この記事は2022年4月26日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「食料・エネルギー価格上昇で家計負担は大幅増」を一部編集し、転載したものです。


食料・エネルギー価格上昇で家計負担は大幅増
(画像=PIXTA)

商品市況の高騰を受けて、ガソリンや電気代、食料品等のさらなる価格上昇が見込まれる。こうした日用品の価格が上昇することで、家計の負担がどの程度増加するのかは、消費者にとって大きな関心事となっている。

先行きの物価の推移は、ウクライナ情勢を巡る動向(西側先進国による対ロシアの経済制裁がどこまで強化されるか、いつまで実施されるかなど)によって変わってくる。本稿では、経済制裁の強化・長期化で、ロシアからの資源輸出が止まるような状況を仮定する。

具体的には、原油などの商品価格が足元の水準から50%程度上昇した後、横ばい圏で推移すると想定し、食料・エネルギー価格の上昇によって、2022年の家計の負担額が年収階層別にどれだけ増加するか試算してみよう。

総務省「家計調査」における2021年の年間収入階級別の名目支出金額をベースに、2022年に予想される食料・エネルギー価格上昇に伴う支出増を「2022年の負担増」と見なして算出すると、年収300万円未満世帯では約5.9万円、年収1,000万円以上世帯では約9.2万円増加する見込みとなった(図表)。

食料・エネルギー価格上昇で家計負担は大幅増
(画像=きんざいOnline)

年収が多いほど消費水準も高いため、金額ベースで見た家計負担は高所得世帯の方が大きい。しかし、年収に対する負担率(食料・エネルギーの負担額 ÷ 年間収入)の増分を比較すると、年収1,000万円以上世帯では0.7ポイントの増加にとどまる一方、年収300万円未満世帯では2.5ポイントの増加となり、低所得世帯ほど相対的に負担が重くなっていることが分かる。

これは、いわゆる消費税の逆進性(低所得世帯ほど税負担率が大きくなること)とよく似た構図である。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際に、低所得世帯の収入対比で見た税負担率が2.4ポイント高まったと試算されることを踏まえると、単純比較ではあるが、今回の試算に基づく物価上昇で、消費税率3ポイント引き上げに相当する程度の負担増が低所得者に発生することになる。

生活必需品は消費量を抑えることが難しく、その分、低所得者世帯の生計を圧迫する可能性が高い。政府には、物価上昇に対して低所得世帯の負担を軽減する対策(低所得世帯に対する給付など)が求められるだろう。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 上席主任エコノミスト/酒井 才介
週刊金融財政事情 2022年4月26日号