本記事は、伊藤亮太氏の著書『株取引の要点 買いのタイミングはココだ』(技術評論社)の中から一部を抜粋・編集しています。
買う理由が説明できればそれが「買うタイミング」
POINT > まずは直感で投資して経験を積む
▍投資の世界に確実な答えは存在しない
株式投資の勉強会やFP相談でよく聞かれることは「買うタイミング」についてです。「果たしていつ買うのがよいか?」この質問に対して、明確に「A社の株価が1,000円になったら買えばよい」など回答できるでしょうか。答えは「否」。明日のことなど誰もわかりませんし、どこまで下がるのか、どこまで上がるのかなど将来のことなど完璧な予知はできません。
▍まずは投資してみることが重要
それでは、具体的にいつ買えばよいのでしょうか。1つの基準として、その銘柄を買う理由が説明できれば買うタイミングと考えることができます。
ほしいと思ったら買う、安いその銘柄を買う理由が説明できれば買うタイミングと考えることができますと思ったら買う。最初はこうした純粋な理由で大丈夫です。店頭で見かけた新商品が売れると思ったから買う、という現場感覚の判断でも構いません。そうした直感があたることがよくあります。
そもそも論ですが、短期売買なのか、中長期売買なのかでも買うタイミングは異なります。たとえば、短期売買であればチャートの動きを根拠に買うタイミングを見極めます。中長期売買であれば、成長性の側面(ファンダメンタルズ)から検証し、その結果を根拠に購入します。プロ・アマ問わず、「買った理由を説明できるか」という考え方は重要です。最初は直感的な動機だとしても、さまざまな株式を物色、運用経験を積んでいくことで、角度を変えた視点から買うタイミングを見極めていければよいと考えます。
実際に投資せずに、「投資したテイ」で株価の動向を追うことで「経験」を積むことも可能です
基本的な経験を積むことで、応用での分析がより高精度になりやすいでしょう
- レンジ
- 銘柄の一定期間における高値と安値の幅。実際の値で示すこともあれば、予測として示すこともある
- ファンダメンタルズ
- 国や企業の経済状態などを表す経済的な指標。株式投資では企業の業績や国や地域の経済成長率などが用いられる
「値上がりし始めたら買う」が買い方の王道
POINT > 上昇トレンドに乗る「順張り」に慣れる
▍少しでも早くトレンドに乗る
「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言を解説しました。
実は、この格言の考え方を実践できる、株式投資の王道スタイルが存在するのです。
株式投資の王道スタイル、それが「順張り」です。順張りとは、株価のトレンドに乗って売買を行う手法です。株価が上昇トレンドにあるときは買い、株価が下落トレンドにあるときは売る。底値を狙うよりも難易度が下がります。
ポイントはトレンドの初期段階で流れが把握できるかどうかです。株価が上昇する初期段階でその流れを把握したうえで買い、その後株価が大上昇してから売ることができれば、大きなリターンをもたらすことにつながります。あとから上昇トレンドに乗るのも悪くはありませんが、初期段階でトレンドに乗った人に比べると、出遅れた分だけ機会損失が発生します。
要は、上昇トレンドの初期段階で買うことが順張りの鉄則なのです。たとえば、2013年から始まった日本銀行の異次元の金融緩和によって、株式市場が大きく上昇しました。
この政策が発表されたとき、これから株式市況において大上昇相場になると察知した人は大きなトレンドに乗ることができたはずです。政策発表や中央銀行総裁の発言などは大きなトレンドを形成する可能性があります。日々のニュースなどもしっかり確認することが大切です。
日ごろから株価の動向を注視し、トレンドの初期段階で株を売買することが大切です
- トレンド
- 株価の大局的な傾向や方向性のこと。株価が上向きの状態を上昇トレンド、下向きの状態を下降トレンド、株価が横ばい(保ち合い)の状態をレンジと呼ぶ
- 異次元の金融緩和
- 日本銀行が2013年4月に導入を決定した金融緩和政策。年2%の物価上昇率を目標として行っている量的・質的金融緩和のことである
株を買った翌日に値下がりしても問題ない
POINT > 数カ月~十数年間保有し続ける「中長期投資」の視点を持つ
▍短期投資より中長期投資のほうが有利
投資初心者ほど、買った直後に「プラスになっていないか」と、すぐ気にしてしまいがちです。くり返しますが、株価が上がるか下がるかなど、確率は2分の1。そこに経済情勢や企業の業績などが絡み、上昇するか下落するかが決まります。そうした要因は1日や2日で大きく変化することはないため、買ってすぐに株価が下がってもまったく問題ありません。
以前、私が購入した銘柄の株価が半年間ほど下がり続け、購入価格のおよそ20%ほど下落したことがありました。短気な投資家はしびれを切らして売却したことでしょう。しかし、私は四季報の情報から割安と判断し、そのまま継続して保有しました。すると半年後、とくに大きな材料もないのに、突然株価が上昇、ストップ高をくり返しました。おそらく、機関投資家が割安度に目を付けて大量に購入したのでしょう。長期的に保有し続けることができた人は、大幅なリターンを享受できたわけです。
要は、買ったあといつ株価が上がるかなど誰も予測できないのです。もちろん、自信を持って買ったはずがその後下落することも多々あります。そのときは、どれぐらいの期間を目標として運用しようとしていたかを思い出してください。短期売買であれば損切りすることも考えられますが、中長期投資であれば、1日や数日間の下落を気にする必要はありません。
また、株価が下落した理由があれば検証する必要がありますが、とくに大きな理由がない場合、ときには「保有し続ける覚悟」も必要です。
- ストップ高
- 証券取引所では、1日の株価の変動幅を前日の終値を基準価格として一定範囲で制限しており、その上限の価格となること
- 機関投資家
- 保険会社、銀行、年金基金などまとまった資金を株式や債券などで運用を行う大口投資家のこと。一般に機関投資家は中長期投資を行うことが多い