不動産投資で成功するには、収益性の高い物件を選ばなくてはなりません。不動産には空室リスクがあり、さまざまな費用もかかるため、物件選びを不動産会社任せにするのは危険な部分もあります。
シミュレーションで利回りやCF(キャッシュフロー)を試算し、最終的には自分で投資判断をすることが大切です。今回は、不動産投資のシミュレーション方法について詳しく解説します。
目次
不動産投資のシミュレーションとは
不動産投資のシミュレーションとは、投資対象物件の収益や費用を試算して、どれくらいの利益が見込めるかを把握することです。入居者から受け取る家賃収入から不動産投資でかかる費用を差し引いて、毎年手元にいくら残るかを計算します。
不動産は投資金額が大きいので、シミュレーションの手間を怠ると想定外の支出が発生し、資金繰りに困るかもしれません。また、不動産会社は物件選びのプロですが、担当者によって経験やスキルに差があるため、紹介された物件が優良物件とは限りません。
購入前にシミュレーションで収支を予測し、物件の収益性を判断する必要性は高いといえるでしょう。
シミュレーションの際に理解しておきたい不動産投資の用語(ローン)
不動産投資シミュレーションでは、項目ごとに数字を入力します。初めてシミュレーションをする場合は、専門用語の意味を理解しておくことが大切です。ローンに関する主な用語と意味をまとめました。
用語 | 意味 |
自己資金(頭金) | 物件購入の際に自己資金で支払う金額 |
借入金額 | 物件購入のために金融機関から借り入れる元金の総額 |
借入金利 | 適用されるローン金利(変動金利または固定金利) |
借入期間 | ローンを完済するまでの期間 |
返済額(月額) | 毎月のローン返済額(元金+利息) |
返済額(年額) | 1年間のローン返済額(元金+利息) |
返済総額 | 借入金額(元金)に利息を含めたローンの支払総額 |
自己資金(頭金)を多めに準備すると借入比率が下がるため、ローン審査に通過しやすくなります。借入金額や借入金利、借入期間によって毎月のローン返済額や支払総額が変わることも理解しておきましょう。
シミュレーションの際に理解しておきたい不動産投資の用語(利回り)
不動産投資の利回りに関する主な専門用語とその意味は、以下の通りです。
用語 | 意味 |
想定年間家賃収入 | 満室と想定した場合の1年間の家賃収入総額 |
諸経費率 | 家賃収入に対する諸経費の割合(固定資産税、管理委託費用など) |
想定空室率 | 想定される空室の割合 |
年間支出 | 年間ローン返済額と年間諸経費の合計額 |
年間手取り | 年間家賃収入-年間支出 |
表面利回り | 算出式:想定年間家賃収入÷物件価格×100 |
実質利回り | 算出式:(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格-諸費用)×100 |
返済後利回り | 年間手取り÷物件価格 |
投資利回り | 年間手取り÷自己資金 |
不動産投資は、空室になると家賃が入ってこないため、空室率をいくつかシミュレーションすることが必要です。例えば10戸のマンションで常に1戸空いていると想定する場合、空室率は10%となります。年間手取りは、年間家賃収入から年間支出を差し引いたものでいわゆるキャッシュフローのことです。
利回りは「表面利回り」と「実質利回り」の違いを押さえておきましょう。表面利回りは、想定年間家賃収入を物件価格で割って算出しますが諸経費や空室率を考慮していません。物件の収益性を正確に判断するなら諸経費や空室率を考慮した実質利回りの確認が必須です。
不動産投資シミュレーションの正確性を上げるためにやるべきこと
不動産投資のシミュレーションは、やり方によって結果の精度が変わってきます。ここでは、シミュレーションの正確性を上げるためにやるべきことを2つ紹介します。
不確実性をできる限り排除する
不動産投資の収益は、不動産価格や空室率、設備の故障といった不確実な事象に左右されます。シミュレーションの正確性を上げるには、不確実性(リスク)をできる限り排除することが大切です。まずは、シミュレーションの項目を確実なものと不確実なものに区分しましょう。不確実な項目については、最悪の事態を想定して数字を設定するとリスク軽減が期待できます。
