本記事は、児玉隆洋氏の著書『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』(幻冬舎)の中から一部を抜粋・編集しています

若い国に起きる「人口ボーナス」

ボーナス
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

私たちの住む日本、そして世界はマクロ的に見るとどうなっていくのか、経済の大きな流れについて触れてみたいと思います。

医療の進歩で人類の寿命は飛躍的に延びました。人生100年時代といわれる今は、50歳でも残り50年。20歳なら残り80年もあります。長期スパンでのトレンドを知っておくことは、お金のベーススキルとして重要です。これからどのように収入を上げていくか、運用をどう考えるかにも深く関わってきます。

まず、世界のメガトレンドとして押さえておきたいのが、人口の爆発的な増加です。今、世界の人口は約80億人ですが、1900年頃には16億人ほどでした。つまり、たった100年ちょっとで5倍に増えたことになります。西暦1000年頃は約3億人、1500年頃は約5億人、1800年頃でもまだ10億人ですから、近年の増加がいかに急速か分かります。ここからまだ人口は増え、国連の予測では2030年には85億人、2050年には97億人、2100年には109億人に達する見込みです。

どこで人口が増えるかというと、ほぼアフリカとアジアです。国連の人口予測※30によれば、2050年までの人口増加の半分以上はインド、ナイジェリア、パキスタン、エチオピアなど、ほぼアジアとアフリカに集中しています。インドは2027年頃には中国を抜いて世界最多人口の国になる予想です。ナイジェリアは2050年頃にはアメリカを抜いて世界3位の人口になると推計されています。

※30:国際連合広報センター「世界人口推計2019年版」より

人口が増える国に起こるのが「人口ボーナス」です。これは人口増加がもたらす著しい経済成長のことを指します。どういうものかというと、まず人が増えるので活気が出ます。新しい商品が生まれ、人々は欲しいものが増えて購買力が上昇していく。すると、売り上げが上がって賃金も上がる。その結果、人々は収入が増えるため、さらに購買力も上がっていく……という具合に、いいスパイラルが勢いよく巻き起こっていくのです。経済が発達して人口も多い国は、国際的な市場としても発展してお金が集まります。

そして、同じ人口増加でも若い人のボリュームが多い国ほど、人口ボーナスの勢いは増します。若い人は好奇心が旺盛で購買欲も高いためです。さらに、新しいテクノロジーを取り入れるのも早いので、メタバースやAR、フィンテックも、今後はアフリカ、アジアで大きく広がっていくでしょう。

総務省が出している「世界の統計2022」によると、若い人が多いのはアフリカです。南アフリカ共和国の中位年齢※31は27.6歳。ケニアは20.1歳。ナイジェリアはなんと、18.1歳です。アフリカは人口も増加していくので、これからテクノロジーも経済も、勢いよく成長していくことは間違いありません。

※31:人口を年齢順に並べたときに中央に位置し、人口を2等分する年齢。中位年齢が低いほど若い人が多い国となる

ちなみにアメリカの中位年齢は38.3歳、中国は38.4歳、イギリスは40.5歳。気になる日本は48.6歳で先進国の中でもかなり高いです。ただ、1950年の高度成長期頃は日本の中位年齢は22.2歳でした。やはり当時は若く、エネルギー溢れる時代だったのです。

Column 詐欺の多いアフリカ

ABCash Technologiesはアフリカでも金融教育プロジェクトを実施しています。オンラインでアフリカ向けに英語でお金のトレーニングを行うプロジェクトです。

海外での金融教育は全く初めての領域でした。若手メンバーの「発展途上のアフリカは大きなお金の不安を抱えているはずだから、ぜひとも挑戦してみたい」という強い意気込みがあり、私もSDGsに貢献するという経営方針から、すぐにGOサインを出しました。そこからスタートしたのが「ABCash for Africa」です。

実際に現地の方にお金のトレーニングを行って気づいたのは、アフリカの人もみな将来のお金に不安を抱えているということです。

アフリカではお金について学ぶ場があまりありません。そのため、みんな話を聞く姿勢が真剣そのものなのです。お金のトレーニングが終わると「日本からわざわざありがとう」と感謝されました。「世界に誇れるかっこいい会社を創る」というビジョンに向け、小さいけれど一歩を踏み出せた瞬間でした。

アフリカの銀行口座保有率は低く、20%未満の国もたくさんあります。ですが、スマートフォンの保有率は非常に高く、いまや成人の多くがスマートフォンを持っています。インターネットの利用も広がり、お金のやりとりもスマートフォンで行うのは当たり前。しかし、現地の人の話によれば便利な反面、詐欺の被害が多いそうです。あの土地を買っておけば儲かる、ここに預ければお金が増えるなど、分かりやすい詐欺にも引っかかってしまう人が少なくないといいます。

世界に向けて金融教育を届ける。プロジェクトは始まったばかりですが、これからアフリカは人口が増えます。若く、好奇心旺盛ゆえに詐欺に狙われる可能性もより高くなる。少しずつでも金融リテラシーを提供し、お金の情報格差をなくしたいと思います。

人口減&少子高齢化で、苦しくなる日本

世界は人口増加がトレンドですが、日本は逆にこれから人口が減っていきます。しかもそのスピードは急速であるという点に留意が必要です。

現在、日本の人口は約1.2億人ですが、2050年には約9,500万人まで減ります※32。2100年には約4,700万人と、現在の半分以下になることが推測されているのです。国土交通省によれば、この変化は1000年単位でみても類を見ない極めて急激な減少だといいます。

