この記事は9月26日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「豊和工業【6203・プライム】工作機械関連、火器、特装車両、建材が主事業 「まもる」をテーマに、ものづくり徹する老舗」を一部編集し、転載したものです。


豊和工業は、110年超の歴史を持つ産業用機械の老舗だ。主力の「工作機械関連」事業では自動車部品製造ラインの設計・製造を行い、その他に自衛隊向けの小銃、スポーツライフルなどの「火器」事業、路面清掃車などの「特装車両」事業、防音サッシ・防水扉・防水板などの「建材」事業と特徴ある4事業を幅広く展開する。同社は近年の自動車電動化、社会情勢の変化などをチャンスと捉え、各事業で更なる成長に挑んでいる。

▼塚本 高広社長

豊和工業【6203・プライム】工作機械関連、火器、特装車両、建材が主事業 「まもる」をテーマに、ものづくり徹する老舗
(画像=株主手帳)

時代に合わせて4事業を展開 主力は自動車部品製造ライン

豊和工業の前身は、1907年に動力織機の製造を目的として創業した豊田式織機株式会社だ。現在は主に「工作機械関連」「火器」「特装車両」「建材」の4事業があり、対売上高比率はそれぞれ、35.6%、15.4%、14.5%、15.0%となっている。

全体の3割超を占める工作機械関連事業で同社が得意とするのは、自動車部品の製造ライン一式の設計・製造で、主に四輪・二輪用部品加工ラインが多い。これまでスズキやホンダ、SUBARUなどの完成車メーカーの国内外工場、Tier1以外の部品サプライヤーなど国内外の累計50社に納入してきた。

「ラインの受注は、新車種発表やモデルチェンジの3年ほど前からスタートします。図面に基づき、製品に要求される精度、年間製造個数から割り出した『サイクルタイム』(*1)などを実現することが重要です。求められる保証範囲は広いですが、その分1ライン当たりの利益は大きい」(塚本高広社長)

工作機械に次ぐ火器は、国内唯一の小銃メーカーである同社を代表する事業だ。戦前から旧日本軍の要請で小銃を納めていた歴史があり、現在も自衛隊向けに小銃や迫撃砲などの防衛装備品を製造する。

「小銃は1964年に64式7.62㎜小銃を、1989年に89式5.56㎜小銃、そして2020年には当社が開発したHowa5.56が20式5.56㎜小銃として陸上自衛隊に正式採用されました」(同氏)

加えて事業の安定化と更なる成長を目的に、1980年頃から海外市場向けスポーツライフルの事業も展開。米国では性能と品質の良さに定評があり、「Howa」ブランドが浸透しているという。

路面清掃車はシェア8割 業界初の防水自動ドア発表

特装車両と建材は、戦後にスタートした事業だ。特装車両では、あらゆる道路の清掃・維持や道路再舗装の工事現場、採石現場などで使われる路面清掃車をいち早く製品化。現在は国内で8割超と圧倒的なシェアを持ち、4事業の中でも売上高営業利益率は9.0%と最も高い。

国内における路面清掃車の年間販売台数は約120台とニッチ市場となる。そこで同社はEV清掃車、自律走行清掃車やICT化の開発を進めるとともに、国内で培った高い性能・品質・信頼性を強みとして、新興国市場への進出を計画している。

建材では、航空基地や空港周辺の住居、公共施設向けの防音対策工事に使用される防音サッシを業界に先駆けて開発し、1977年にJIS表示許可第1号を取得した。さらに、2000年の東海豪雨で同社工場が被災したことを機に、建物への浸水を防ぐ防水板、防水扉製品を開発・販売。2019年には、業界初の防水自動ドアを発表した。

このように同社は、時代のニーズをうまく取り込み、ものづくり力を強みに新領域へ進出・開拓し、ポートフォリオを拡げてきた歴史を持つ。

2025年3月期売上248億円へ 電動車用設備で受注拡大図る

豊和工業の2022年3月期の売上高は前期比5.0%増の196億9,700万円、営業利益は同78.3%増の9億8,800万円と増収増益だった。工作機械関連事業では、2021年3月期はコロナ禍で受注が停滞し2億円強の赤字となっていたが、前期は回復に転じ工場の稼働率が改善して黒字化。

