育児・介護に関する制度は頻繁に見直されており、2022年にも大きな変更がいくつか加えられる。新たな制度をうまく活用するには、主な改正内容をしっかりと把握しておかなければならない。
本記事では育児・介護休業法改正のポイントを簡単にまとめたので、対象者になる可能性がある方はしっかりと確認していこう。
育児・介護休業法改正で何が変わる ? 変更点のポイント
2022年4月に実施された「育児・介護休業法改正」により、企業や従業員を取り巻く環境は大きく変化する。具体的にどのような点が改正されたのか、以下では特に押さえておきたい5つのポイントを紹介しよう。
変更点1:育児休業を取得しやすい環境が整備された
今回の改正では、事業主に以下のいずれかの措置 (雇用環境整備) を講じることが義務づけられた。
1:育児休業に関する研修の実施
2:育児に関する相談窓口の設置
3:自社の育児休業取得事例の収集と提供
4:育児休業や育児休業取得促進の方針に関する社内周知
また、妊娠や出産を申し出た労働者 (※配偶者も含む) に対して、以下の情報の個別周知・意向確認が義務づけられた点も事業主が覚えておきたいポイントだ。
・育児休業や育児休業給付に関すること
・育児休業の申し出先
・育児休業を取得した場合に、労働者が負担する社会保険料
なお、2022年10月1日からは「産後パパ育休」についても、事業主による雇用環境整備や個別周知、意向確認が必要になる。
変更点2:育児・介護休業取得要件が緩和された (有期雇用労働者)
以前の制度において、有期雇用労働者は以下の条件を満たしていないと育児休業を取得することができなかった。
1:雇用期間が1年以上に及んでいる
2:子が1歳6ヶ月に達するまで契約が満了しない
今回の改正では上記1の条件が撤廃され、育児休業の取得条件が無期雇用労働者と同じになった。また、育児休業給付についても条件が緩和されたため、契約社員や派遣社員についても子育てのしやすい環境になることが予想される。
変更点3:産後パパ育休の創設
2022年10月から「産後パパ育休」と呼ばれる制度が始まる点も、事業主・労働者ともに押さえておきたい情報だ。この制度は現行の育休とは別に利用でき、労働者が休業の2週間前までに申し出をすれば、最大4週間 (※子の出生後8週間以内) の休暇取得が可能になる。
変更点4:育児休業の分割取得が可能に
2022年10月から産後パパ育休が施行されると、育児休業の分割取得が可能になる。取得可能日数を超えていなければ、通常の育児休業・産後パパ育休ともに2回まで分割で利用できるため、各家庭により適した形で育休を取得できる環境になるだろう。
ただし、産後パパ育休の分割取得に関しては、取得時期をあらかじめ申し出る必要があるので注意しておきたい。
変更点5:育児休業取得状況の公表義務化
今回の改正により、従業員数が1,000人を超える企業は育児休業取得状況の公表が義務化された。男性の育児休暇取得率などを年1回公表する必要があるため、対象に含まれる企業はデータを記録・保管しておかなければならない。
妊娠・出産後はどんな支援を受けられる ? 現行制度も含めておさらい
育児休業の対象者は、妊娠・出産後に受けられる経済的な支援についても確認しておきたい。 具体的にどのような制度があるのか、以下では現行制度も含めて紹介していこう。
制度 | 概要や支援の内容 |
---|---|
妊娠検査費の助成 | 各自治体が実施している、妊娠検査費用の一部を助成する制度。 自治体ごとに助成金額・助成回数は異なるが、どの地域でも14回 (一般的な検診回数分) の助成は受けられる。 |
出産育児一時金 | 出産した子ども1人につき、42万円の一時金を受け取れる制度。 直接支払制度を導入していない病院を利用した場合は、健康保険組合への申請が必要になる。 |
出産手当金 | 公務員や会社員の母親を対象に、勤務先の健康保険組合から支給される手当金。1日あたり「各月の標準報酬月額の平均額 (※) ÷30日×2/3」の式で計算した金額が支給される。 (※) 支給開始以前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額が基準 |
育児休業給付金 | 育休取得中の父母を対象に、給与を補てんする目的で支給される給付金。1日あたり「賃金の日額×支給日数の67%」の金額を受け取れるが、支給条件 (育休後の職場復帰など) がいくつか設けられている。 |
児童手当 | 子どもが中学校を卒業するまで、毎月5,000~15,000円の手当を受け取れる制度。毎月の支給額については、子どもの年齢や世帯収入によって異なる。 |
ちなみに、2022年10月から開始される「産後パパ育休」も、育児休業給付金の対象に含まれる。父母がそろって給付金を受け取れる状況になれば、金銭面での不安も軽減されるため、各制度の申請方法や条件はしっかりと確認しておこう。
制度は毎年変わる ! 今後もさらに育児・介護がしやすい環境へ
近年ではワークライフバランスが重視されている影響で、日常生活や労働におけるさまざまな制度が見直されている。育児・介護休業法についても例外ではなく、父母の時間外労働を制限したり、各支援策の対象者を拡大したりするなどの改正が実施されてきた。
長年、国内では少子高齢化が問題視されているため、今後に関しても育児・介護に関する制度は見直される可能性が高い。新たな制度が出てきたときにすぐ対応できるよう、特に利用できる支援策については最新情報をアップデートする癖をつけておこう。
従来からの支援策にも目を向けて、制度をうまく活用しよう
国や自治体の制度をうまく活用すれば、育児・介護の負担を大きく減らすことができる。 ただし、申請や条件を満たすことが必要な制度もあるため、概要はしっかりとチェックしなければならない。
新たな制度だけではなく従来からの支援策にも目を向けながら、利用できるものについては積極的に申請していこう。
(提供:大和ネクスト銀行)
【関連記事 大和ネクスト銀行】
・大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
・個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
・知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
・落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
・富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト