バイオ燃料電池の可能性
エコロジーでエコノミカルなバイオ燃料電池。バイオ燃料電池を使って自社製品の展開にも夢が広がりそうだ。ここで大学や研究機関、企業などのバイオ燃料電池の研究・開発例をいくつか紹介しよう。
ソニー株式会社
試作とはいえバイオ燃料電池の実用化に向けた開発をいち早く発表したのがソニー株式会社。2007年にブドウ糖で発電するバイオ電池の試作を発表した。当時パッシブ型のバイオ電池として世界最高出力の50ミリワット/40ccを実現しウォークマンを再生。2009年には、コーラを注入すると発電するデモを披露している。
なおタカラトミーが同社のバイオ電池試作機を搭載したリモコンカー「エネカーゴ」を試作している。
東京理科大学
2021年に東京理科大学が筑波大学、理化学研究所、山形大学と共同で開発したウェアラブル型バイオ燃料電池アレイを発表。これは、人の汗中にある乳酸をエネルギーとする。出力数は、アレイ(配列)によって異なるが歩数などを測る活動量計を最長1.5時間作動できている。
同大学は、尿で発電するおむつ電池も作っている。
実用化には課題解決も必要
バイオ燃料電池が実用化され、さまざまな分野で展開されるためには解決すべき課題もある。その一つが発電効率の問題だ。例えば先に紹介した汗の電池は、しっとりと濡れるほどの発汗が必要だが人によって発汗性が異なるため発電力も異なってくるだろう。バイオ燃料電池は、まだまだ改良する点がたくさんあるが将来的な成長性は高くアイデア次第で未来への可能性は広がりそうだ。
バイオ燃料電池に関するQ&A
Q.バイオ燃料電池のメリットは?
A.バイオ燃料電池には、多くのメリットがあると期待されているが、主に以下のメリットが挙げられる。
- レアメタルを必要とせず、安価で大量に調達できる
- 触媒に金属を使用せず、環境負荷が少ない
- 生体親和性が高い
- 環境浄化につながる
まとめると環境に優しくクリーンでコストも低く抑えられるメリットがある。CO2を排出しない電池として水素燃料電池も実用化されているが、水素燃料電池は触媒に白金などの希少な金属を必要としておりコストが高くかかるのが問題だ。一方バイオ燃料電池は、身近にある酵素や微生物を使って発電する電池であり安価で大量の原料調達が可能という大きな違いがある。
また酵素を触媒としているため生体親和性が高くペースメーカーなどのように体内で使用する場合も安心で安全に使用できるだろう。
Q.バイオ燃料電池のデメリットは?
A.バイオ燃料電池は、2022年時点で研究開発中であるため、デメリットというには忍びないが、あえていうと「微量な電力しか発電できない」「他のエネルギーに比べて効率の面で劣る」といった展はデメリットとなる。各研究機関や企業の研究により年々出力は向上されており、ハードの省電力化と相まって実用化の目途が立っているものも少なくない。
それでも現状では、広い分野での実用化に向けて課題も多い。
Q.バイオ燃料電池の課題は?
A.バイオ燃料電池の課題は「発電効率の改良」「安定性の向上」「酵素の耐久性」などがある。これらの課題解決に向けて複数の酵素の組み合わせ、酵素の遺伝子改質による酵素自体の耐久性の向上や電極中の酵素周辺のpH環境を酵素に適した構造にするなどの研究が進行中だ。発電効率の改良は、多くの研究機関が進めている。
しかしバイオ燃料電池が実用化されるためには、安定性のさらなる研究が求められそうだ。