本記事は、大久保秀夫氏の著書『勝ち続ける社長の教科書 王道経営8×8×8の法則』(ビジネス社)の中から一部を抜粋・編集しています

親日度が高いASEANの国々

ASEAN
(画像=bear/stock.adobe.com)

海外進出を考える場合、その国における日本や日本人に対する印象は大切ですので、少し前の調査になりますが、「アジア10カ国の親日度調査」(アウンコンサルティング、2012年11月発表)を紹介します。

「日本という国が好きですか?」というストレートな質問に対する回答で、韓国・中国は「大好き」が10%前後、「好き」も含めると好意的な回答が半分程度であるのに対し、ASEANでは「大好き」だけで半分程度、「好き」も含めると8~9割が日本に対して好意を持ってくれていることがわかります。

理由は各国それぞれにありますが、政府開発援助・ODAで教育、医療、人口、衛生の社会インフラ、運輸、通信、エネルギーの経済インフラ構築に大きく寄与してきたことも背景にあると見られています。

ASEAN4カ国のトレンド

実際、私の経営するフォーバルでは、すでに10年ほど前からASEAN、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマーの4カ国に進出しています。新興国のため、毎年のように状況は変わりますし、現在は新型コロナウイルスの影響も大きいので国ごとの概況について触れることは避けておきますが、自社で進出し、また多くの企業のASEAN進出のお手伝いをしてきた経験から、大きなトレンドはお伝えしておきたいと思います。

傾向としては、製造業の進出先はインドネシアとベトナムが中心となっています。なかでも中小企業に限定するとベトナムが第一候補になると思います。特に南部はサプライチェーンの構築がしやすく、中小企業でも進出しやすい環境が整ってきています。

一方、カンボジアやミャンマーはインフラやサプライチェーンが整っていないため、進出を見送ったり、現状は様子見といったケースが多い状況です。逆にいえば、これからチャンスが待っている国だともいえます。

たとえばカンボジアでモノをつくり、それを購買力のあるタイやベトナムで売るという方法が考えられます。そういうことが実現すると、進出しやすい、人件費が安い、優遇制度が揃っているというカンボジアの強みを活かすことができる可能性があります。

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フォーバルカンボジアのスタッフ。(画像=『勝ち続ける社長の教科書 王道経営8×8×8の法則』より)

非製造業についてはどこの国もすでにターゲットとなっています。2019年にはミャンマー初のハイパーマーケット業態の大型店舗が出店しました。カンボジアではすでに3店舗めとなるイオンモールの準備が進んでいます。流通の雄であるイオンが出ていくということは、途上国でも消費構造が変わってきているということです。

国ごとの概況についてもっと詳しく知りたいという方は、日本貿易振興機構(JETRO)のホームページをご覧いただければ、いろいろな情報を収集できると思います。もちろん、フォーバルをはじめ、海外進出を支援している民間企業もありますので、そういうところに相談するのも一手です。少しでも「自社の未来にとって大切だ」と感じる方は、ぜひ積極的に検討していただくことをお勧めいたします。

これまでにも触れたように、4カ国だけで4億人強、日本の4倍もの人がいるわけですから、4倍売れる可能性があるということです。そう考えると、「モノづくりだけでなく売りたい」というニーズはあって当然だと思います。実際、現地でも最近は日本の飲食店が増えていますし、日本の食材も流通するようになりました。

成功するポイントは何か?

どの会社にも海外進出できる可能性はあります。しかし、どんな会社でも成功できるわけではありません。では、どのような会社であれば成功する確率が高いのかについて考えてみたいと思います。

まず製造業では、周りの顧客や取引先が主戦場を海外に移しているケースです。「最近、お客さんも取引先も減ってしまった」と言っている会社は、そのお客様や取引先がどうされているのか調べてみることをお勧めします。仕事をやめてしまったのではなく、先んじて海外市場に主戦場を移している可能性があるからです。そのような場合、あなたの会社が海外に出てもビジネスが成り立つ可能性が高いといえます。ぜひ積極的に海外進出を検討していただきたいと思います。非製造業については、設備業にチャンスがあります。

たとえば自動車整備業や板金業、部品業のニーズが増えています。ベトナムやインドネシア、タイでは自動車がものすごい勢いで増えているので、当然のように故障するクルマも増えているからです。また、交通事故件数は日本の比ではありませんから、事故で壊れるクルマもたくさんあります。日本車は人気がありますから、故障や事故で壊れたクルマをきれいに直せる、部品が揃っているといった業者は引く手あまたなのです。

また、住宅やビルに関連するサービスもニーズがあります。ASEANでも中間以上の所得者層が増えてきているので、日本にあるような高級マンションが増えました。そういうところは管理費も高いので、やはり日本のような高いクオリティのサービスが求められるのです。大きなハウスメーカーが海外に出ていくと、周りにいる設備業の会社も一緒に出ていくパターンが増えています。

なお、タイの場合は、日本人だけで8万人以上いるので、そこだけを狙っても十分ビジネスの市場として成り立つと思います。

最も重要なことは、自身の産業クラスターを見て、自社の商売が上位にいるのかどうかということです。上位に位置しているのであれば、クライアントをたくさん獲得できる可能性があります。反対に、日本のなかで売れないものは世界でも同じで、誰も魅力を感じてくれません。日本のなかで、ある程度の評価をもらえていない会社、商品・サービスは、いくら東南アジアといえども通用しません。「日本がダメだから海外へ」という考えは間違いです。まず自社の強みをきちんと理解できていることが大前提となります。

勝ち続ける社長の教科書 王道経営8×8×8の法則
大久保秀夫(おおくぼ・ひでお)
1954年、東京都生まれ。國學院大學法学部卒業後、経営方針に納得できず退社。1980年、25歳で新日本工販株式会社(現在の株式会社フォーバル 東京証券取引所 プライム市場)を設立、代表取締役に就任。電電公社(現NTT)が独占していた電話機市場に一石を投じるため、ビジネスフォン販売に初めてリースを導入し、業界初の10年間無料メンテナンスを実施。1988年、創業後8年2カ月という日本最短記録、史上最年少(ともに当時)の若さで店頭登録銘柄として株式を公開。同年、社団法人ニュービジネス協議会から「第1回アントレプレナー大賞」を受賞。その後も、情報通信業界で数々の挑戦を続け、上場会社3社を含むグループ企業33社を抱える企業グループに成長させた。2010年、社長職を退き、代表取締役会長に就任。会長職の傍ら、講演・執筆、国内外を問わずさまざまな社会活動に従事。カンボジアにおける高度人材の育成を支援する「公益財団法人CIESF(シーセフ)」理事長も務める。さらに一般社団法人公益資本主義推進協議会 代表理事、東京商工会議所副会頭・中小企業委員会委員長なども務めている。

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