本記事は、チンさん凡人投資家氏の著書『難しいことはわかりませんが、老後のお金の作り方を教えてください』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。

株式投資の仕組みを理解する

投資,データ
(画像=crizzystudio/stock.adobe.com)

1. 株主は会社のオーナー

株式会社は資本主義に必須のシステムなんです。この仕組みで資本主義は発展してきました。株式を買うことは会社にその株数だけ出資したことになります。そしてその分だけ株主としての権利を持ちます。つまり儲かった利益の分配をもらうんです。その代わりその会社がダメになったら株式の価値はなくなります。そしてその株式を株式市場で売買することができるようになっています。だから誰でも簡単に株主になれます。

―― 株式の値段はどうやって決まるんですか?

その会社がどのくらい利益を上げるか、そして将来性はどうか、競争相手よりも強いか、などで決まります。1分1秒ごとに動いているんですよ。

―― じゃあ簡単に売って乗り換えたりできるってことですか? 会社のオーナーとしてはあまりにも軽くないですか? 昨日までは阪神ファンで今日から巨人ファンみたいな。

2. 株式会社は優れた監視システム

オーナーが簡単に入れ替わるその軽さこそが会社を健全に保ち資本主義を発展させるポイントなんです。

―― それはどういうことですか?

もしオーナー一族がいて他に株主がいなかったら、オーナー一族は勝手なことをしますよね。中には優れた勤勉な経営者もいるだろうけどあまり勤勉に働かない経営者も出てくるわけです。そうすると働かない経営者はどうしますか?

―― 例えば、自分の大学の友達を重役にして、居心地がいい楽しい会社にすると思いますね。みんなでゴルフに行ったり、飲み歩いたり、いやー私もやってみたい!

そうですよね。人間誰しもそんなに強いわけじゃないから、そうなりますね。でもそうなると会社はどうなると思いますか?

―― そりゃあもう社員も働く意欲が低くなってしまうでしょうね。

そうなると会社はダメになってしまいます。どんなに立派な会社でも経営者が怠け者で経営をしっかりしないと会社はすぐに傾いてしまいます。ではどうすればオーナー一族を監視できると思いますか?

―― 経営者の親が会長として見張るとか? でも親がなくなるとやっぱり経営者のやり放題になりますね。

そうなんです。そこで経営者の経営をチェックするシステムとして、株式を市場に上場してたくさんの不特定多数の株主にチェックしてもらう方法にしたんです。経営者が遊び呆けていると、業績が悪くなって株主が株を売って会社から離れてしまいます。株価も下がり取引先からの信用も失われて警戒されるようになります。そうするとますます業績も悪化して最後には会社は倒産してしまうでしょう。

3. 株主の権利は確立されている

―― 仕組みはよくわかりました。しかしもし経営者としては立派でも、ケチで株主に分け前を配らない社長がいたら株主は困りますよね。せっかく投資したのにリターンがもらえませんよ。

そのようなこともあるかもしれませんね。しかし株式会社の歴史が古くて、熟成されている欧米ではそのようなことは起こりません。株主に分け前を渋る会社の株は、みんなが手放すので株価が安くなって経営者が解雇されてしまうからです。欧米では経営者は専門職で、雇われて勤めているのです。

―― じゃあ欧米以外では株主にリターンを払わない会社もあるのですか?

はい、資本主義の歴史が浅い国ではオーナーの力が強くわがままな経営がまかり通っている場合もあります。残念ながら日本も欧米ほど歴史は古くないので、まだ不十分な面はあります。しかし主に気をつけてほしいのは新興国と言われる国々ですね。

解説

社内留保が500兆円もある日本の会社

会社の利益は、税金を支払ったあとは株主のものです。配当や自社株買い(市場から自社の株を買って発行株数を減らすこと。全体の株数が減るのでその分株主に有利になります)などで株主に配ります。ところが日本の会社は社内に貯めているお金が約500兆円あります。これは将来の不景気に備えるので必要だという意見もあります。しかし米国の会社は利益をほぼすべて株主に配ります。一概には言えませんが、欧米の会社の方が株主を重視していると私には感じられます。