本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

プライベートは「好きな服」ビジネスは「好かれる服」を選ぶ

スーツ
(画像=bee/PIXTA)

初対面の人と会う時に、どんな服装をしようかと悩むことってありますよね。結論から言うと、「プライベートは好きな服」「ビジネスは好かれる服」を選ぶことです。

人には「自分と似ている相手に好意を抱く」という心理が働きます。これは、類似性の法則という心理効果です。

誰かのことが「好き」という単語のlikeは、「似ている」というalikeと同じ語源を持つといわれます。お互いの服装が似ていることは、相手から「わかり合える人だ」と認識されるため、良い関係を築く大きなポイントになるのです。

アメリカの大学で、こんな実験が行われました。実験協力者の学生に、当時流行っていた2種類の服装をしてもらい、初対面の学生に「公衆電話をかけるから10セントを貸して」とお願いします。すると、似たようなファッションをしている学生の3分の2は10セントを貸してくれましたが、似ていないファッションの学生が10セントを貸してくれる割合は半数以下でした。

また、反戦デモの参加者たちに署名を依頼する実験でも、似たような服装をした人から嘆願書の署名を頼まれると、内容を読まずに署名する傾向が強かったという結果でした。

テキサス大学のドン・バーンらの研究では、類似性は「どれだけ似ているか」が重要だということを見出しています。相手から好かれるには、相手に服装のテイストを合わせるのがベターです。約7割もの上司が、自分と似たような服装をした部下に好意を示したという報告がされているなど、服装を真似ると好かれることが明らかになっています。この結果からすると、「お互いの関係が良い方向に進むか、逆に抑制されるか、どんな服を着るかにかかっている」と言っても、言い過ぎではありませんね。

プライベートでは、好きな服を着ると、同じ好みの気が合う人が集まります。一方で、ビジネスでは自分の好みはいったん置いて、好かれる服を選びます。いつもカチッとしたスーツを着ている人と会う場合は、同じようにスーツスタイルで、カジュアルな服装の人には、同じような服装にすると親密度が深まります。

社会学者のチャールズ・H・クーリーは「人が自分を見てこう思うだろう」という、鏡で自分を見るような意識を通して、自分の外見などを考える過程を「ルッキング・グラス・セルフ(鏡映的自己)」と呼びました。仕事で、事前に相手の服の傾向がわからない時は、相手から見た自分を想像して、服を選ぶと良い結果につながるでしょう。

色を使い分けて「なりたい自分」になる

人は色に左右されている

普段「好きだから」「流行色だから」という理由で、色を選ぶことって多いですよね。何気なく選んでしまう色ですが、色の心理効果を活用すると、自分がなりたい印象に近づけることができます。

色には、印象を左右する心理効果があります。たとえば、同じ缶コーヒーの中身でも、缶の色によって違う味に感じることがあるのです。実験では、缶の色が「濃い茶色」のコーヒーは香りや味が最も濃厚、「赤」はやや濃い、「青」はやや薄い、「黄」は非常に薄いという結果でした。なんと、外の缶の色が影響して、中身の味の印象まで変えていたのです。

そのほかにも、イギリスの都市グラスゴーでは、ショッピングストリートの街頭を青色に変えたところ、犯罪が激減したそうです。

また、企業のシンボルカラーなども、色彩心理が応用されています。たとえば、パナソニックは夜明けの空をイメージした「Panasonicブルー」がコーポレートカラーですし、アメリカのジュエリーブランドであるティファニーの、コマドリの卵の色を由来にした「ティファニーブルー」は有名ですよね。

青は誠実、信頼、知的などの印象を人に与えるので、イメージカラーに多く使われています。このように、人は色に多くの影響を受けているのです。

色で「なりたい自分」が引き出せる

色のメリットをファッションに生かすと、自分の目的に合わせて演出できます。

色を活用する時のポイントは2つ。1つ目は、全身を一色でコーディネートしないことです。たとえば、白いシャツを着ている人は清潔感があり好感度が高いですよね。でも、全身が真っ白の服装の人は、近寄りがたいという印象を受けませんか? 全身が一色だけのコーディネートは、色の印象が強調されすぎるためマイナスです。メインカラーに、反対色や類似色のアクセントカラーで変化をつけると、印象はグンと良くなります。

2つ目は、膨張色と収縮色を意識してコーディネートすることです。白や黄色などの膨張色は太って見える一方で、黒やネイビーなどの収縮色はやせて見えます。「ふっくら見せたい」「すっきり見せたい」など、なりたい印象に合わせて選びます。

「自分をこう見せたい」と思った時に効果的な服の色とは

次に、ビジネスシーンや日常でよく使う色について、人に与える心理効果を解説します。「自分をこう見せたい」という時の参考にしてみてください。

●目上の人と同席する時は「信頼感がある人」のネイビー

目上の人と同席する時は、真面目な印象を与えるネイビーがおすすめです。赤より7メートルも後退して見えるため、出しゃばった印象を与えません。ネイビーは信頼を得る色で、ビジネスシーンには万能色ですが、参加人数が多い会議などは、白や明るめの同系色と組み合わせて、適度な存在感を示しましょう。

●「オンライン会議で好印象の人」は青

オンライン会議で印象を上げたいなら、青がおすすめです。青はネイビーより明度が高く、モニターの顔映りを良く見せます。青い服を着ている人は、堅実で礼儀正しいという印象です。また、心を落ち着かせる色なので、集中力が高まり、自分も良い影響を受けます。

●謝罪する時は「控えめな人」のグレー

謝罪しなくてはいけない時など、ピンチに立たされた場合はグレーがおすすめです。グレーは、大勢の中で人を埋没させて存在感を消す色です。控えめな印象を与えるので、目立ちたくない時に使える色です。

●言いにくいことを伝える時は「誰からも好かれる人」のベージュ

人に注意を促さないといけない時、厳しいことを言わなければいけない時は、ベージュがおすすめです。ベージュは誰からも好かれる色で、着る人が反感を買いにくい色です。

●「仕事を任せられる人」はブラウン

重要な仕事を任せられたいと思っているなら、堅実で安心感を与えるブラウンがおすすめです。人から嫌われない色でもあるため、ビジネスシーンには重宝です。また、童顔の人が年齢を高く見せたい時にも使える色です。

●意中の人の気を引きたい時は「魅力的な人」の赤

赤い服を着る人は魅力的に見え、男女ともにモテる色です。赤い服にまつわる研究では、男女とも異性から好意を抱かれやすいことが明らかにされています。赤は人の目を引き、関心を集中させます。ビジネスでは、他の人より自分を印象づけたい時や、自分のやる気を上げたい時に使える色です。赤い服は目立ちすぎるという場合は、男性はネクタイやチーフ、女性はスカーフやアクセサリーなどの小物に取り入れるのがおすすめです。

色はそれぞれが特有の感情を引き出し、言葉を超えたメッセージを伝えます。目的に合わせて、色の効果を味方にしてみてくださいね。

心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術
寿マリコ(ことぶき・まりこ)
池坊短期大学教授。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。精神科医で森田療法家である北西憲二氏に師事し、心のケアや社会復帰のためのメイクセラピーの研究を行う。勤務校では「現代社会とコミュニケーション」などの講義を持つほか、外見印象やノンバーバルコミュニケーションの研究、メンタルヘルスに関する活動を行う。また、官庁関連機関や企業では就労支援講座を行っている。著書に『好印象で面接に勝つ!就活メイク講座』(ミネルヴァ書房)、『新社会人のためのビジネスマナー講座』(ミネルヴァ書房)がある。

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