこうすればいいのに」とアドバイスをしてしまいがちです。

自分の話は聞かれた時だけにして、相手の話にしっかりと耳を傾けることです。先走ってあれこれ話すより、助言を求められた時に適切なアドバイスをすると、信頼関係が築けます。まず、相手に理解していることを示して、それからアドバイスをするとスムーズに受け入れてくれるでしょう。

ラポートトークで気持ちを伝え合う

人は一人では生きていけません。さまざまな人と関りながら、協働していく必要があります。人々の行動は感情によって動かされます。そのため、感情を理解し合うことが大切なのです。

アメリカの言語学者デボラ・タネンは、著書の中で情報の伝達を重視した話し方と、心理的なつながりを重視した話し方があると述べています。前者をレポートトーク、後者をラポートトークと呼んでいます。

仕事では、業務上の必要な情報に、間違いや認識の違いがあってはいけません。主観を入れることなく、レポートトークで正確に伝えることが重要です。一方で、社内の人やクライアントとの信頼できる関係は、レポートトークだけでは生まれません。ラポートトークで気持ちを伝え合い、理解し合って良い関係を構築することができます。

コミュニケーションという言葉は、分かち合うという意味の「Communus(コミュニュス)」が語源です。仕事では、ともすれば客観的な事実だけの情報交換を行ってしまいがちですが、情報だけでなく気持ちのやり取りができて、はじめて良いコミュニケーションができるのです。

調べれば誰でもわかるような情報のやり取りだけでは、人となりが伝わらず、親密な関係は築けません。そこに自分の経験で感じた気持ちを伝えると、相手の気持ちも近づき、お互いの関係は一歩進んだものになります。

人と良い関係を築くポイントは、情報だけでなく、気持ちも一緒に伝えることです。

ラポートトークを上手く取り入れてコミュニケーションできる人は、人とのつながりが深まります。ラポートトークで心を分かち合えるから、心地いい人だと感じるのです。

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(画像=『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』より)

返しが上手い! 会話のキャッチボールのコツ

あなたのまわりに、こんな話し方をする人はいませんか?

Aさん「この前、人気のカレー屋に行ってきたよ。噂の激辛カレーを食べてきたよ」

Bさん「僕も行ってきたけど、あそこの激辛カレー、たいして辛くないよ。それならもっと辛い店があるよ。僕が最近行ってるところは、辛さ100倍まで選べるよ」

Aさん「……」

これは、よくある否定会話のパターンです。

また、次のような押しつけ会話のパターンもあります。

Cさん「昨日、このショートブーツ買ったんだよ」

Dさん「え、なんでショートブーツなの? 私はだいぶん前に買ったけど、もうそろそろロングブーツのシーズンじゃない? 私はこの前、ロングブーツも買ったよ。Cさんも早くロングブーツ買ったほうがいいよ」

Cさん「……」

このような会話は、聞き手に悪気はなくても否定や押しつけによって、最終的に相手の話を奪っています。これではせっかく共通の話題があっても、会話のキャッチボールにならず、良い関係が保たれません。こんな時、会話のキャッチボールが上手い人は、相手の話に「自分も」+「どうだった?」と返します。

はじめの例では、次のように話します。

Aさん「この前、人気のカレー屋に行ってきたよ。噂の激辛カレーを食べてきたよ」

Bさん「あのカレー屋に行ってきたんだね、僕も行ってきたんだよ。で、どうだった?」

Aさん「辛いだけでなく、スパイスも効いておいしかったよ。Bさんはどうだった?」

Bさんがこのように返すと、Aさんは自分の話を最後まですることができます。その後で、Bさんは否定したり押しつけたりすることなく、体験談を話すと会話のキャッチボールがスムーズです。後の例では、次のように話します。

Cさん「昨日、このショートブーツ買ったんだよ」

Dさん「かわいいね。私もショートブーツ買ったんだよ。Cさん、履き心地はどう?」

Cさん「ヒールは高めだけど、疲れにくくて良かったよ。Dさんはどんなの買った?」

聞き手の返しが上手いと会話のバトンタッチがスムーズにいき、お互いが気持ち良く話ができます。心地いい人は、返しが上手く、会話のキャッチボールが上手い人なのです。

心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術
寿マリコ(ことぶき・まりこ)
池坊短期大学教授。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。精神科医で森田療法家である北西憲二氏に師事し、心のケアや社会復帰のためのメイクセラピーの研究を行う。勤務校では「現代社会とコミュニケーション」などの講義を持つほか、外見印象やノンバーバルコミュニケーションの研究、メンタルヘルスに関する活動を行う。また、官庁関連機関や企業では就労支援講座を行っている。著書に『好印象で面接に勝つ!就活メイク講座』(ミネルヴァ書房)、『新社会人のためのビジネスマナー講座』(ミネルヴァ書房)がある。

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