また火器は近年赤字続きだったが、2021年度からの自衛隊向け20式5.56㎜小銃の納入開始に加え、北米を中心に海外市場向けスポーツライフルの需要が増加。円安も加速して同事業の赤字が大幅に縮小した。また社内改革にも着手し、事業部門間の垣根を低くして人材を臨機応変に流動化させることで生産性が改善し、収益性が向上している。

こうした状況で進める2025年までの中期経営計画では、工作機械関連でxEV(*2)領域、火器、建材を投資による成長領域と位置付け、経営資源を重点的に投入する。3カ年累計で生産性向上改革、品質不良レス化を伴う生産能力拡大のための設備投資に約30億円、技術開発に約10億円、外部との技術提携などに約20億円を投入し、2025年3月期に売上高248億円、営業利益20億円を目指す計画だ。

近年自動車業界では、垂直分業の構図が変わりつつあり、工作機械関連事業も変革の時を迎える。例えば2021年、中国からのEV化関連の設備投資案件で、先行的にラインを発注し、その後完成車メーカーの正式採用を狙うという事案があった。

今後は、顧客図面や仕様待ちの受注スタイルではなく、先回りした提案が主流になる。またxEV化で部品の軽量化・薄型化が進んでおり、こうした加工に最適な次世代機の開発が必要とされるという。

「当社は自動車業界の再編をチャンスと捉えています。ラインメーカーとして培った実績を強みに、お客様のやりたいことの変化のにおいを嗅ぎながら、それを設備提案で具現化することを目指しています。将来は、素材や組み付け、塗装など加工前後の工程までご提案の対象を拡げ、最終的には工場全体の『スマートファクトリー化』にも取り組んでいきたい」(同氏)

火器事業では、世界的な安全保障状況が不安定化する中、国防を下から支える防衛装備品メーカーとして、生産能力の向上を図る。また同事業は赤字体質が課題だったが、20式5.56㎜小銃が量産に入り、今後は開発費が圧縮されることから黒字化を見込む。

また建材事業では、売上の中心となる防音サッシの高付加価値化を推進。さらに気候変動の観点から大きな市場拡大が見込める防水製品のラインナップ拡充、販路拡大も計画する。

「人々の幸せな社会生活を守り、ものづくりと共に成長し続けるのが当社のパーパス(存在意義)と中計にも明文化し、決意を新たにしました。企業力の源泉であるヒトを育てる人事・教育制度や組織改革にも取り組み、市場ニーズの深掘りと先取りをしながら企業価値を高めたい」(同氏)

▼工作機械関連事業では自動車部品加工ラインなどを手掛ける

駒井ハルテック【5915・プライム】橋梁・鉄骨の両輪で社会インフラ支える 収益力向上と環境事業加速で業績拡大へ
(画像=株主手帳)

▼陸上自衛隊に正式採用された20式5.56mm小銃

駒井ハルテック【5915・プライム】橋梁・鉄骨の両輪で社会インフラ支える 収益力向上と環境事業加速で業績拡大へ
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▼路面清掃車は国内シェア8割超を誇る

駒井ハルテック【5915・プライム】橋梁・鉄骨の両輪で社会インフラ支える 収益力向上と環境事業加速で業績拡大へ
(画像=株主手帳)

(*1)1つの製品の製造にかかる時間
(*2)電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV、PHV)、水素燃料電池自動車(FCV)の電動化された車の総称


2022年3月期 連結業績

売上高196億9,700万円前期比 5.0%増
営業利益9億8,800万円同 78.3%増
経常利益13億円同 41.6%増
当期純利益10億6,200万円同 9.7%増

2023年3月期 連結業績予想

売上高197億円前期比 0.0%増
営業利益2億3,000万円同 76.7%減
経常利益2億8,000万円同 78.5%減
当期純利益2億3,000万円同 78.4%減

*株主手帳10月号発売日時点

塚本 高広社長
Profile◉塚本 高広(つかもと・たかひろ)社長
1954年生まれ、滋賀県出身。1978年、豊和工業に入社。2003年、ホーワマシナリーシンガポール取締役社長。2005年、取締役機械事業部工作機械グループ営業担当部長。2016年、代表取締役社長に就任。2018年より代表取締役社長兼事業部門長就任(現任)。