※32:国土交通省平成23年「国土の長期展望」資料より

人口が減少すると経済は縮小します。物を買う人が少なくなれば国全体の購買力が落ちるためです。企業の売り上げが落ちれば賃金も下がります。人が減れば住宅を始め、旅行や飲食などあらゆるサービスの需要が減っていき、活気が失われていきます。地方は限界集落や空き家が増えます。住む人も働き手も減ってしまうので、病院やスーパー、学校など、生活に必要な施設も減少して過疎化が進むでしょう。残念ながら人口減は人口ボーナスとは逆に、経済のダウントレンドを意味するのです。

加えて、目を背けられないのが少子高齢化です。皆さんもすでにご存知かと思いますが、少子高齢化で何が困るかというと、年金です。日本の年金は賦ふ課か方式といって現役世代が払う保険料を高齢者に仕送りしています。それとは別に税金も投入されていますが、人口が減少し、少子高齢化が進んでしまうと年金の先細りはどうしても避けられません。内閣府が発表しているデータ※33を見ると、1950年にはひとりの高齢者を12.1人で支えていました。しかし、2015年にはひとりの高齢者を支える人数は2.3人、2065年には1.3人にまで減ります。

※33:内閣府「令和3年度版高齢社会白書」より

支える人数が減れば当然、我々現役世代が負担する保険料は上がります。つまり、懐は苦しくなります。さらに将来受け取る年金も期待できないとなると、悲しいですが、日本は現役中も老後も苦しい国になると予測できるのです。

すでに年金生活は厳しいものになっています。以前、話題となった「老後2,000万円問題※34」は、高齢無職夫婦世帯がひと月あたり5.5万円の赤字であるという当時の総務省の家計調査がベース。月5.5万円の赤字が老後30年続くと約2,000万円になることが根拠となっています。

※34:2019年、金融庁の「市場ワーキング・グループ」の報告書で「老後30年間で約2,000万円不足」と指摘され、物議を醸した

老後2,000万円問題については、「そんなに貯められない」など大きな物議を醸しましたが、決して現実離れしていない数字だと思います。もちろん、個人差はあるとはいえ、今後年金が先細りすることを考えると、現役中に用意したい老後資金は増えていくことになります。

しかし、少子高齢化で現役世代の懐は苦しいわけです。老後資金を貯めたくてもなかなか貯められないのが現実でしょう。今も子どもの教育費、住宅ローンに追われて老後資金を貯めたくても貯められない家庭は少なくありませんが、ますます厳しくなると思います。

結局、貯蓄も十分できず、年金も足りない場合どうなるか。できる限り働いて収入を得るしかなくなります。実際、日本はすでにG7の中で最も高齢者の就業率が高い国です。今の20代が老後を迎える頃は、悠々自適なセカンドライフは過去のものとなり、80歳、90歳まで働くのも当たり前になっているかもしれません。

現役中も老後も懐が苦しいので、買い物は必然的に安いものを求めます。すると、前述した通り、提供する企業側の売り上げは減少。結果として賃金が上がらなくなる……という負のループが一段と深くなってしまいます。そこに人口減というマイナスの経済スパイラルも加わるので、そのスピードは想像以上の速さになる可能性もあります。

脅かすようなことばかり並べてしまいましたが、目を背けてはいけない事実です。日本で暮らす私たちはこれから、史上初の超少子高齢化、超人口減少という時代を生きていかなくてはならない、ということです。これはもう動かしようがない未来なのです。そして、経済的には決して明るい材料ではありません。これまでの常識や親世代の人生のロールモデルは通用しない時代がくると思ったほうがいいでしょう。

困ったら国がなんとかしてくれるだろう、といった甘い期待も捨てなくてはなりません。すでに国も「これからは個人で備えて」と訴えています。iDeCo※35やNISA※36といった税制優遇メリットのある少額投資制度も、そのために国が用意したツールのひとつです。2022年、岸田内閣も「資産所得倍増計画」を方針として打ち出しました。お金を増やすために「貯蓄から投資へ」シフトすることを、国家戦略として掲げています。

※35:個人型確定拠出年金の略称。2001年に開始した私的年金制度で、加入は任意で掛金の拠出や運用は自身で行う
※36:2014年に始まった少額投資非課税制度。2018年には長期・積立・分散投資を支援するつみたてNISAもスタート

生涯、お金に困らないで生きていくためには、自分が50歳、80歳、100歳になる頃の国の姿をできるだけ想像してみること。そのうえでお金のスキルを鍛え、備えていくしかないのです。お金のスキルを制するものは人生を制する。そういう時代に突入していきます。

未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる
児玉隆洋(こだま・たかひろ)
ABCash Technologies 代表取締役社長。1983年宮崎県生まれ。2007年、サイバーエージェントに新卒で入社し、Ameba Blog事業部長、AbemaTV局長などを歴任。マネジメント、マーケティング、メディア開発などを担当し、AmebaBlogを責任者として日本最大級のブログメディアに成長させる。2018年、日本の金融教育の遅れ・お金の情報の非対称性に課題を感じ、ABCashTechnologies設立。お金のトレーニングスタジオ「ABCash」は累計受講者数2 万人を超え、パーソナル金融教育事業で日本最大規模を誇る。「日本スタートアップピッチファイナル」金賞、「すごいベンチャー100」(2019年)、「FINTECH JAPAN」準優勝(2021年)など受賞歴あり。

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