この記事は2022年6月17日に三菱総合研究所で公開された「家計調査報告(2022年4月) ―― 消費は持ち直し傾向が継続も、物価高により勢いは弱い」を一部編集し、転載したものです。
今回の結果
2022年4月の実質消費支出(二人以上の世帯)は、季調済前月比+1.0%と2カ月連続で増加した(図表1)。新型コロナの弱毒化や高齢者の3回目のワクチン接種普及を背景に経済活動の再開が進み、外出関連を中心に消費が押し上げられた。
2022年4月の名目消費支出を品目別に見ると、一般外食(2018年同月比▲17.7%)、交通(同▲22.7%)、パック旅行費(同▲38.5%)など外出関連の品目で、落ち込み幅が縮小した(図表2)。
また、電気代(同+24.5%)、ガス代(同+14.5%)は増加幅が拡大した。国際市場での原油や天然ガスの価格高騰を背景に、電気代やガス代の価格が上昇。電気代・ガス代への支出は2018年同月に比べて約3,600円増えている。
基調判断と今後の流れ
消費は、経済活動の再開などにより、持ち直し傾向にある。もっとも、過去に新型コロナの感染が落ち着いていた時期に比べて、持ち直しの勢いは弱い。 2022年4月の実質消費支出は 2020年秋頃や2021年春頃よりも低い水準にある。
背景には物価高による実質所得の減少がある。2022年4月の消費者物価上昇率はエネルギー高や円安を主因に前年比+2.5%と高い伸びになっており、消費を抑制しているとみられる。
また、物価見通しの不確実性の高まりも消費の慎重化要因となっている可能性がある。エコノミストの物価見通しの分散は、2020年度や2021年度に比べて低下しているものの、2022年度も過去に比べれば大きい。物価の上振れ・下振れリスクは残る(図表3)。
先行きの消費は、増加基調を維持すると予想する。物価高は消費の抑制要因になるものの、経済活動の再開が外出関連を中心に消費の押上げ要因となろう。今後はコロナ危機下で積み上がった過剰貯蓄の一部が消費に回ることも期待される。総じてみれば、消費は持ち直しが継続するだろう(図表4)。
田中 康就(たなか やすなり) 2013年、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。同年10月より現職。米国経済や欧州経済の担当を経て、現在は主に日本経済を担当。