本記事は、タザキ氏の著書『お金の名著200冊を読破してわかった! 投資の正解』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
一般人でも億万長者になれる
日本でミリオネアになるのは難しくない
日本は世界でも珍しいほど、長い間平均給与が伸びていません。経済成長自体が鈍化しており、企業の貯金といえる内部留保率も高いのです。今後も大幅な給料アップは期待できそうにありません。「これでは資産形成なんてできない」と思うかもしれませんが、実は持っている人は持っています。野村総合研究所のデータによると、日本の富裕層(純資産1億円以上)は約124万世帯。これは「純金融資産」で、不動産は入っていません。
次に世界との比較を見てみましょう。クレディ・スイスが公表している、世界の「個人資産」を調べたレポートがあります。ここでの「個人資産」は、金融資産と不動産の合計から、借金を差し引いた額です。こちらによると、日本のミリオネア(調査時点の為替レートで資産100万ドル=約1億1,000万円)は、2021年時点で約366万人もいるということでした。
野村総合研究所のデータでは準富裕層(金融資産だけで5,000万円以上1億円未満)が約341万世帯もあったので、土地や持ち家などの不動産資産も含めたら100万ドルを超えていてもおかしくありません。
この366万人という数字は、世界でも第3位の数字です。1位はアメリカ(約2,195万人)、2位は中国(約528万人)です。いまだに日本は、世界の中でも「お金持ちの人が多い国」といえます。
日本でお金持ち(仮にミリオネア)になることは、そんなに難しいことなのでしょうか。私は、「ある程度、時間をかければ」日本人でミリオネアになるのは難しいことではないと思っています。
なにせ日本には約366万人もいるのです。持ち家も含めての数字ですが、たとえ持ち家を含めなくても、準富裕層以上は約474万世帯(超富裕層9万世帯+富裕層124万世帯+準富裕層341万世帯)もいるのです。日本の世帯数は約4,800万世帯ですので、およそ10世帯に1世帯はミリオネアに近いか、それ以上と考えられます。
資産10億円と言われると、起業して大成功でもしないかぎり難しいでしょう。しかし、資産1億円レベルなら、サラリーマンや普通のフリーランスなどの小規模事業主でも、十分可能です。一流企業で出世しなくても、カリスマ起業家にならなくても、何かに秀でた芸能人にならなくても、ミリオネアは「庶民」でも十分狙えるのです。
お金持ちは、豪華な暮らしをしていない
お金持ちになるヒントは、アメリカの富裕層を研究するトマス・J・スタンリー氏とウィリアム・D・ダンコ氏による共著、『となりの億万長者』にあると思っています。
普通の身なりで、普通の仕事をして、普通の場所に住んでいる、一見となり近所にいそうなお父さんが、実は「億万長者」なんてことが意外にあります。資産を見せびらかしたり、ブランド品、ぜいたく品を周囲に見せつけたりすることはありません。彼らは、自分の成功を自慢するメリットよりも、デメリットのほうが大きいことを理解しています。それに、わざわざ人に誇示しなくても、精神的に充実しているのでしょう。
アメリカで権威ある「エミー賞」を受賞した全米の人気テレビ番組『Biz Kid$』(子ども向けの経済教育番組。2008年に放送開始後、全世界で1,500万人以上が視聴。全米16州では金融教育番組として推奨)をもとにした『13歳からの億万長者入門』という本があります(子ども向けの経済教育番組が人気というだけで、すごいですよね!)。この本の一部を引用します。
お金を見せびらかしたり、高級車に乗ったり、ブランド靴を履いたり、ぜいたく品を周囲に見せつけたり、(中略)そんなことをしても、君は愚かに見えるだけだ。盗人を呼び込むことにもなりかねない。お金や持ち物を盗まれた億万長者はたくさんいる。どうして、わざわざ自分から危険を招くようなことをする? 本当のお金持ちなら、目立たないように気をつけて、静かに素晴らしい人生を送る。
このように書いています。億万長者1,371人を調査し、『となりの億万長者』の続編でもある『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』に登場する平凡な億万長者も、決して派手な生活を好んでいません。彼らの休日は、一般人と変わらない至って普通のスタイルです。友人や家族と交流したり、投資の勉強をしたりと、生産的な活動をしています。本当に心の満足を得られる余暇活動は、お金がかからないものなのかもしれません。
『となりの億万長者』で「無視すべき神話」として言われているのが、「収入=富」という思い込みです。富の大きさと、収入の大きさは必ずしも一致しません。収入は、使ってしまえばなくなります。大事なのは、「収入︲支出」の差なのです。
だからこそ、日本の「普通のサラリーマン」でも資産1億円は十分狙えます。彼らは特別に投資の能力が高いわけではありません。ただし、シンプルな法則を守っています。それは、「収入>支出」を保ち、標準的な投資へお金を回し続けているということです。
