2022年6月以降に襲った猛暑は電力のひっ迫を呼び、電力不足が大きな社会問題になりました。そこで国民に呼びかけられたのが節電です。しかし、節電には効果的な方法があり、間違った節電の仕方をすると逆にマイナスになる場合があります。

そこで本記事では、社会に貢献して電気代も安くなる、効果的な節電方法を紹介します。

電力はなぜひっ迫しているのか

社会貢献して電気代も安くなる!効果的な節電方法とは?
(画像=fotogestoeber/stock.adobe.com)

2022年の電力ひっ迫はなぜ起こったのでしょうか。理由の1つは、再生可能エネルギーの推進によって火力発電から撤退する事業者が世界的に増えていることです。政府は再生可能エネルギーに補助金を付けて普及を進めていますが、採算が合わない火力発電所は廃止が相次ぐ状況となっています。

これに追い打ちをかけたのが、ロシアによるウクライナ侵攻です。日本はロシアから石油・天然ガスを輸入していますが、2021年5月に6%だった石油輸入量が、ロシアへの経済制裁により2022年5月には1%へ大幅に輸入量が減っています。

さらに天然ガスも、三井物産や三菱商事などが出資している石油・天然ガス事業「サハリン2」に対し、ロシア政府が新たに設置する会社に移管することがロシアから発表されました。天然ガスの供給に打撃を与えるのは確実とみられます。

このような状況のなか、電力不足対策として2022年6月30日から老朽化している姉崎火力発電所5号機が運転を再開し、東京電力管内への電力供給を開始しました。この再開により、東京電力管内の予備率が1%改善することが見込まれています。冬場はさらに電力のひっ迫が予想されるため、他の火力発電所も稼働させる必要が生じる可能性があります。

インフレへの影響も深刻です。石油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰により電気料金も値上がりが続いており、インフレが加速する原因になっています。各家庭や企業も節電によって電気料金を引き下げる必要に迫られています。

電力使用の1/3を占めるエアコンの節電が重要

家庭用電力で最も使用量が多いのがエアコンで全体の1/3を占めます。家電専門家もエアコンを重点的に節電することを勧めています。

自然エネルギー庁の資料によれば、エアコンの家庭での消費電力割合は、夏季で34.2%、冬季で32.7%といずれも1/3前後の大きな割合を占めています。他の家電も夏季・冬季同じような比率ですが、冬は冷蔵庫が減り、給湯が増えるのが異なる点です。

したがって、エアコンで節電できるポイントを把握して、実行することが効果的に電力使用量や電気代を減らすコツといえます。

エアコンのフィルター清掃で電気料金数千円引き下げも

エアコンの使用で確実に行う必要があるのが、フィルターの清掃です。エアコンのフィルターを清掃すると冷暖房の効率が良くなり、設定温度を変えることで節電につながります。

経済産業省自然エネルギー庁の公式サイトによると、フィルターを月に1回か2回清掃すると目詰まりしないことにより冷暖房効率が良くなり、年間約860円電気代が下がると試算しています。大抵の家はエアコンが複数台あるので、2台なら約1,720円に引き下げ幅が拡大します。

さらに、フィルターの目詰まりをなくししっかり冷暖房することで、残存冷気または残存暖気を利用して1日1時間エアコンの使用時間を短縮すると、冷房で年間約510円、暖房で年間約1,100円電気料金を下げることができます。温度設定の調整と使用時間の短縮で年間数千円電気料金を節約できる計算です。

参考:経済産業省自然エネルギー庁「無理のない省エネ節約」

この試算を見てもわかるように、エアコンは冬場のほうが電気代はかかります。夏に節電するイメージがありますが、冬場の節電も非常に重要なのです。とくに冬場は熱中症の心配もないので、節電に取り組みやすい季節ともいえます。

節電方法を間違えるとマイナスになる

注意しなければいけないのは、節電は方法を間違えるとかえってマイナスになる場合があることです。

まず避けなければならないのが、猛暑日にエアコンの使用を控えることです。個人差はありますが、万一エアコンをつけないことで熱中症になって入院すれば、医療費のほうが高くつくことになります。仕事を持っている人なら減収にもつながってしまうので、かなりリスクの高い節電方法といえます。

また、近くのコンビニに行く程度の短時間(30分程度)の外出では、エアコンはつけたままにしたほうが節電になります。エアコンは設定温度に近づけるため運転直後が最も電気を消費するからです。設定温度に達すれば「弱運転」で安定します。

部屋の照明をこまめに消すのはよいですが、エアコンは頻繁に入/切を繰り返すと節電にならないので注意が必要です。

「節電プログラム」はどのような仕組みか

2022年6月28日、政府は電力会社が実施する「節電プログラム」に参加した家庭に、2,000ポイントを付与する政策を検討していることを明らかにしました。節電プログラムは、電力会社が節電に協力した家庭に節電量に応じてポイントを付与する仕組みです。

例えば東京電力が実施する「夏の節電チャレンジ2022」は、節電チャレンジの対象時間に節電した量に応じて、節電ポイントが付与されます。貯めたポイントはTポイント、Pontaポイントなど人気の共通ポイントと交換することができます。

政府は節電プログラムに参加しただけで2,000ポイントを付与する予定で、民間の取り組みを後押しする形です。電力が不足する時期に限定したキャンペーンではありますが、冬の電力不足時にも実施される可能性があり、注目されます。

エアコン以外で消費量が多い家電も節電しよう

エアコンは季節性の高い家電ですが、一年中平均して使用量の多い家電もあります。代表的なのが冷蔵庫、洗濯機、照明器具、テレビです。

・冷蔵庫
冷蔵庫はスイッチを切ることができない家電なので、年中24時間稼働しています。当然電気代も多くかかるので、省エネ設計の機種を選ぶなどの工夫が必要です。

・洗濯機
夏場は洗濯する機会が多くなり、洗濯機を動かす電気代も多くかかります。洗濯機には「縦型洗濯機」と「ドラム型洗濯機」がありますが、ドラム型のほうが電気代は安く、洗濯物が乾きやすいというメリットがあります。

・照明器具
人がいない部屋の照明を点けっぱなしにすることは、代表的な電気の無駄使いです。他の部屋からリビングルームに移動し、すぐ部屋に戻るつもりがそのままリビングルームに数時間入り浸りになることはよくあるケースです。会社も含めて、自分が最後に部屋を出るときは消灯するようにしましょう。

・テレビ
見ていないテレビをなんとなく点けておく人もいるでしょう。見ないときは消すことを心がけるほか、省エネモードに設定できる機種の場合は機能を利用するのもよいでしょう。

エネルギーミックス達成のためにできることは?

いま世界は再生可能エネルギーの普及を進め、原子力や火力による発電所を廃止する流れになっています。日本も2030年までに総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を22~24%程度にする「エネルギーミックス」の目標値を定めています。

エネルギーミックスの計画では再生可能エネルギーの他に原子力、LNG、石炭もまだ重要なエネルギー資源として想定しています。原子力は未だに再開に慎重な声が多く、LNGや石油、石炭を使った火力発電に頼らざるをえない状況が当分続きそうです。それだけに世界的なエネルギー不足は再生可能エネルギーに極端に偏ることのリスクを露呈した形になっています。

エネルギーミックス達成に貢献し電気代も安くなる節電は、夏と冬の両方に共通して行いたい取り組みです。また、基本的には必要ない電気を消すなど一年を通して節電を心がけることが求められます。

(提供:Incomepress



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