この記事は2022年6月22日に「第一生命経済研究所」で公開された「電気代の高騰と猛暑が家計を圧迫」を一部編集し、転載したものです。


家計
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目次

  1. エネルギー価格の上昇が家計を蝕む

エネルギー価格の上昇が家計を蝕む

世界的な物価高と円安進行によって、家計は大きな打撃を受けている。ウクライナ情勢の緊迫化等を背景としたエネルギー高や食料高が進んでおり、更に為替が早いペースで円安方向に推移していることも物価高に拍車をかけている。

とりわけ家計にとって大きな負担となっているのが、電気代である。消費者物価指数を見ると、電気代は上昇が続いており、仮に2022年4月時点での水準が2022年の間続くことになれば、2人以上の世帯(総務省家計調査)での負担は、2021年と比較して、年間約1万9千円程度増加することになる。家計負担の増加に対して、賃金の伸びが追い付いていない状況となっており、家計の逼迫感は強まっている。

第一生命経済研究所
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電気代が高騰する中で、更に追い打ちをかけるのが猛暑である。今年の夏はラニーニャ現象(*)によって暑い夏となることが予想されている。2021年6月に予想された夏におけるラニーニャ現象の発生確率は10%と低く、実際、昨年の夏にラニーニャ現象は発生しなかったが、2022年についてはラニーニャ現象の発生確率は昨年と比較して高く予想されている。

2022年の夏にラニーニャ現象が発生し、猛暑となれば、家庭でのエアコンや扇風機等の使用時間が長くなり、消費電力量も増加することが想定される。エネルギー価格の上昇によって電気料金の単価が高騰する中、電力消費量の増加を余儀なくされることで、家計の電気代負担額は更に増額する可能性がある。

(*)ラニーニャ現象が発生すると、西太平洋熱帯域の海面水温が上昇し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動が活発となり、日本近辺では、夏季は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向がある。

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テレワークによる電気使用量の増加も、家計に重くのしかかる。新型コロナウイルスの感染拡大以降、テレワークは急速に普及し、雇用型就業者のテレワーカーの割合(全国)はコロナ前の2019年の14.8%から2021年には27.0%にまで上昇している。

テレワークの普及自体は多様な働き方ができる点で望ましいことであるが、電気代という点では負担額の増加に繋がる。テレワークを実施することで、消費電力が企業から各家庭に移ることにより、家計の負担額が増加することになるからだ。仮にエアコンの消費電力を650W、照明の消費電力を50W、ノートPCの消費電力を30W、これら電化製品がテレワークによって稼働するものとし、1日8時間、月22日テレワークを実施した場合、1カ月当たりの電気代の増加額は、約3,850円と算出される。

家の広さや同居人の生活スタイル(家にいる時間の長さ)などによって増加する電気代は異なるため、電気代の増加額については幅をもって考える必要があるものの、少なくない金額がテレワークの実施によって生じることになる。今後、テレワークによる家計負担を回避するための節約行動や、後述する政府によるポイント還元策を狙って、オフィス回帰の動きが一部で生じ、テレワーク比率を低下させる可能性もある。

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政府は2022年6月21日に物価・賃金・生活総合対策本部の初会合を開き、電気代や食料への負担軽減のための方針が示された。

電気代に関しては、家庭が節電に協力した場合にポイントを付与する制度を作ることが表明された。具体的な支援策については、現時点では明らかになっていないが、一定の節電を行った家庭に対して、幅広い用途で利用できるポイントを付与することで、家計における電気代の負担軽減と各家庭での節電の促進を両立させる効果が生じることが期待される。電気代の負担は家計を強く圧迫しており、早急な支援が求められる。

第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 小池 理人