複数の条件でシミュレーションをする
不動産投資のシミュレーションでは、複数の条件を設定することも重要です。不動産投資は、不確実な要素が多いため、将来の収益やキャッシュフローを正確に見積もるのは困難な一面があります。複数の条件でシミュレーションをすればより可能性が高いと思われる結果をもとに投資判断が期待できるでしょう。
例えば空室率や諸経費率、適用金利の上昇などを想定し、さまざまな条件でシミュレーションすることが大切です。
不動産投資のシミュレーションに必要な項目
ここでは、不動産投資のシミュレーションに必要な項目を確認します。
物件の購入金額・基本情報
物件の購入金額のほかに、建物の構造や面積、築年数などの基本情報も必要です。購入金額は土地と建物の内訳を把握しておくと、税金計算に必要な減価償却費を把握できます。基本情報は物件の価値下落や修繕費、設備の交換費用などの予測に役立ちます。
物件購入時の諸費用
収益物件を購入するときは、物件価格のほかに以下のような諸費用もかかります。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 印紙税
- 仲介手数料
- 不動産取得税
不動産投資ローンを利用する場合は、ローンの事務手数料や保証料なども必要です。それぞれの費用を把握しておけば、正確なシミュレーションができます。費用の詳細がわからない場合は、物件価格の10%程度をまとめて諸費用とすることも可能です。
年間家賃収入
年間家賃収入は「月額家賃×12ヵ月」です。オーナーチェンジ物件なら現在の家賃、空室の場合は想定家賃をもとに計算します。不動産投資では定期的に退去が発生するため、空室率を考慮するとシミュレーションの精度は上がります。
例えば、1年間の空室期間が10%程度と予測される場合は、満室時家賃収入の90%の金額でシミュレーションを行います。空室率に正解はないので、投資物件の過去の実績や投資エリアの賃貸需要など参考に設定するといいでしょう。
また、家賃は築年数の経過とともに下落する傾向にあります。長期間のシミュレーションを行う場合は、家賃の下落率も考慮しておきましょう。
・投資エリア内にある同条件の家賃相場や物件価格を調べる
購入予定の物件が空室の場合、物件情報に記載されている想定家賃収入が相場とかけ離れている可能性があります。一方でオーナーチェンジ物件の場合は、現在の家賃が相場より高いと退去が発生した際に収益性が下がるかもしれません。投資エリア内にある同条件の家賃相場を調べておけばより精度の高いシミュレーションが可能です。売却時期を想定している場合は、物件価格も確認しておきましょう。
物件購入後の維持管理費
不動産投資は物件を購入して終わりではなく、以下のような維持管理費がかかります。
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
- 固定資産税
- 賃貸管理手数料(賃貸管理を管理会社に委託する場合)
- 火災保険料、地震保険料
物件購入前であっても、不動産会社に確認すれば概算金額は把握できます。修繕積立金は、将来値上がりの可能性があるので注意が必要です。
借入金額、適用金利、毎月の返済額
不動産投資ローンを利用する場合は、借入金額や適用金利、毎月の返済額が必要です。ローンに関する情報を整理しておけば、家賃収入からローンを返済した後にいくら残るかを把握できます。
不動産投資シミュレーションの情報収集で活用できるWebサイト
不動産投資シミュレーションを行う際は、幅広い情報を収集しなくてはなりません。物件選びの段階では、インターネットを活用すると効率的に情報を入手できます。ここでは、投資エリアの選定に役立つ「地価」が確認できるWebサイトを紹介します。
全国地価マップ(一般財団法人資産評価システム研究センター)
全国地価マップは、地価情報が地図上に表示されるWebサイトです。資産評価システム研究センターが運営しており、以下4つの公的土地評価情報を確認できます。
