この記事は、2022年6月13日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウイークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。


目次

  1. 経済再開に伴い、景況感は上向き
  2. 名目賃金は底堅い動き
  3. 急速な円安進行を受け、日銀の認識に注目

経済再開に伴い、景況感は上向き

日本経済
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

2022年5月景気ウォッチャー調査は、現状判断DIが54.0(前月差:+3.6)と上昇しました(図1)。構成項目の家計動向関連、企業動向関連、雇用関連は軒並み改善し、特に飲食やサービス、雇用関連は高水準です。今年は3年ぶりに行動規制のない大型連休となり、その後も人流回復が進んだ点が好感されました。

経済再開に伴い求人件数もサービス業を中心に回復している模様です。また、2~3ヵ月先の景況感を表す先行き判断DIは52.5(同+2.2)と上昇しました。

現況判断DIと同様に全項目が改善し、低迷していた製造業も2021年12月ぶりに中立水準の50を超えました。景気判断理由のコメントではインバウンド再開や夏場のレジャー需要を期待する声が散見されました。

一方、小売価格の値上げや原材料高騰、部品不足など家計や企業を取り巻く不透明感は拭えず、当面は景気回復が続くとみますが懸念材料にも注意が必要です。

景況感は改善傾向が続く
(画像=三菱UFJ国際投信)

名目賃金は底堅い動き

2022年4月現金給与総額は前年比+1.7%(2022年3月:+2.0%)と底堅さが確認されました(図2)。内訳は所定内給与が同+1.1%(同+1.0%)、所定外給与が同+5.9%(同+4.2%)、特別給与が同+7.2%(同+13.9%)となりました。

一般労働者の所定内給与は堅調で、鉱業採石業等や建設業、飲食サービス業などの上昇が目立ちます。所定外給与も経済再開に伴う残業時間増加で回復傾向です。

他方、消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合)の影響を考慮した実質賃金は同▲1.2%(同+0.6%)とマイナスに転じ、物価の伸びが賃金を上回っている状況です。先行きは労働時間の回復や人出不足等を背景に賃金は緩やかに増加するとみますが、実質賃金は食料品や日用品の値上げの影響で伸び悩む可能性があると考えます。

所定内給与が賃金全体を押し上げ
(画像=三菱UFJ国際投信)

急速な円安進行を受け、日銀の認識に注目

先週の日経平均株価は前週比0.2%上昇しました。新型コロナ対応の水際対策緩和やドル高円安に伴う輸出企業の業績改善期待、2022年6月7日に閣議決定された政府の骨太の方針等が材料視され、株高が続きました。

週末はECB(欧州中央銀行)の利上げ方針公表で米株市場が急落し、日経平均も下落しました。2022年6月16日~17日には日銀の金融政策決定会合が控え、金融政策の据え置きが予想されます。

海外中銀との政策スタンスの違いや、貿易赤字等を背景にドル高円安が加速しており(図3)、2022年6月10日に政府と日銀は臨時会合を開催し「最近の為替市場では急速な円安進行が見られ憂慮している」と表明しました。こうした中、為替市場の認識など日銀総裁会見に注目です。

ドル円レートは134円/$台まで上昇
(画像=三菱UFJ国際投信)
三菱UFJ国際投信株式会社
戦略運用部 経済調査室 エコノミスト
田村 史弥