本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
言いたいことをいきなり言わない「スポンジ話法」とは
日常生活では人に依頼したり、誘いを断ったりという、「言いにくいことを伝えないといけない場面」に遭遇します。そんな時に役立つのが「スポンジ話法」です。
スポンジ話法は、「言葉がスポンジに吸収されるように、ふんわりと柔らかくなる」ため、言いにくいことでもソフトに伝わります。相手の感情を和らげるため、コミュニケーションをスムーズに進められるメリットがあります。
言い方次第で、自分の伝えたいことが相手に気持ちよく受け入れてもらえるなら、スポンジ話法を使わない手はないですよね。スポンジ話法は、次のような流れで使います。
(1)はじめに相手の気持ちを汲んだ言葉を伝える (2)メインの内容(言いたいこと)を伝える (3)語尾は状況に応じて提案型、質問型、代替案型にする
ビジネスでは、「業務内容だけをストレートに伝えること」と言われているかもしれませんが、自分が依頼されたり断られたりという逆の立場なら、スポンジ話法で柔らかく伝えられたほうが気分良く受け入れられますよね。
次に、シチュエーション別のスポンジ話法を解説します。それぞれの状況や相手に応じて取り入れてみてください。
●依頼する時
親しい間柄でも、依頼したい内容をいきなり言う前に、「恐れ入りますが」「恐縮で すが」「お手数をおかけしますが」「勝手を言いますが」という言葉で、命令されたという印象を与えないようにします。
語尾は「いかがですか」「よろしいでしょうか」などの提案型にして、相手に決定権をゆだねます。
例「お手数をおかけします。取引先にサンプル品を送っていただきたいのですが、よろしいでしょうか」
●要求する時
初対面やそれほど親しくない相手に対して、自分から何か物事を要求する時は、はじめに「よろしければ」「お差し支えなければ」「もし可能でしたら」「お時間大丈夫でしょうか」と、相手の意向をうかがう言葉で、ぶしつけな印象を与えないようにします。この場合も語尾を提案型にして、相手に決定権をゆだねます。
例「お差し支えなければ、ご住所を教えていただけますと幸いです。サンプル品をお送りしますが、いかがでしょうか」
●断る時
断りを入れる時に、相手にどう言えばいいのか悩む人も多いですよね。断る時は、はじめに「申し訳ありませんが」「せっかくですが」「残念ですが」「あいにくですが」「身にあまるお話ですが」「ありがたいお話ですが」「願ってもない機会ですが」という言葉で、残念だという気持ちを伝えます。代替案がある場合は提示します。
例「残念ですが、その日は予定があるので参加できません。来週は大丈夫ですが、いかがですか」
●指摘する時
失敗や間違いを指摘されるのは誰でも嫌なものです。はじめに「大変恐縮ですが」「申し上げにくいのですが」「失礼ですが」と伝えます。次に、相手に恥をかかせたり、失礼な印象を与えたりしないように、指摘する内容を述べます。指摘箇所の言いっぱなしで終わらず、語尾は質問型にすると、相手に嫌な思いをさせずに受け入れてもらえます。
例「先日お願いした件で、申し上げにくいのですが、お送りいただいた資料に間違いがありますので、ご確認いただけますでしょうか」
●謝罪する時
反省していることが相手にきちんと伝わらなければ、いくら謝罪しても納得してもらえません。
はじめに「ご迷惑をおかけして」「ご不便をおかけして」という言葉で、相手に申し訳ないという気持ちを伝え、続いてお詫びの言葉を述べます。代替案がある場合は伝え、代替案がない場合は状況を伝えます。
例「お急ぎのところご不便をおかけしており、大変申し訳ありません。メンテナンスが終わるまであと30分ほどです。もうしばらくお待ちください」
このように、スポンジ話法を使うと、相手の気持ちを考えた表現ができます。また、相手への敬意も高まります。
「人は平均250人とつながりを持っている」、これはジラードの法則です。一人に不快な思いをさせてしまうと、その人から250人、さらにそこから250人へと影響を及しかねないという理論です。逆に、一人一人を大切に対応していると、多くの人から信頼されてファンができるかもしれません。
相手の立場を考えた伝え方、オリジナル話法の「スポンジ話法」をぜひ使ってみてくださいね。
交渉ごとは「イエス・○○法」を使う
自分の提案に対して、相手から良い返事をもらえないと、誰でも嫌な気分になってしまいます。そんな時、つい「これがいいに決まってるでしょ」と反論したくなりますが、そこはいったんグッとこらえるのが正解です。
交渉する時は、「イエス・○○法」を使うと、謙虚でありながら物事を自分の思ったように進めることができ、相手から「イエス」を引き出すことができます。
交渉が上手い人が使っている「イエス・○○法」の、代表的な2つを紹介します。
イエス・イフ法は、相手から快い返事をもらえない時に、まず相手の意見を受け入れ、次に「もし、○○だとしたら」という言い方で、相手の希望を引き出しながら提案します。
販売スタッフ「こちらの炊飯器はいかがでしょうか。AI搭載タイプの5合炊きです」
お客様「いいのはわかるけど、ちょっと値段が高いよね」
販売スタッフ「たしかにちょっと高めです。もし3合炊きでも大丈夫でしたら、同じスペックでお値段を抑えた商品があります」
お客様「うちは夫婦二人だから、3合炊きで十分だけど」
販売スタッフ「それならこちらの商品はいかがでしょうか。3合炊きAI搭載タイプで価格が○○です」
このように、イエス・イフ法なら、相手の意見を尊重しながら心地いい交渉ができます。
次に紹介するイエス・アンド法は、「でも」「しかし」などのマイナスの接続詞を使わずに、「実は」「そして」などを使い、自分の意見をプラスの言い方で伝えます。
販売スタッフ「こちらの炊飯器はいかがでしょうか。AI搭載タイプの5合炊きです」
お客様「いいのはわかるけど、ちょっと値段が高いよね」
販売スタッフ「たしかにちょっと高めです。実はこの炊飯器、米炊き名人の技術を再現できる、特殊加工の内釜を使用しているんです。少しお値段は高めですが、このグレードだと、かなりお買い得な値段設定になっています」
このように、相手の言い分をいったん受け入れ、続いて「実は」「そして」という接続詞で、相手が興味のあるプラスの情報を盛り込みます。そうすると、相手を否定することなく、説得力のある説明ができます。
「イエス・○○法」は、ビジネスでもプライベートでも、反論や否定をせずに自分の考えを伝えられるので、心地いいコミュニケーションができるのです。
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