- 固定資産税路線価:固定資産税の課税標準となる路線価(道路に面する土地1平方メートルあたりの評価額)
- 相続税路線価:相続税の課税標準となる路線価
- 地価公示価格:一般の土地取引の指標となる価格(国土交通省)
- 都道府県地価調査価格:一般の土地取引の指標となる価格(都道府県)
過去数年分の地価が表示されるため、土地価格の推移を確認するのに便利です。
不動産投資においてシミュレーションが重要な理由
不動産投資でシミュレーションが重要なのは、紹介された物件を購入すべきかを適切に判断できるからです。具体的には、以下のような効果が期待できます。
実質利回りがわかる
不動産投資において、物件の収益性は利回りで判断します。利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
- 表面利回り:年間家賃収入÷物件価格×100
- 実質利回り:(年間家賃収入-維持管理費)÷(物件価格-諸費用)×100
物件情報に掲載されているのは、満室時の年間家賃収入をもとに計算された表面利回りです。表面利回りは、簡易的に利回りを計算するには便利ですが、空室率や諸費用は考慮されていません。表面利回りだけで物件を選ぶと想定より現金が残らず、失敗する可能性があります。
一方、実質利回りは費用も含めて計算した利回りです。空室率や諸費用、維持管理費なども考慮するため、より正確な利回りがわかります。シミュレーションで物件の実質利回りを確認すれば、優良物件を見つけやすくなるでしょう。
手元にいくら残るかがわかる
不動産投資のシミュレーションは、手元にいくら残るかわかるのもメリットです。ローンを利用して収益物件を購入すると、家賃収入からローン返済を行います。退去が発生したら、次の入居者が決まるまでは自己資金でローンを返済しなくてはなりません。シミュレーションでキャッシュフローの収支予測をしておけば、資金繰りに問題がないかを判断できます。
売却時期を判断しやすくなる
不動産投資は、長期にわたって安定した収入が期待できます。ただし、築年数が古くなるほど修繕の必要性が増し、資産価値や家賃も下落傾向にあります。家賃収入を目的とした長期投資であっても、出口戦略を考えておかなくてはなりません。
不動産は、売却するタイミングによって売却価格や税金が変わってきます。シミュレーションで長期の収支予測をたてておけば、売却時期を判断しやすくなるでしょう。
関連記事:不動産投資における利回りの計算方法とは? 表面利回りと実質利回りの違いも解説
不動産投資シミュレーションを行う際の注意点
不動産投資シミュレーションを行うときは、以下の4つに注意が必要です。
・周辺相場と比較して家賃を設定する
・家賃の下落率を考慮する
・空室率を考慮する
・設備交換や災害による支出を想定しておく
1つずつ見ていきましょう。
周辺相場と比較して家賃を設定する
周辺相場と比較して適切な家賃を設定することが大切です。家賃が相場より高すぎると入居者を見つけるのが難しくなります。一方で空室リスクを恐れて家賃を低く設定しすぎると収益性が低下してしまいかねません。家賃は、オーナーが自由に決められますが必ず周辺相場を意識して金額を設定しましょう。
家賃の下落率を考慮する
賃貸不動産の家賃は、築年数の経過に伴い下落するのが一般的です。長く保有するほど家賃が下がる可能性が高まるため、下落率を考慮してシミュレーションを行いましょう。家賃の下落率は、物件種類や築年数、エリアによって異なります。シミュレーションの際は、周辺相場の過去の下落率を参考にするのがおすすめです。
空室率を考慮する
賃貸不動産は、一般的に2年ごとなど契約期間が決まっており契約更新時に退去が発生する可能性があります。例えば入居者が大学生の場合は、卒業のタイミングで退去の可能性が高まるでしょう。そのため退去発生のタイミングや入居者が決まるまでの期間を考慮して空室率を設定することが大切です。
設備交換や災害による支出を想定しておく
