4. 超優秀な会社を選ぼう
―― 世界中の会社のオーナーになれるなんて素敵ですね。じゃあ私はiPhoneを使っているからアップルの会社のオーナーになろうかな? チンさんどう思います?
いいと思いますよ。アップルは世界最大の時価総額で、1つの会社で350兆円ほどです。日本最大のトヨタが36兆円くらいなので10倍近いです。
―― でもそんなに大きいともうこれ以上は大きくなれないかもしれないですね。もっと小さくて誰も知らないような会社の方が伸びしろは大きいですよね?
いえ、アップルの方をおすすめします。それはすでに大きくてもさらに大きくなることを繰り返してここまで大きくなったからなんです。だからまだ伸びる余地は大きいですし、現に今でもかなり高い成長率を示しています。無名な会社は割安かもしれませんが、その分将来性が不安定なので初心者が投資するには不向きです。とはいえアップルだけだとたとえ優秀でも1社だけに集中するデメリットがあります。インデックス投資ならその欠点を解消します。
- 解説
ワイドモートを持つ会社は強い
他の会社を寄せ付けない強みを「ワイドモート」と言います。直訳すると「広い堀」です。日本風なら深い堀と言いますね。深い堀、高い城壁といった感じです。強みの中身は高いブランド力だったり、強い技術力だったり、あるいはグーグルのようにみんなが使っているプラットフォームだったりします。それらがあると簡単には新規の会社が入ってこられませんから、いわば独占状態になって高い利益を生むのです。またマイクロソフトなどのソフトは1万本売るのも1億本売るのもコストは変わりませんから、高い収益が上がるのです。
強いワイドモートを持つ会社はハイテク系では上記のアップル、マイクロソフト、グーグル、エヌビディアなどがあります。他には医薬品のジョンソン・エンド・ジョンソン、日用品のプロクター・アンド・ギャンブル、飲料のコカ・コーラ、ネスレ、外食のマクドナルドなど多数あります。
老後資産づくりは株式長期投資1択!
1. 株式投資のギャンブル的利用の危うさを知る
―― チンさん、Twitterとかネットの株式掲示板を見ると売ったり買ったりを繰り返して儲けている人が多いですね。どうやったらうまくいくんですかね?
株価は将来の業績見通しによって激しく動きます。将来のことなんて誰もわからないから見方や情報で大きく変わるんです。またその時の雰囲気や人気によっても変わります。それらの動きを利用して短期に儲ける手法もあります。ただし誰もが儲かるわけではなくて少数の大儲けする人と多数のそうでない人に分かれます。勝ち組には株の取引を専門にしているプロが多く含まれることは言うまでもありません。
―― そうですよね、普通の人には難しいと思います。でも儲かっている人を見るとすごく羨ましいんですよね。
気持ちはわかります。誰でも経験しないうちはうまくいくと思いますよね。やってみてはじめてうまくいかないことがわかる。でもね、資産運用にはそのような手法は全く必要ないんです。
2. 時間を味方にして着実に増やす長期投資
―― えっ、どういうことですか?
一言で言うと短期で大儲けをしようとして、とても無理をしているのです。だからほんの少数の人しか成功できないんです。しかし資産運用は時間を短期間に区切る必要はないので、長期で運用します。その場合は売買を繰り返す必要はないんです。何十年と株を保有すればいいのです。そうすれば会社の成長分は確実に増えていきます。これが資産運用の考え方です。
―― 長期と言っても最後はどうなるんですか?
日本では資産運用の歴史が浅いですが、欧米の資産家は何百年と資産運用をしています。それで何千億円以上もの資産を持っている資産家が大勢いるのです。確かに、日本と比べて、相続税が少ないということもありますね。
―― そんなに持っている方がいるんですね!それでは使い切れませんよね? じゃあ自分ではその資産を使わない場合もあるってことですか?
自分で使うか使わないかは河合さんが決めてください。私はただ長期の方が有利だと言いたいだけです。お子様がいらっしゃるなら生前贈与や相続をしてもいいでしょうし。
―― ずいぶん気長な話ですね。確かにそのくらいの気持ちになればあせって売買する必要はないですね。
- 解説
長期投資を助けるインデックス投信
個別の会社への投資では会社の不振などで株価が下がり、その際に売ることで、投資が途切れます。しかしインデックス投信を使うことで長期での運用が容易になりました。特定の会社への投資ではないからです。特に全世界への投資では自動的に投資対象を入れ替えてくれますから、地域や国を入れ替える必要がないので永久的に投資が可能です。コストも全世界型投信では買付手数料は無料で年間管理費用も0.1%ほどととても安いです(通常の株式投信では買付手数料がかかる場合があります。また年間管理費用の平均値は実質1.5%ほどです)。銘柄を選ぶ費用がいらないからです。また特定の会社や分野に投資する時のようなリスクもありません。
超長期での各資産運用のリターン
―― チンさん、前に不動産投資は難しいというのは習いましたけど株式投資だけでいいんですか?
はい、現預金以外は株式投資だけで十分です。次ページのグラフは過去211年の超長期での各資産運用のリターンを年率で表したものです。1802年から2012年までのデータです。インフレ率を除いた実質のリターンです。これによると現金は年率1.4%ずつ減っています。対して増えているのは金が0.7%、債券が3.6%、株式が6.6%です。ですからこの期間では資産のうち20%ほどを株式で保有していれば、目減りは防げた計算です。それよりも株式の割合が増えれば資産は増えました。債券は3.6%と悪くないですが現在に限れば難しくておすすめできません。
このグラフにはないですが、不動産に投資するリートも株式よりややリターンは劣りますが、株式の次におすすめです。どれをやるにしてもしっかり勉強してから自信を持って実行してください。
1952年広島県神石高原町生まれ。2022年8月現在 70歳
工学部出身にもかかわらず、現役時は学習塾の講師をし、さらに独立して学習塾を経営。株式投資を20代ではじめる。当初は、日本の個別株投資からスタート。
投資については基礎から勉強したことがなかったため、65歳のリタイアを機に株式投資の勉強を一から学び直す。凡人でも成功できる投資を勉強し、実践。
さらにYouTubeで発信することで視聴者と情報を共有しながら投資に対する知識を深める。定期的に勉強会を開き、投資をしているシニア世代と交流もはかっている。
仲間とともに「一緒に勉強して一緒に成功する」がモットー。※画像をクリックするとAmazonに飛びます