この記事は2022年8月30日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「遠藤照明 【6932・プライム】商業施設用照明で国内トップクラス調光調色でオフィス市場に本格参入」を一部編集し、転載したものです。


遠藤照明は、商業施設用の照明器具で国内トップクラスの実績を誇る照明専業メーカーだ。開発技術力に強みを持つ同社は、2009年にLEDモジュールを開発したことで業績を伸ばし、注目を集めた。近年はより高機能・高付加価値なLED照明や、次世代ソリューションの開発に注力する。中期経営計画ではオフィス市場にも本格参入し、照明の新たな市場を開拓していく。

▼遠藤 邦彦社長

株主手帳
(画像=株主手帳)

売上8割が照明器具関連
プロ向け商材中心に展開

同社の2022年3月期の業績は、連結売上高406億4,400万円、営業利益38億2,700万円。売上の約8割を「照明器具関連事業」が占め、その他に「環境関連事業」と「インテリア家具事業」を展開する。

生活のあらゆる場面で必要不可欠な照明器具。照明業界の長い歴史のなか、同社の創業は1967年と国内の照明メーカーの中では最後発だ。

照明器具を扱う会社は大きく2つに分けられる。同社のような照明専業メーカーと、パナソニックや東芝などの大手電機総合メーカーだ。専業メーカーは同社の他にも、コイズミ照明、大光電機、オーデリックなどあるが、他社が住宅向けの商材も多く取り扱う一方、遠藤照明は主に商業施設向けを中心に展開してきた。導入先はショッピングセンター、百貨店、美術館、ホテル、教育・スポーツ施設など多岐に渡る。

「照明というと、一般消費者の方には大手総合電機メーカーの製品が広く知られていますが、我々が販売する照明器具は電気工事が入るプロの建築設計の方が扱う商材です」(遠藤邦彦社長)

技術開発力に強み
LEDで業績伸ばす

同社は1969年に船舶用照明器具の製造をスタートした後、1972年に店舗用照明に進出した。1960~1970年代の高度経済成長期の建設ラッシュの中、白熱灯を中心とした自社ブランドを数多く展開し事業を拡大した。その技術開発力を強みに、2009年にはLEDモジュールを開発し、LED照明器具「LEDZ」の商品化に成功する。

照明器具の大きな変革期となったのが約10年前。東日本大震災をきっかけに、高効率のLED照明の導入が急速に進んだ。それに伴い同社は業績を大きく伸ばし、2016年3月期には過去最高売上高440億円を記録した。

LEDの市場は拡大し、現在メーカーが出荷する照明のLED化率はほぼ100%を達成している。需要は一巡しているが、既存のストック照明のLED化は未だ約5割強に留まる。

政府は2030年度までに住宅、オフィス、工場などのストック照明のLED化100%を目標に掲げている。また新型コロナの影響でテレワークが進み、オフィスの改装や移転が増えオフィス市場が活発になっていることから、今後も堅調な需要が見込まれる。

2025年度売上高490億円
営業利益率10%超目標

そうした状況の中、同社は2023年3月期を初年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。2025年3月期の連結売上高490億円、連結営業利益率10%超が目標だ。

達成のために、照明器具関連事業では地域別に次のような売上目標を設定している。まずアジアは高級建築市場に注力し、現在の18億円から28億円へ。欧州はイギリス市場のシェア拡大とイギリス国外での第2の柱の構築により、138億円から160億円へ。そして最も売上規模の大きい国内は、次世代ソリューション照明を軸に展開し162億円から202億円へ、それぞれ拡大を図る。

具体的な取り組みには、既存市場深耕と新規市場への展開の2つの戦略がある。既存市場深耕で最も注力するのが、次世代調光調色シリーズ「Synca(シンカ)」の販売強化だ。同社は10年程前に無線の照明制御システムを独自に開発。同製品はそのシステムを搭載した照明器具で、屋内にいながら自然光の中にいるような環境を再現でき、色味の調整、カラー演出などの機能も備えている。

「Syncaは省エネかつ最適な環境づくりができ、体感後のリピート率が非常に高い。調光調色の新たな市場はまだまだ少ないので、付加価値のある市場を開拓していきたいです」(同氏)

活発なオフィス市場
シェア2%を拡大へ

新規市場への展開では、オフィス市場に本格参入する。国内のオフィス向けの売上高を、現在の約20億円から30億円にすることが当面の目標だ。オフィスの市場規模は1,000億円以上あると言われている中、同社のシェアは2%ほどのため、今後シェア拡大の余地は大いにある。

「これまでのオフィス照明はシステム天井でとにかく安い器具が並んでいればいいという感覚でしたが、今は生産性価値を生む場へとデザインも変化しています。特に東京は非常に活況です」(同氏)

2021年12月には四ツ谷にある東京事務所を全面改装し、体験型オフィス「Synca U/X Lab(シンカ ユー エックス ラボ)」としてグランドオープンした。内装を7つのゾーンに分け、生産性や快適性を高めるための照明空間を提案している。

「新市場を開拓し来期、再来期に繋がるような展開ができれば、国内照明も利益が出せるでしょう。コロナで減配はしましたが、元々安定配当という考えですからしっかり還元していきたい」(同氏)

さらに住宅などパーソナルな空間に向けた製品展開や、DXソリューションの実験導入も進めている。

▼体験型オフィス「Synca U/X Lab」テラスゾーン

株主手帳
(画像=株主手帳)

2022年3月期 連結業績

売上高406億4,400万円前期比 14.8%増
営業利益38億2,700万円同 100.6%増
経常利益42億4,900万円同 118.0%増
当期純利益33億3,000万円同 160.7%増

2023年3月期 連結業績予想

売上高430億円前期比 5.8%増
営業利益25億円同 34.7%減
経常利益27億円同 36.5%減
当期純利益19億円同 42.9%減

*株主手帳9月号発売日時点

遠藤 邦彦社長
Profile◉遠藤 邦彦(えんどう・くにひこ)社長
1974年4月生まれ。1997年富士銀行入行。2001年遠藤照明入社。2006年経営戦略室長。2007年常務取締役。2010年代表取締役専務取締役。2014年代表取締役社長(現任)。2018年ENDO Lighting(THAILAND)Public Co.,Ltd.代表取締役会長(現任)。