2022年に起きた急激な円安で割安になった日本の不動産を外国人が爆買いしているといいます。外国人が日本の不動産を買っているのには、どのような背景があるのでしょうか。本記事では、外国人が日本の不動産を買う理由と、不動産投資に与える影響を考察します。

マンション価格高騰に拍車か?外国人が円安で日本の不動産を爆買い
(画像=Vittaya_25/stock.adobe.com)

円安で日本の価値が下がっている

日本円の下落に歯止めがかかりません。2022年10月11日15時現在、ドル円相場は1ドル145円78銭と、年初1月3日の115円32銭より30円46銭の円安となっています。率にして26.4%円が下落したことになります。

円安になった直接の原因は、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が2022年に入って行った度重なる利上げによる日米金利差の拡大です。グラフで見ても国債金利差とドル円相場が相関関係にあるのは明らかです。

2022年1月6日に1.52%だった5年国債の金利差は9月13日には3.55%差まで拡大し、その後9月27日には4.12%にまで差が広がっています。ここまで金利差が拡大すると円を売ってドル資産を買ったほうが明らかに得と考える投資家が増えるため、当面円高に転換するのは難しい状況です。

一方で、極端な円安は単なる金利差の要因だけでなく日本の価値が下がっていることの表れという論調もあります。かつては有事になると日本円が買われるのが外国為替市場の通例でしたが、その常識が通用しなくなったほど日本円の信任が低くなったと解釈することができるというのです。

経済成長率の数値を見ても日本の凋落は明らかです。IMF(国際通貨基金)の調べによると、2021年度の世界経済成長率(GDPの対前年比)は中国8.08%、英国7.441%、フランス6.766%、米国5.671%に対し、日本はわずか1.657%にとどまっています。日本はもはや成長しない国という評価が定まりつつあります。日本が成長できる国になるように経済政策を転換しない限り、円がかつてのような信任を取り戻すのは難しいといえます。

外国人はなぜ日本の不動産を爆買いしているのか

急激な円安局面のなか、外国人が日本の不動産を爆買いしていることが話題になっています。外国人はなぜ日本の不動産を爆買いしているのでしょうか。理由は外国人から見ると日本の不動産がお買い得になっているからです。

2022年の円相場で円がドルに対して年初比で26.4%下落したことは、外国人から見れば26.4%日本の商品を安く買うことができることを意味します。同じ1万ドルの換金でも1月3日は約115万円分の商品しか買えなかったのが、10月11日に換金した人は約145万円分も買うことができるのです。約30万円も多く使えるのですから、消費意欲が湧くのも当然でしょう。

なかでも不動産は高額な商品ですので、円安の恩恵を大きなスケールで受けることができます。年初と比較して1億円の物件なら約7,400万円で購入できる計算になります。

もう1点、世界的な物価高騰の結果、日本の物価が諸外国に比べて安い水準にあることも理由に挙げられます。各国の物価水準を比較するときに使われる有名な「ビッグマック指数」(The Economist発表。マクドナルドのビッグマックがその国ではいくらで食べられるかを表す指数)を見ると、ビッグマックの価格がスイス925円(最高値)、米国710円、英国612円、中国490円に対して日本は390円となっています(2022年7月現在。日本円ベース)。日本は相対的に物価が安い国といえるでしょう。

不動産価格はどうでしょうか。一般社団法人日本不動産研究所が発表した「第18回国際不動産価格賃料指数」(2022年4月現在)によると、マンション価格変動率がニューヨーク5.5%、台北4.0%、香港1.5%に比べ東京は1.4%にとどまっています。高騰が続くマンション価格でさえもニューヨークに比べれば東京はまだ伸び率が低い水準にあります。これに円安が加わり、外国人投資家の目には日本の不動産の価格は魅力的な水準に映るのでしょう。

外国人が買っている不動産とは

外国人が日本の不動産を爆買いしていることが話題になったきっかけが、テレビ朝日系「モーニングショー」での報道でした。報道ではインド系アメリカ人が白金高輪の高級タワーマンションを内覧する模様が紹介され、5億円の価格にも「東京にしてはリーズナブル」と気に入った様子でした。その外国人は高級マンションを何件か内覧したようです。

また、東京のマンションだけでなく、リゾート地にある苗場プリンスホテルがシンガポール系の政府ファンドに売却されたことも報道されていました。

同じくテレビ朝日系のニュース番組でも外国人の不動産爆買いが報じられましたが、こちらでは香港人が日本の不動産を購入する模様が紹介されていました。香港でも日本の不動産が人気で、この香港人は香港からリモートで内覧を行い、札幌のマンション購入を決めました。

香港と並んで日本の不動産を爆買いしているのが中国人投資家です。京都の町屋や一戸建てを購入し、民泊として運用している投資家が多いといいます。このように、高級マンションだけでなくさまざまな不動産タイプに外国人の手が伸びているのです。

外国人が買ってくれる?キャピタルゲイン派に追い風か

外国人が買ってくれることは、キャピタルゲインを目的に不動産を購入している投資家には追い風になる可能性があります。国内ユーザーを相手にする投資家はインカムゲイン(家賃収入)を目的に買う人が多いでしょう。外国人留学生は別として、一般の外国人観光客が増えたとしても賃貸需要にプラスになるということは期待できません。

その点、高額物件を中心に保有し、値上がりすれば売りたい投資家にとっては、円安で手持ち資金が増えた外国人投資家はありがたい存在になるでしょう。好立地物件であれば、多少強気の値を付けて売り出しても買ってくれることが期待できます。

低迷していた地方のリゾート地も、外国資本が入ることでリノベーションされ、活気を取り戻すかもしれません。日本の不動産が次々に外国資本に買われていくことを不安に感じる向きもありますが、基本的には日本経済にとってプラスになることは間違いないでしょう。

入国制限緩和による不動産業界への影響は?

政府は2022年10月11日から、これまで1日5万人としていた入国者数の制限を撤廃しています。この措置により、今後円安で割安になった日本への外国人観光客が増え、インバウンド需要の回復が期待されます。小売業界や観光業界にとっては起死回生のビジネスチャンスとなりますが、不動産業界にも少なからず好影響を与える可能性があります。

まず最も大きな需要の回復が期待できるのは、新型コロナウイルスの影響で宿泊需要が減っているホテル・旅館です。外国人観光客が日帰りで日本を訪れることはほとんどないので、必ず宿泊施設が必要になります。ホテル・旅館もある程度強気の宿泊料に設定することも可能になるでしょう。

また、インバウンド需要がかつての水準に戻れば、店舗や支店・営業所の増設が必要になり、主要都市のオフィス空室率も改善することが見込まれます。

好調が続くマンションも、優良物件はますます価格が高騰する可能性が高くなってきました。しかし、売れているのは必ずしも高額物件だけではありません。先述したニュース番組に登場したTRUSTY不動産によると、東京、大阪など大都市圏にある2,000万円程度の物件が次々に売れているといいます。これなら富裕層だけでなく、中間所得層が保有する物件でも売却できるケースがあるでしょう。マンション投資は新しいチャンスの局面を迎えているようです。

※本記事は2022年10月11日現在の情報を基に構成しています。外国為替相場は常に変動していますので、記事中のデータは参考程度にお考えください。

(提供:Incomepress



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