本記事は、寿マリコ氏の著書『心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
エンパシーを身につける
「人は一つの舌と二つの耳を与えられた。我々は話すより2倍聞くことができる」
これは、古代ギリシャの哲学者ゼノンの言葉です。
イギリスの実業家で、ヴァージングループの創設者であるリチャード・ブランソンも「人間には口が一つで耳が二つある。素晴らしいリーダーになりたいなら聞き上手になることからはじめよう」というフレーズを残しています。
ゼノンやリチャード・ブランソンの言葉のように、「自分が話す2倍、人の話を聞く」という気持ちで人の話を聞くことは、人間関係に多くの効用をもたらします。
人の話を聞くといっても、相手がしゃべっているのを黙って聞いていればいいのではありません。話を聞く時に大切なのはエンパシーです。
エンパシーとは、自分と違う価値観の人の考えや思いを想像し共感できるスキル、つまり共感力のことをいいます。
人は、自分と同じ考えや感情を持っているとは限りません。ビジネスでは、クライアントの求めているものや価値観を想像できなければ、品物やサービスを提供することが困難になります。また、職場やプライベートの人間関係でも、人の考えや気持ちに対する共感力がないと相手を尊重することができません。
エンパシーを身につける出発点は、「物事の見方は人によって違う」という点を理解することです。
違いがあるものだと認識したうえで、自分の見方はいったん脇に置き、「この人はどんな経験をしたんだろう」「この人は何をわかってほしいと思っているのだろう」と、話をしている人の考えや気持ちを想像しながら聞きます。
心地いい人は、エンパシーを身につけた人です。共感力があるから人から信頼され、より良い人間関係が広がるのです。
コップ理論で話を聞く
「コップ理論」とは、人の心をコップに、感情の量を水にたとえて表現したものです。
人は、自分の話を聞いてもらいたいと思っているものです。「あれも話そう」「これも話そう」と、会話相手に「話を聞いてほしい」という気持ちでいっぱいになっています。
一方で、話を聞く側が「早くこれを言ってあげよう」「すぐにアドバイスしてあげなくては」という、「相手に言いたい」気持ちで対応してしまうと、お互いのコップに水が入りきらず、水があふれるように感情があふれ出してしまいます。これは、両方が「自分が、自分が」という状態になっています。これでは、お互いの話が頭に入りません。
良いアドバイスを思いつくと、すぐに言ってあげたくなるものですが、アドバイスをするより最後まで話を聞いてあげることが大事です。
話を聞く側は、はやる気持ちを押さえて、いったん自分のコップの水を空っぽにするイメージで、相手からの水を受け入れる準備をします。そうすると、話を落ち着いて聞くことができます。話をする側は、自分の話をすることでコップの水は減っていき、聞き手からの話を受け入れる準備ができていきます。
話す側と聞く側のコップの水が上手く入れ替わると、最終的にお互いが理解し合えた状態になります。
このようなコミュニケーションを、コップ理論と呼んでいます。
コミュニケーションは、相手の話を聞いて理解することからはじまります。心地いい人は、はじめに自分のコップを空っぽにして、相手の話をじっくり聞ける人なのです。
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