資産アドバイザー(担当者)の選び方

それではここからは、資産アドバイザー(担当者)の選び方について解説していこう。「信頼に足る担当者であるか」を見極めるチェックリストは、大きく分けて以下の3点が挙げられる。

  1. 顔合わせ時
  2. 商品の提案時
  3. 運用を開始した後のメンテナンス

それぞれ簡単に解説していく。資産運用のパートナーを選ぶ際の1つの参考にしていただきたい。

(1)顔合わせ時

まずは顔合わせ時だ。この時点のチェックリストをさらに分解すると、以下の3点が挙げられる。

1. 成績上位者であるか
大手金融機関であれば「全体での営業成績」が、IFAなどの独立系アドバイザーであれば「どれくらいの残高を抱えているか」がこれに相当する。これらが低いと、 1人の顧客に過度な負担を求めてくる場合が多い。

営業成績が悪かったり、あまり残高を抱えていなかったりすると、限られた顧客からたくさんの手数料を取りたいインセンティブが高まってしまう。結果的に、顧客視点ではない提案が多くなってしまうというわけだ。

2. ヒアリングを重視しているか
他社(他行)を含めた顧客資産の全体像を理解しようとしているか、顧客の要望を深くヒアリングしようとしているか、ということも重要だ。資産ニーズが多岐に渡る富裕層の資産管理において、大したヒアリングもなしに「この商品がおすすめです」と提案する“プロダクト・プッシュ型”の営業は論外と言えるだろう。

3. 服装・身なりは整っているか
海外のプライベートバンカーは例外なく身なりがきっちりしている。「自分が他人からどのように見られているのか」という俯瞰的視野(客観的視野)を持てるかどうかは、実は資産運用にも繋がってくる。なぜなら、金融市場を分析する際にも、顧客の資産全体を把握する際にも、同じような俯瞰的視野が求められるためだ。見た目が全てではないが、1つの確認材料にするとよいだろう。

(2)商品の提案時

続いて商品の提案時だ。この時点のチェックリストをさらに分解すると、以下の3点が挙げられる。

1. 投資信託ではなくETFを勧めてくれるか
一般論として、投資信託は相対的にコストが高い。「どうしてもこの投資信託でないといけない」という場合を除き、多くの場面においてETFで十分に代替可能だ。「なぜETFではなく投資信託なのか」という問いに対して、合理的な回答が返ってこない場合は、手数料目的の提案である可能性が高いだろう。

2. 現金を残してくれるかどうか
提案内容が「フルインベストメントではなく、現金ポジションも残してくれるかどうか」も重要だ。担当者目線に立つと、どうしても投資可能金額の全額を運用に回して、できるだけ手数料を取りたいものだ。しかし、現金ポジションも残しておかないと、不測の事態におけるリスク耐性が大幅に低下してしまう。

3. 仕組債の比率・手数料の開示
提案ポートフォリオにおける仕組債の組み入れ比率にも注目したい。仕組債自体は悪ではなく、タイミングや対象銘柄によっては有益な選択肢だ。一方で比較的リスクは大きく、流動性も低いため、あまりにも組み入れ比率が高い提案には注意が必要だ。また、仕組債や保険を含めて、手数料を開示しているかどうかも見極めポイントになるだろう。

(3)運用を開始した後のメンテナンス

続いて運用を開始した後のメンテナンスだ。この時点のチェックリストをさらに分解すると、以下の3点が挙げられる。

1. 乗り換え提案の頻度
ブローカレッジフィー体系の担当者の場合、乗り換え提案の頻度には注意しよう。なぜなら、手数料稼ぎを目的とした無用な乗り換え提案に付き合っていては、なかなか効率的にリターンを積み上げることは難しいためだ。

金融庁は「乗り換え提案において空けるべき期間」のガイドラインを発表しており、現在は180日となっている。そのため、180日を少し超えた時点で乗り換えを提案してきている場合は「手数料稼ぎが目的なのではないか」と疑ったほうがよいだろう。

2. 限定ファンド・ラップファンドの提案
限定ファンドとは、期間限定で募集されるファンドのことだ。しかし、限定ファンドには魅力的ではないものが多い。ラップファンドも高い手数料がかかり、顧客にとっては負担が大きくなりやすい商品なので、基本的には手を出すべきものではない。

これらの商品が勧められる場合は、担当者が上司から「売ってこい」と指示されているケースが多い。限定ファンドやラップファンドを提案されたときは注意が必要だ。

3. 定期報告の頻度
「どれくらいの頻度で報告してくるか」ということも担当者を見極める要素の1つだ。満期までの期間が長い債券でポートフォリオを組んでいたとしても、最低でも四半期(3カ月)に1度は定期報告が欲しい。マーケット環境が不透明な昨今においてはなおさらだ。

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