不動産投資では、所有物件の付属設備となるエアコンや給湯器などが故障し急にまとまった支出が生じることも珍しくありません。また台風や水害といった自然災害で建物に被害が出た場合は、多額の修繕費の負担も生じます。シミュレーションで突発的な支出を想定しておくと、より適切な分析ができるでしょう。
不動産投資のシミュレーション方法【エクセル・ツール・アプリを紹介!】
実際にシミュレーションを行うときは、どんな方法があるのでしょうか。ここでは、不動産投資のシミュレーション方法を紹介します。
Excelで計算する
Excelに必要な項目を入力して自分でシミュレーションを行う方法です。項目や計算期間などをアレンジしながら自由にシミュレーションができます。ただし初心者が白紙の状態から自分でシミュレーションをするのは難しいかもしれません。一部の不動産会社では、実質利回りなどが計算できるExcelファイルを提供しています。
不動産会社のホームページからダウンロードできるのでうまく活用しましょう。またインターネット上から不動産投資シミュレーションに関するExcelのテンプレートをダウンロードして使う方法もあります。主なテンプレートは、以下の通りです。
・シンプルで使いやすい「キャッシュフロー計算ソフト」
必要項目を入力するだけで簡単に課税所得額とキャッシュフローが算出できるツールです。入力項目が物件価格や金利、借入金額といった基本的な内容のため、初心者でも使いやすいでしょう。空室率が「0%(変更可能)」「10%」「20%」「30%」の4パターンがあり、それぞれの課税所得額とキャッシュフローを確認できるのも魅力です。
「返済何年目」の数字を変えれば、経年によるキャッシュフローの変化も把握できます。
・投資期間全体の収益性を把握できる「IRRによる不動産投資収益計算Excelシート(Lite版)」
IRR(内部収益率)や長期のキャッシュフローが確認できるツールです。IRRとは、賃貸不動産の購入から運用、売却まで投資期間全体の収益性を判断できる指標のことです。IRRは、他の金融商品でも算出可能で不動産以外の投資商品とも比較できます。物件価格や想定賃料などの項目を入力するとIRRや最長35年間のキャッシュフロー推移を表示することが可能です。
本格的な分析が可能ですが入力項目が多く詳細な情報を準備する必要があります。また借入条件は「自己資金割合20%」「借入金利2%」「ローン年数30年」で固定されており条件変更できないのがデメリットです。
IRRによる不動産投資収益計算Excelシート(Lite版)
・マクロで本格的な分析ができる「不動産投資DCF法レバレッジ方程式(無料版)」
マクロを利用して長期のキャッシュフロー推移などを表やグラフで把握できるツールです。入力シートに物件概要や家賃収入、ローン条件などを入力するとさまざまな分析結果が表示されます。無料版の場合、物件の保有期間は5年のみ(有料版は設定可能)ですが運用中に得られるキャッシュフローの推移は20年目まで確認可能です。
中・上級者向けのツールで「LTV(借入金割合)」や「BER(損益分岐入居率)」といった指標も算出できます。初心者には難しいかもしれませんが本格的な分析を行いたい場合や長期のキャッシュフロー推移を確認したい場合におすすめです。
シミュレーションツールを使う
インターネット上で提供されている、不動産投資のシミュレーションツールを使う方法です。不動産投資サイトや不動産会社のホームページでは、必要な項目を入力すると実質利回りやキャッシュフローの収支計算ができるツールを提供しています。
なかには、シミュレーション結果がグラフでわかりやすく表示されるものもあります。初めてシミュレーションをする場合は、インターネット上のツールが利用しやすいでしょう。主なツールは、以下の通りです。
・収益・投資物件 簡易収支計算シミュレーション
物件情報やローンに関する項目を入力すると返済額や年間手取り、各種利回りなどの収支を試算できるツールです。入力項目が少ないので初心者でも使いやすいでしょう。簡易的なシミュレーションですが空室率や諸経費率の入力も可能です。
・CF(キャッシュフロー)シミュレーション
