本記事は、伊藤亮太氏の著書『株取引の要点 買いのタイミングはココだ』(技術評論社)の中から一部を抜粋・編集しています。

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これだけは知っておきたい決算資料の基礎知識

POINT > 速報性の高い決算短信で業績を把握する

▍決算を把握するための2つの資料

ファンダメンタルズ分析を行うにあたって、どのような知識を身に付ければよいでしょうか?

少なくとも、個別企業の業績を確認し、将来期待できるかを確認する必要があります。マクロの視点からの情報も必要ですが、初心者が難しいと感じがちな、個別企業の業績を読めるようにしましょう。

よく用いられる資料に「決算短信」と「有価証券報告書」があります。

決算短信とは、証券取引所の規定にもとづき開示される情報です。財務諸表を中心とした内容が記載されており、決算日後45日以内に開示されます。

有価証券報告書とは、金融商品取引法にもとづき開示される情報です。決算短信の内容に加え、経営指標の推移や事業内容、課題、設備の状況といった詳細な情報が記されています。監査や精査を経たうえで、決算日後3カ月以内に開示されます。

▍投資の世界では速報性が重視される

いずれも株主や投資家に対する情報開示であり、投資を判断するうえで重要な企業情報です。では、どのように使い分けるべきでしょうか?

決算短信は速報性が高く、いち早く業績の確認ができるため、決算短信のほうが株価へ影響を与えやすいといえます。

もちろん、有価証券報告書が株価へ与える影響はゼロではありません。決算短信の数字に修正が加えられた場合、有価証券報告書の公表が株価に影響を与えることもありますが、まずは「すぐに開示される決算短信への反応が多い」と考えてください。

株取引の要点 買いのタイミングはココだ
(画像=株取引の要点 買いのタイミングはココだ)

業績予想が修正されて株価が変動した場合、その後の決算短信では株価が大きく変わらないこともあります

▍最低限確認する項目は3つ

少なくとも決算短信で確認するべき点は、「売上高」「営業利益」「当期純利益」です。前年度に比べて業績が上がっているか、また、これまで企業が公表してきた業績予想を上回っているかに注目しましょう。

とくに、これまでの予想よりも明らかに決算がよい場合、株価上昇の可能性が大いにあります。決算発表後すぐに買いを入れることで利益が得られる可能性が高いです。

このほか、来期予想も公表している企業も多いため、さらに企業が成長するのかどうかも確認しましょう。

決算短信の例として、ニトリホールディングス(9843)の2021年2月期決算短信の抜粋を示します。

当時のニトリは投資家からの期待感が高かったため、決算短信の発表前から多く買われていました。このまま決算短信が発表されたらさらに伸びるかと思いきや、結果は伸びがイマイチとなってしまいます。期待感が高い分、決算が想定の範囲内に収まると株価が下がることもあるのです。

また、中長期的な目線からとらえる場合には、有価証券報告書が活用できます。どんな事業を行っているのか、どんな事業のリスクがあるのかなど、企業の細かい情報まで探ることができます。

中長期的な投資では、業界の情勢、経済の情勢も視野に入れておきましょう。「マクロの視点」の指標やテクニカル指標といったほかの指標、過去との比較が必要です。

株取引の要点 買いのタイミングはココだ
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貸借対照表
企業の財務状態を確認することができる資料。一定時点における資産、負債、純資産の状態を表している
損益計算書
1年間、四半期など、会社の一定期間の経営成績を数字で表したもの。売上高や営業利益、当期純利益などから構成される
営業利益
企業が本業で稼いだ利益のこと。売上高から売上原価を差し引き売上総利益を算出し、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引くことで計算される
当期純利益
1事業年度に計上されるすべての収益から、すべての費用・法人税などを差し引いて求められた最終的に残った利益のこと

ただ安いだけではないお買い得な銘柄の特徴

POINT > 業績が堅調で株価は低迷、かつ注目度の低い銘柄は買い

▍安価な銘柄を買っても利益にならない

どうせ買うなら、株価が安いときに買いたい。これは誰しも考えることです。しかし、株価が低い=株価が安くてお買い得とは限りません。今後株価が上昇する見込みがないと、利益が生まれないためです。

本当にお買い得なのは本来の株価水準より安い(または一時的に安くなった)銘柄であり、そうした銘柄を割安株(バリュー株)と呼びます。また、割安株を中心に投資することをバリュー投資と呼びます。

割安さの判断は、主に「過去の株価や業績と比較する」「同業他社と比較する」「さまざまな株価指標を使う」といった方法で検討できます。

この中でもっともかんたんな方法は3つ目です。チャートと業績を見比べて、業績は堅調で株価が低迷している会社を探すだけです。『会社四季報』を利用することでより効率的に探せるでしょう。

該当する銘柄を発見したら、なぜ割安なのかを考えましょう。来期の業績悪化予想が理由で株価が下がっていたら、現在の業績がよくても株価上昇の見込みは薄いでしょう。こうした銘柄は買いの対象になりません。

また、「投資家に注目されていないこと」も大きなポイントです。

業績がよくても注目度が低いため株価が上がらないことがあります。注目度が上がると株価も上がるため、大きな利益を狙えるのです。とくに、名古屋証券取引所など地方証券取引所には割安株が眠っていることがあります。

株取引の要点 買いのタイミングはココだ
(画像=株取引の要点 買いのタイミングはココだ)

株価は低迷する一方で業績がよい銘柄は、あとあと株価が上がりやすいため、割安株と考えられます

割安株(バリュー株)
企業の価値が市場で十分に評価されておらず、企業価値に比べて低い価格で売買されている状態の株式のこと
会社四季報
日本の上場企業の業績や財務情報、株主情報などをまとめた書籍。年4回発売される。投資家にとって必須の書籍である
=株取引の要点 買いのタイミングはココだ
伊藤 亮太
1982年生まれ。岐阜県大垣市出身。2006年に慶應義塾大学大学院商学研究科経営学・会計学専攻を修了。在学中にCFPを取得する。その後、証券会社にて営業、経営企画、社長秘書、投資銀行業務に携わる。2007年11月に「スキラージャパン株式会社」を設立。2019年には金や株式などさまざまな資産運用を普及させる一般社団法人資産運用総合研究所を設立。現在、個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランの提案・策定・サポート等を行う傍ら、資産運用に関連するセミナー講師や講演を多数行う。著書に『図解 金融入門 基本と常識』(西東社)、監修に『ゼロからはじめる! お金のしくみ見るだけノート』(宝島社)など。

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