本記事は、大久保秀夫氏の著書『勝ち続ける社長の教科書 王道経営8×8×8の法則』(ビジネス社)の中から一部を抜粋・編集しています

会社内にナンバー2がいる

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(画像=Hanasaki/stock.adobe.com)

成功している経営者に共通する条件は、「会社内にナンバー2がいる」ことです。何でもかんでも自分自身で首を突っ込む経営者は失格です。

中小企業、特にスタートアップ期の会社では、「ナンバー2がいない」というケースが多いと思います。理由は簡単です。トップが何でもかんでも首を突っ込んでいるからです。だから人が育たないのです。人は「任せる」ことによって育つのです。

私は、ある時期から「必要以上に首を突っ込むことはやめよう」と決め、実行しました。

以前は子会社もフォーバル本社と同じビルに事務所を置いていましたが、そう決めてからは、子会社は基本的に本社とは別の事務所にするように変えました。

近くにあると、どうしても首を突っ込んでしまうため、それができないように、物理的に遠くへ離したのです。

さらに、この取り組みの一環として、10年ほど前からは総務・人事・経理等の管理部門も本社から別の事務所に移しました。私は本社以外の事務所に出向くことは滅多にありませんので、管理部門に関しては自然と担当役員に任せられるようになりました。

そして、現在はフォーバルの事業に関する大半を、ナンバー2である中島社長に任せています。社長とは毎週定例会議を設け、2時間をかけて会社の情報を確認し、必要なことはアドバイスしていますが、執行責任者会議などはすべて任せて、私は出席しないようにしています。会議に参加していると、どうしても口を出したくなってしまうからです。

また、ナンバー1であるトップがいると、どうしてもナンバー2との序列が生まれます。そうすると、下にいる社員はどうしてもナンバー1である私の意見や指示を優先することになるでしょう。些細なことと思うかもしれませんが、指示系統の乱れを生む恐れがあります。

会社の経営に関するすべてに首を突っ込まないこと。これは創業者であり、オーナーである私にとって、実は大変苦しいことです。けれども、任せた以上は、「そうしなければうまくいかない」ので、我慢しています。

皆さんも「心配だから」と何でもかんでも自分でやってしまったり、首を突っ込んでしまったりしていませんか。そうすると、人は伸びません。そして、人がいないからと、ますます自分でやってしまおうと考えます。

しかし、それではいつまで経っても同じことの繰り返しです。そういうことをしている経営者は、自らの振る舞い方を変えたほうが良いと思います。

補完型のナンバー2と、次を担うナンバー2の違い

ところで「ナンバー2」といっても、実は2つのタイプがあります。

ひとつは経営者が自分の不得手な部分を任せる補完型のナンバー2。もうひとつは経営者が自分の次を担わせる、後継者となるナンバー2です。

会社を存続させていくうえで必要なのは、もちろん次を担ってもらうナンバー2です。しかし、その意味でのナンバー2がいない会社では、まずは補完型でもかまいませんので、自分のダメなところを補うナンバー2をつくってください。

それが次を担ってもらうナンバー2につながることもあるでしょうし、そうでなければ、いずれは本当のナンバー2、すなわち次を担わせるナンバー2をつくることにも取り組んでいかなければなりません。

ナンバー1とナンバー2はどういう関係であるべきか

社内にナンバー2を置く場合、「明確に役割分担をする」のが肝心です。ナンバー1とナンバー2が同じことをすると、ほぼ必ずケンカになるからです。

月並みな経営者の場合、自分の好きなタイプ、結果として自分と似ているタイプをナンバー2に選んでしまい、2人で同じようなことをしてしまいがちです。しかし、これはいちばんダメなパターンです。

スポーツでも「1番はとにかく出塁し、2番はランナーを得点圏に送り、3番は強打で行こう」とか、「同じフィールドのなかでも、オフェンスの役割を担うプレイヤーとディフェンスの役割を担うプレイヤー」といったように、役割を分けることが、勝利のための最低限の戦術です。経営においても同様で、このような役割分担が必要です。