「標準的な投資」とは、退職金口座(日本で言えば、年金やiDeCo)や、上場株式などの有価証券、居住用不動産(アメリカでは日本より資産維持しやすい)などです。
その反対に「エキゾチックな投資」にはほとんど投資していません。エキゾチックな投資とは、美術品、土地使用権、無形資産、ヘッジファンド、プライベートエクイティなどが該当します。ちなみに総資産が2,000万ドルを超えると、このようなエキゾチックな投資の比率は高まります。
堅実な投資は、短期間に大きく増えることはありませんが、誰でも一定以上の成績を残せます。堅実な手法を成功させるために必要なのは、一定量の元本と継続です。となりの億万長者たちは、「収入>支出」というシンプルな不等式を継続しているのです。
世の中の多くの人は稼いでは使い、使っては稼ぐ。それを繰り返しています。
イギリスの歴史学者・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏の著書『パーキンソンの法則:進歩の追求』で提唱された第二法則は、「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」というものです。収入が増えても、人間は気が緩み、お金を際限なく使ってしまう生き物なのです。投資元本を確保できるのは単純に収入が多い人ではありません。自己の心理をコントロールし、冷静に予算管理をできる人です。
また、『となりの億万長者』の日本版として書かれた『となりの億り人』の著者で、証券会社で3万人の個人投資家を見てきた大江英樹氏によれば、日本でも「一見普通に見える人が実は億万長者」ということはよくあるようです。
お金持ちの8割以上は、自力で成功した勉強家
となりの億万長者たちは大変な勉強家です。と言っても、学生時代の成績は特に良かったわけでもありません。むしろ、教師などから「平均以下の能力」と決め付けられたことで、挑戦することを学んだと答えています。大人になってからも勉強を続けており、資産運用に関する研究や計画づくりに、そうでない人よりも多くの時間をかけています。
彼らの70%以上は、自分は「投資について、たいていの人よりも詳しい」と答えており、投資知識に自信を持っています。アドバイザーからサービスを受けている人も多いのですが、「投資判断を下すために、投資アドバイザーを非常に頼りにしている」人は33%しかいません。半数以上は、「自分の投資の成功に、プロのアドバイスよりも自分の研究が役に立っている」と答えています。
つまり、多くの億万長者が、プロにアドバイスを求めることはありますが、それよりも「自分が独学で研究したこと」のほうが蓄財の上で役に立つと認識しているのです。独学でアクセスできる情報でも、必要十分な知識を得ることは可能です。アドバイザーは、保険会社などから何らかのお金をもらっている場合があるので、その点にも気をつけてください。
そんな勉強家の彼らは、親から莫大な資金を受け継いでいるわけではありません。富裕層に属する80%以上は自力で成功したお金持ちです。「親からの多額の経済援助や財産贈与なくして、お金持ちにはなれない」というのは妄想です。
世の中には親が富裕層で、莫大な相続を得てお金持ちになる人がいます。いわゆる「親リッチ」の富裕層です。しかし私は、親からは財産よりももっと大事なものを相続されたほうが良いと思っています。それは「妥当な金銭感覚」です。となりの億万長者たちは、親から「堅実なお金の使い方」を学んでいます。お金持ちの家に生まれる子どもの中には、子ども時代に親から学んだゆるゆるな金銭感覚を引き継ぎ、その生活レベルを下げられずに苦しむ人もいます。
人間は弱い生き物で、高い生活水準を下げるのは難しいのです。一度得てしまうと、その喜びよりも、それを失う悲しみのほうが大きいので、手放せません。同じ生活水準でも、満足できる人とできない人がいます。そういう意味では、私は普通の家庭に生まれて「普通の金銭感覚」で育ったことは、幸運だったのかもしれません。一般家庭育ちの私にとっては想像でしかありませんが、高い生活水準で子ども時代を過ごすのは、ある意味で「ハイリスク」な可能性もあるのです。
最後に、一般的な億万長者の特徴をまとめます。
まず、親は金持ちではないので、相続する財産も特に大きくはありません。しかし、「一般的な金銭感覚」を受け継いでいます。学生時代、特に成績がよかったわけではありません。しかし、悔しさをバネにする粘り強さを持っています。社会に出てからの収入も、必ずしも多いわけではありません。しかし、身の丈に合った支出で生活し、投資元本に回すお金を捻出しています。投資アドバイザーに相談することもありますが、アドバイザーよりも自分の熱心な独学が資産形成に役立ったと考えています。
だんだん、お金持ちになれる「普通の人」の人物像が見えてきたのではないでしょうか。
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