物件価格や表面利回り、築年数などを入力するだけで簡単にキャッシュフローを試算できるツールです。分析結果がグラフで表示されるため、視覚的にキャッシュフローの推移を把握できます。シミュレーションを利用するには、「楽待」の会員登録(無料)が必要です。
・不動産投資シミュレーション
ローンや家賃収入、諸経費に関する情報を入力するとローン返済後のキャッシュフローが算出されるツールです。1年間のキャッシュフローだけでなく累積キャッシュフローも把握できます。固定資産税は、計算に含まれませんがキャッシュフローをざっくりと把握するのに便利です。
・不動産投資シミュレーション(キャッシュフローシミュレーション)
物件情報を入力するとキャッシュフローの推移がグラフで表示されるツールです。自己資金や金利、ローン期間などは初期値が設定されていますが、数字を変更することでより正確な分析が可能です。税金や賃料下落率などを考慮して、詳細な分析を行いたい場合に向いています。
不動産投資シミュレーション(キャッシュフローシミュレーション)
・賃貸用不動産の投資利回り
物件価格と想定賃料、想定入居率を入力するだけで表面利回りや実質利回りを試算できるツールです。管理費や修繕積立金などの諸費用を入力すればより正確な利回りを算出できます。諸費用の金額は、月額ではなく年額となる点に注意しましょう。
アプリを活用する
近年は、多様なスマホアプリがあるため、スマホで物件の利回りや収支分析を行うことも可能です。不動産投資シミュレーションで活用できる主なアプリは、以下3つです。
・不動産投資 利回りシミュレーションアプリ
物件情報やローン情報を入力するだけで自動的に利回りを計算してくれるアプリです。入力した情報を保存し複数の物件を比較することもできます。シミュレーションだけでなく不動産投資に関する最新ニュースを確認できる点もメリットです。
・アパート一棟買いLite
アパート・マンション経営を検討する際に収支分析ができるアプリです。物件情報やローン条件などを入力するとキャッシュフローの推移や融資の返済計画のシミュレーションができます。キャッシュフロー推移は、表とグラフで表示され視覚的にわかりやすい点が魅力です。
・【検証効率UP!】不動産収支計算機
物件の検討段階で不動産投資の収支計算が簡単にできるアプリです。必要項目を入力すると年間手取りや各種利回りを自動的に計算してくれます。計算結果の保存機能があるため、複数の物件を比較して投資判断することも可能です。
不動産会社にシミュレーションを依頼する
自分でシミュレーションをするのが難しい場合は、不動産会社に依頼して作成してもらう方法もあります。物件を紹介してもらう際に、実質利回りやキャッシュフローのシミュレーション作成をお願いしてみましょう。
ただし、提示されたシミュレーション結果に問題がないかを見極めなくてはなりません。不動産会社に依頼する場合も、シミュレーション方法に対する理解は必要です。
利用者の口コミ
不動産投資のシミュレーションツールについて、利用者の口コミを紹介します。
- 購入を検討している物件の投資判断に役立ちました。
- 入力が簡単なので、条件を変更して繰り返し分析を行うときもストレスがありません。
- 最低限の入力をするだけで利回りを自動計算してくれて助かります。良い物件を見つけたときにすぐに試算できて使いやすいです。
- アプリはシンプルで使いやすいです。不動産会社の担当者と話をしながらその場で簡単なシミュレーションができます。
- 所有物件の収支が悪化していたのですが、シミュレーションツールで分析したら理由がはっきりわかりました。
入力が簡単で利回りやキャッシュフローといった投資判断に必要な指標を自動計算してくれるのが魅力のようです。実際に不動産投資を始めてから今後の見通しを把握したりうまくいかない理由を見つけたりするために活用するケースもあります。
不動産投資シミュレーションの具体例
不動産投資シミュレーションのイメージがつかめるように具体例を2つ紹介します。
中古一棟マンションに投資するケース
まずは中古一棟マンションに投資するケースについてシミュレーションをしてみましょう。物件情報とローン条件は以下の通りです。
<物件情報>
物件価格 | 1億円 |
満室時想定年収 | 800万円 |