ちなみにフォーバルの場合、私とナンバー2の中島社長は、まったく逆のタイプです。

中島社長は血液型がO型で、どちらかというと机の周りが散らかっていても気にしないタイプですが、私はA型で、几帳面に整理整頓するタイプです。

また、人との接し方も、中島社長は豪放磊落なタイプですが、私は細かいところに気を配るタイプです。

もっとも、性格や表面上のしぐさとは違い、中島社長は数字の中身については、むしろ私以上に細かく見るタイプですから、中島社長が事業をオペレーションするようになってからは、公表している予算数字を外すことが、以前より少なくなくなりました。

このように、ナンバー1とナンバー2の性格がまったく違うほうがいいのです。

その2人が、フォーバルにおいてどのような役割分担をしているのでしょうか。

私は外に向け、明日のフォーバルのファンをつくり、将来の道標をつくっています。一方、今日のフォーバル並びにフォーバルグループのオペレーション全般は、ナンバー2の中島社長に全面的に任せています。このように、フォーバルの場合、ナンバー1とナンバー2の役割分担と補完がしっかりとできているのです。

あなたはナンバー2にどのような役割を期待していますか。その期待と合致しそうな候補者はいますか。明確に答えられない方は、せっかくの機会ですから、理想とするナンバー2の姿について考えてみてください。

そのうえで、まずは自分の役割と相手の役割を明確に決め、自分とは違ったタイプの優れた人物かどうかを見極めてください。これがナンバー2を育てる第一歩です。

ナンバー2は見つけるのではなく育てるもの

理想とするナンバー2の姿は考えてみたものの、「ナンバー2がいない」「そんな人は自分の会社には来てくれない」と思っている人もいるはずです。しかし、ナンバー2は見つけるものではありません。トップである社長が自ら育てなければなりません。これが大事です。

経営者のなかにはナンバー2を自ら育てようとせずに、「あいつもダメ」「こいつもダメ」「ウチの会社は俺がやるしかないんだ」と、堂々と言っている人がいます。

しかし、そういう人は何もわかっていません。そもそも10人前後の会社であれば、誰だってオペレーションできるのです。

実際、「急に社長が死んでしまった」という会社で、残された役員や社員が本気になって仕事に取り組んだら「業績が伸びた」、というケースも珍しくありません。

ですから皆さんも先入観を捨てて、すべてを任せてみたら、社員は今よりもっと真面目に、もっと頑張って本当の力を発揮してくれると思います。

ビジョンを策定することが大切なのと同様に、後継者づくりも社長の大事な仕事のひとつです。人は、「君、頼むよ」と任されることによって自覚を持ち、もっと頑張るようになります。社長がナンバー2を育てようという気持ちになること。これがナンバー2をつくるための二歩めです。そういう姿勢が、ひいては人を育て、会社をもっと大きくすることにもつながります。

勝ち続ける社長の教科書 王道経営8×8×8の法則
大久保秀夫(おおくぼ・ひでお)
1954年、東京都生まれ。國學院大學法学部卒業後、経営方針に納得できず退社。1980年、25歳で新日本工販株式会社(現在の株式会社フォーバル 東京証券取引所 プライム市場)を設立、代表取締役に就任。電電公社(現NTT)が独占していた電話機市場に一石を投じるため、ビジネスフォン販売に初めてリースを導入し、業界初の10年間無料メンテナンスを実施。1988年、創業後8年2カ月という日本最短記録、史上最年少(ともに当時)の若さで店頭登録銘柄として株式を公開。同年、社団法人ニュービジネス協議会から「第1回アントレプレナー大賞」を受賞。その後も、情報通信業界で数々の挑戦を続け、上場会社3社を含むグループ企業33社を抱える企業グループに成長させた。2010年、社長職を退き、代表取締役会長に就任。会長職の傍ら、講演・執筆、国内外を問わずさまざまな社会活動に従事。カンボジアにおける高度人材の育成を支援する「公益財団法人CIESF(シーセフ)」理事長も務める。さらに一般社団法人公益資本主義推進協議会 代表理事、東京商工会議所副会頭・中小企業委員会委員長なども務めている。

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