本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

眉を見て相手の本音を推し量る

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(画像=PIXTA)

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「モナリザ」の顔は、神秘的な雰囲気をかもし出していますよね。モナリザには、もともと眉が描かれていた痕跡があるようですが、度重なる修復で消えたという説があります。現在のモナリザには眉がないため、謎めいた表情になったのです。

眉は人間らしい表情が表れる、顔の中で大事なパーツです。眉の形が変われば、同じ人でも優しく見えたりキツく見えたりします。また、眉がないとモナリザのように、表情がはっきりせずミステリアスな印象になります。

このように、人は眉で相手の感情を読み取ります。なぜなら、眉は人の本音が出やすい顔のパーツだからです。

オハイオ州立大学の心理学者リチャード・E・ペティと、シカゴ大学のジョン・T・カシオッポの研究では、表情筋が感情でどのように変化するかを測定しました。

測定の結果、「嫌い」の場合は皺眉筋という、眉山から眉頭あたりにある筋肉が反応することがわかりました。

人に、瞬間的に表れる表情のことを「微表情」といいます。微表情は0.2~0.5 秒ほどの短い時間に表れ、その表情に本音が隠されていることが多いといわれています。

表情分析の第一人者である、ポール・エクマン博士がモデルになった海外ドラマ、「ライ・トゥ・ミー嘘は真実を語る」が話題となり、微表情に人の本心が表れることが広く知れ渡りました。このドラマでは、精神行動分析学者のカル・ライトマンが、一瞬の表情やしぐさから嘘を見破り、犯罪捜査の手助けをする姿を描いています。

「この人は今、何を思っているのだろう」と、相手の心の内を知りたい時は、一瞬の眉の動きに注目してみるのも一つの方法です。日本には、「顔で笑って心で泣いて」という言葉があるように、本心を出さずカムフラージュすることが美徳とされる文化があります。そのため、口元は笑っていても、本心は違う場合もあるのです。

たとえば、笑っているにもかかわらず、眉間にシワが寄った瞬間があれば、相手は今の状況を心地いいとは思っていないのかもしれません。相手が眉をグッと上げ、額にシワを寄せて笑ったなら、何かに当惑している可能性があります。

気にしすぎは良くないですが、相手を観察し、相手の気持ちを察することができると、相手を気づかうことができるでしょう。

手のしぐさで謙虚な心を伝える

手指への注目は、ほかの体の部位に比べて圧倒的に多いといわれます。たしかに、話している時にも、相手の手指には、つい目がいってしまいますよね。

この理由は、人間が進化の過程で脳の機能が発達し、手先が器用になり道具を使えるようになったことに由来します。人が生きていくためには、相手が武器などを手に持っていないか、いち早く察知する必要があります。そのため、人は相手のわずかな手の動きも感じ取るようにできているのです。

旅館などの接客では、お客様に出すお茶を、置いた後にゆっくり手を引く 「名残り手」で「手に気持ちを込めて相手をもてなす」という話を聞いたことがありますが、手のしぐさは相手に多くのメッセージを伝えます。

手のひらを上に向けるしぐさと、下に向けるしぐさとでは、相手に与える印象がガラリと変わります。たとえば、依頼する場合「こちらをお願いできますか」と言いながら手のひらを上に向けると、相手に敬意を払う気持ちが伝わり謙虚さが伝わります。一方で、手のひらを下に向けると、指示や命令というメッセージになってしまいます。

◆手のひらを上に向ける……謙虚な印象
◆手のひらを下に向ける……威圧的な印象

また、ビジネスでは、資料や商品などをさし示すことも多いですよね。こんな時、人差し指でさしてしまいがちですが、このさし方は威圧感がありガサツな印象にもなります。さし示す時は、手のひらを上にして、手の指全体で示します。この時、指は閉じておくと好印象です。

心はしぐさに表れます。心地いい人は、しぐさの大切さをわかっていて、一つ一つのしぐさに相手への気持ちを込める人なのです。

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(画像=『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』より)

謙遜しすぎない

謙虚な気持ちは大切ですが、謙遜しすぎると相手に気を遣わせてしまいます。特に、仕事で成果を出してほめられた時などは、どう返事をしたらいいのか戸惑ってしまい、「そんなことないです」「たいしたことないです」と、謙遜しすぎてしまう人もいます。

ほめられた時に心地いい返し方ができると、ほめた側もうれしくなり、コミュニケーションが上手くいきます。心地いい人は、ほめられた時に素直に喜ぶことができる、「ほめられ上手」です。謙遜しすぎないように、次の3つに気を配ってみてください。

(1)困惑した表情に気をつける

ほめられたことで、気恥ずかしい気持ちがして、困惑した表情になってしまうと、せっかくほめてくれた人をがっかりさせてしまいます。

ほめられた時は素直に喜び、明るく笑顔で対応すると相手も喜んでくれます。

(2)深読みしない

ほめられた時に、「何か目的があるのかな?」「どういうことなんだろう?」と深読みして、素直に喜べない人もいます。疑念はいったん置いて、考えすぎずにほめてくれた事実に対して「うれしいです」「ありがとうございます」と、お礼の言葉を返しましょう。

(3)すぐに相手をほめ返さない

自分がほめられると、慌てて相手をほめ返す人もいます。次のようなやり取りです。

Aさん「さっきのお客様、とても喜んでいたよ。Bさんはいつも仕事が丁寧で、接客も完ぺきにこなすね」

Bさん「そんなことないです、それよりAさんのほうがすごいです」

こうすぐほめ返すのでは、相手をがっかりさせてしまいます。

相手をほめる場合は、自分がほめられた「ついでに」ではなく、相手のことを素晴らしいと思った機会に、しっかりと気持ちを伝えるのがベターです。

自分がほめられた時は、次のように素直に相手の気持ちに感謝します。

Bさん「ありがとうございます。Aさんがそう言ってくださると、仕事の励みになります。とてもうれしいです」

謙遜しすぎず、謙虚な気持ちで相手の好意を受け取ると、相手も心地いい気分になり、お互いの関係が良い方向に進んでいきますよ。

心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術
寿マリコ(ことぶき・まりこ)
池坊短期大学教授。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。精神科医で森田療法家である北西憲二氏に師事し、心のケアや社会復帰のためのメイクセラピーの研究を行う。勤務校では「現代社会とコミュニケーション」などの講義を持つほか、外見印象やノンバーバルコミュニケーションの研究、メンタルヘルスに関する活動を行う。また、官庁関連機関や企業では就労支援講座を行っている。著書に『好印象で面接に勝つ!就活メイク講座』(ミネルヴァ書房)、『新社会人のためのビジネスマナー講座』(ミネルヴァ書房)がある。

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