空室率 | 10% |
諸経費率 | 15% |
<ローン条件>
自己資金 | 1,000万円 |
借入金額 | 9,000万円 |
借入期間 | 30年 |
借入金利 | 2% |
この場合のシミュレーション結果は、以下のようになります。
年間家賃収入 | 800万円 |
空室控除・諸経費 | 200万円 |
ローン返済額(年額) | 399万1,896円 |
年間支出 | 599万1,896円 |
年間手取り | 200万8,105円 |
表面利回り | 8.0% |
実質利回り | 6.0% |
年間家賃収入に空室率や諸経費(固定資産税、賃貸管理費など)を考慮し、ローン返済額を差し引くと、1年間の手取り額は約200万円です。表面利回りは8.0%ですが、実質利回りは6.0%となります。不動産所得に応じた所得税・住民税もかかるため、実際の手取り額は上記より少なくなります。
新築区分マンションに投資するケース
次に新築区分マンションに投資するケースについて確認しましょう。物件情報とローン条件は以下の通りです。
<物件情報>
物件価格 | 2,800万円 |
満室時想定年収 | 140万円 |
空室率 | 10% |
諸経費率 | 15% |
<ローン条件>
自己資金 | 300万円 |
借入金額 | 2,500万円 |
借入期間 | 30年 |
借入金利 | 1.5% |
この場合のシミュレーション結果は、以下のようになります。
年間家賃収入 | 140万円 |
空室控除・諸経費 | 35万円 |
ローン返済額(年額) | 103万5,732円 |
年間支出 | 138万5,372円 |
年間手取り | 1万4,629円 |
表面利回り | 5.0% |
実質利回り | 3.8% |
年間家賃収入に空室率や諸経費を考慮しローン返済額を差し引くと1年間の手取り額は約1万5,000円です。表面利回りは5.0%ですが、実質利回りは3.8%となります。中古一棟マンションのケースと同じく不動産所得に応じた所得税・住民税もかかるため、実際の手取り額は上記より少なくなります。
安定した利益が期待できる賃貸不動産の条件
不動産は、個別性が高いため、物件によってエリアや築年数、間取りなどの条件が異なります。安定した利益が期待できる物件を探すには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。ここでは、物件選びの際に重視したいポイントを紹介します。
空室リスクが低い
不動産投資の収益性は、空室リスクに左右されます。入居者がいないと家賃収入を得られないため、空室期間をいかに短くできるかが重要です。人口が多いエリアの物件であれば退去が発生した際に次の入居者を見つけやすいでしょう。最寄り駅からの距離が近く交通の便が良い物件も人気が高い傾向にあります。利回りなどの数字だけでなく入居希望者の視点から物件を選ぶことが大切です。
将来値上がりが期待できる
不動産投資の収益は、物件を売却したときに確定します。運用中は安定して家賃収入を得られても想定より安い価格で売却することになれば投資期間全体の収益性は下がってしまいかねません。一般的に不動産の資産価値は、築年数の経過とともに下がっていくため、定期的に価格をチェックしながら売却タイミングを見極めることが大切です。
入居希望者から人気が高いエリアや再開発が予定されている地域などでは、築年数が経過しても資産価値が高まるケースもあります。
不動産投資の節税効果のシミュレーション
所得税や住民税の節税を目的に不動産投資を検討するケースもあります。不動産投資は、家賃収入や売却益を得られる投資方法ですがなぜ節税効果が期待できるのでしょうか。ここでは、不動産投資で節税できる理由と具体例について解説します。
不動産投資で節税できる理由
「不動産投資で節税できる」といわれる理由は、不動産所得と他の所得(給与所得、事業所得など)で損益通算ができるからです。損益通算とは、同年度の利益と損失を相殺することを指し、不動産所得が赤字の場合、その赤字を給与所得や事業所得から差し引くことができます。課税所得が減少するため、結果として所得税や住民税の節税につながるのです。
