本記事は、桑原晃弥氏の著書『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「金はたくさん持つな、仕事は愉快にやれ」──「富と幸せを生む知恵」
渋沢栄一(日本の資本主義の父)
渋沢栄一は「日本の資本主義の父」と呼ばれ、500を超える企業の設立や経営に関わっていますが、生涯「渋沢財閥」をつくろうとはしませんでした。もちろん世間からみればかなりのお金持ちと言えますが、赤字企業を救うために私財を投じることもあり、三井や三菱のような存在にはなっていません。理由はこうです。
「私の事業に対する観念は、自分の利益は二の次で、まず国家社会の利益を考えてやっていくことだ。だから金は貯まらなかったが、普通の実業家に比べたら国家社会のためになった点が多かったろうと信じている」
渋沢によると、もし利殖一方、儲けること一途に費やしたとすれば、金持ちにはなったかしれませんが、そんな無意義なことに人生を費やすよりも世のため、人のためと仕事に励む方がはるかに「愉快に感じ、幸福に思える」というのです。
反対に蓄財第一に励んだ場合、たとえ富豪になれたとしても本当の愉快と幸福は手にできなかったのではないかとも渋沢は振り返っています。
渋沢によると、たとえば明治、大正期のお金持ちの中には三井や三菱のようになりたいと願う人もいましたが、三井や三菱でさえ、アメリカの大富豪であるカーネギーやロックフェラーと比べれば、「日本のお金持ち」にすぎません。それを忘れて「もっと」と願ったところで世界中の富を独占できるわけもなく、「不平不満は胸中を去る時なく、一生涯苦のみに終わる」というのが渋沢の考え方でした。
世の中に尽くしたいという欲望はどれほど大きくてもかまいませんが、お金に関してはほどほどにして、お金は適度に持ち、仕事は愉快にやることこそが幸福につながるというのが渋沢の考え方でした。
ココがポイント お金だけを追うとキリがない。お金は適度に持ち、それよりも仕事を愉快にやろう。
「どれほど金を持っているか、去年どれほど稼いだかということを尺度にして人生を歩んでいくなら、遅かれ早かれ厄介な問題に巻き込まれるでしょう」──「スノーボール」下
ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハザウェイCEО。世界一の投資家)
ウォーレン・バフェットも相棒のチャーリー・マンガーも若い頃から「お金を稼ぐ」ことに関してはとても貪欲でした。その結果、2人とも巨大な資産を手にするようになったわけですが、だからといって2人はそのお金を使って贅沢をするわけでもなければ、自分が大金を持っていることを誇るわけでもありませんでした。
2人にとってお金を稼ぐことは「自立」への道であり、自分が大好きなことをやるためにお金を稼ぐことが必要でした。お金はないよりはある方がいいのですが、かといって、お金を稼ぐことを唯一の目的としてしまうと、人生で大きな間違いを犯すことになります。
バフェットは1991年、国債の不正入札により危機に陥ったソロモン・ブラザーズを再建するために年俸1ドルで暫定会長に就任、見事な手腕で同社を立て直しますが、その際、お金を稼ぐことを唯一の目的とする危うさを痛感しています。
ソロモン・ブラザーズで国債の不正入札を行ったポール・モウザーが不正に手を染めたきっかけは、元の同僚が自分の報酬(475万ドル)の何倍もの報酬(2,300万ドル)を得ていると知ったことでした。もちろんそれだけが理由とは限りませんが、こうした逆上の背景には嫉妬があるというのがバフェットの見方です。こう話しています。
「真の原因は欲望ではなく嫉妬です。200万ドルをもらえたら、みんな満足します。しかしそれは、210万ドルをもらっている者がいることを知るまでの話です。どれほど金を持っているか、去年どれほど稼いだかということを尺度にして人生を歩んでいくなら、遅かれ早かれ厄介な問題に巻き込まれるでしょう」
莫大な資産を手にしながら、世界中の誰からも愛されず尊敬もされない人生は大失敗だというのがバフェットの考え方でした。
ココがポイント お金を成功の尺度にすると、必ず厄介な問題に巻き込まれると知ろう。
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