アベノミクスにより金融市場が盛り上がっています。最近証券会社を利用し始めた方、しばらく使ってなかったが再度使い始めた方なども増えているようです。そこで、販売側の視点を知っておいて頂いて損ないと思いますので、本日は私が経験して、感じてきた国内系証券会社の営業の裏側や問題点などをお伝えしたいと思います。

1996年から2001年に行われた金融改革、通称「金融ビッグバン」において「貯蓄から投資へ」という大号令がかけられました。その中で証券や銀行などの金融機関の垣根を分ける規制が緩和され、銀行も預金だけではなくリスク商品の販売を行えるようになります。

しかし、銀行の金融商品販売は、今までリスク商品を扱ったことのない銀行員が営業を行うため、形式的なものになりがちでした。買付までに長時間に及ぶこともあり、クレームになることもあったようです。
そのため「餅は餅屋」の言葉通り、リスク商品を用いての資産運用は証券会社の利用がいまだに主流となっています。

では、その証券会社の営業現場の裏側は、一体どのような世界なのでしょうか。

参考: お金の相談、どんな専門家が頼りになるか?〜日米金融サービスの違いに学ぶ〜


◉証券会社セールスの罠①〜転勤制度と引き継ぎの問題〜


顧客側が証券会社を頼ろうとする場合、資産を増やし(あるいは守り)資産運用を行いたいと考えてのことだと思います。
しかし、証券会社は売買手数料ビジネスのため、現場の営業マンは「顧客の現預金をどう金融商品に向けてもらうか?」、金融商品を買ってもらった後にも、「どう売買を繰り返してもらうか?」にインセンティブが向きがちです。(米国では資産課金型のモデルへ徐々にシフトが進んでいます)

そのような事態を回避するためには、顧客側が自分の投資スタンスを明確に定め、担当者に念を押して伝えることが重要です。
しかし、それでも証券会社の担当者は2〜4年単位で異動になるため、注意が必要です。新しい担当者は、異動して直ぐに結果を求められるため、前任者の顧客へ資産の乗り換えを勧めることも多いためです。この金融業界の転勤制度は海外に見ても特殊な環境です。担当者と顧客との間の癒着などを防止するための手段と言われてはいますが、顧客からすると、3~5年ほど付き合い人間関係も深まり「せっかく親しくなって、何でも相談できるようになったのに。。。」ということも少なくありません。担当が変われば、人間関係も一からですし、顧客の投資方針やスタンスなどを担当者が理解するまでに当然時間もかかります。

これが、「日系の金融機関は本当の大物とビジネスをできていない」と言われる原因の一つであると考えられます。なぜなら、世界的に見ても同様ですが、真の富裕層・大物というのは、担当者と長い付き合いを求めています。海外のプライベートバンカーの場合、世代を超えてその顧客を担当していくということは普通です。しかし、日本の転勤制度はこの障害となってしまいます。少なくとも外資系の自分の意志(又はリストラ)以外ではポジションが変わることはありませんので、まだ大物にとって理想的な金融アドバイザーであると言えます。

また、この転勤制度が、時に「無茶な売買」への誘惑ともなります。つまり、目の前の顧客を10年、20年と担当するのであれば、顧客に無茶な売買(リスク許容度に対して、大きなリスクを取らせ過ぎる、回転率を高め過ぎる)をする可能性は低いです。なぜなら、失敗した場合に顧客の心は当然離れていきます。しかし、仮に3~5年で転勤することが分かっていれば、どうでしょうか?中には、その誘惑に駆られ、目の前の収益に走ってしまう営業マンもいるのが現状です。

参考: 保険セールスの罠〜営業マンの「お勧め商品」は信頼できるのか?〜