不動産投資の場合、キャッシュフローは黒字でも不動産所得は赤字ということもあります。不動産投資では、修繕積立金や賃貸管理費用、固定資産税などさまざまな支出が必要経費として計上可能です。また建物の取得費用は、法定耐用年数に応じて分割し毎年減価償却費として計上できます。減価償却費は、現金の支出を伴わないため、うまく活用すれば大きな節税効果が期待できるでしょう。
節税効果シミュレーションの具体例
具体例として年収800万円の会社員が不動産所得で100万円の赤字が出たケースについて節税効果のシミュレーションをしてみましょう。
・所得税の節税効果
まずは所得税の節税効果を確認します。給与収入と各種控除額は以下の通りです。
①給与収入 | 800万円 |
②給与所得控除 | 190万円 |
③基礎控除 | 48万円 |
④社会保険料控除 | 120万円(概算) |
課税所得{①-(②+③+④)} | 442万円 |
課税所得は、442万円となるため、所得税率20%で計算すると所得税は以下のようになります。
- 課税所得442万円×20%-控除42万7,500円=45万6,500円
不動産所得の赤字100万円を考慮した場合の課税所得は、342万円(442万円-100万円)となり所得税は以下の通りです。
- 課税所得342万円×20%-控除42万7,500円=25万6,500円
不動産所得の赤字100万円を給与所得と損益通算することで所得税は20万円の節税となりました。所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる仕組みのため、高収入の人ほど節税効果は高くなります。
・住民税の節税効果
続いて住民税の節税効果を確認しましょう。給与収入と各種控除額は以下の通りです。
①給与収入 | 800万円 |
②給与所得控除 | 190万円 |
③基礎控除 | 43万円 |
④社会保険料控除 | 120万円(概算) |
課税所得{①-(②+③+④)} | 447万円 |
課税所得は、447万円となるため、住民税率10%で計算すると住民税は以下のようになります。
- 課税所得447万円×10%=44万7,000円
上記に不動産所得の赤字100万円を考慮した場合の課税所得は、347万円(447万円-100万円)となり住民税を算出すると以下の通りです。
- 課税所得347万円×10%=34万7,000円
不動産所得の赤字100万円を給与所得と損益通算することで住民税も10万円の節税となりました。住民税(所得割)の税率は、一律10%となるため、原則収入額にかかわらず節税効果は変わりません。
シミュレーションして優良物件を探す
不動産投資は物件種類やローンの有無、投資期間などによって期待できる収益が変わってきます。不動産会社から物件を紹介されたときは、実質利回りやキャッシュフローを試算して購入判断をすることが大切です。不動産投資で成功するために、シミュレーションで優良物件を見つけましょう。
不動産投資のシミュレーションに関するよくある質問
Q:不動産投資でシミュレーションを行う際に必要な項目は?
物件の購入金額や基本情報、仲介手数料などの諸費用、年間の家賃収入、物件購入後の維持管理費、借入金額、適用金利、毎月の返済額を確認する必要があります。
Q:なぜ不動産投資のシミュレーションが必要なのか?
実質利回りや手元に残る金額がいくらか、売却時期を判断するためにもシミュレーションが必要だからです。
Q:シミュレーションする際に注意すべきことは?
周辺相場と比較して想定家賃を設定することが大切です。シミュレーションの精度を上げるために空室率や家賃の下落率、不定期に発生する支出なども考慮しましょう。
Q:おすすめのシミュレーションツールは?
初めて使う場合は、インターネット上のシミュレーションツールがおすすめです。入力項目が少ないシンプルなツールを選ぶといいでしょう。スマホで収支分析をしたい場合は、アプリを上手に活用することも方法の一つです。
(提供:YANUSY)
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