この記事は2022年12月3日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「明治電機工業[3388・プライム]製造業の改善支える技術商社年間約1万現場の課題を解決」を一部編集し、転載したものです。
明治電機工業は、エンジニアリング機能を持つ商社だ。顧客の要望に合わせて3,000社を超えるサプライヤーから製品を選定、工場ラインの提案・設計・開発・組立てまで一貫して手掛ける。年間1万件の製造現場の業務効率化に貢献している。1日の受注件数に換算すると40あまり。ものづくりの現場に入り続け、多岐に渡る案件をこなしている。
▼杉脇 弘基社長
厳しい製造現場で磨かれた“最適解”出す体制と技術力
明治電機工業は、トヨタグループを主要顧客に持つ独立系技術商社である。扱う製品はセンサーなどの制御系装置、ロボットアーム、計測器など幅広い。サプライヤーはオムロンや横河電機、パナソニック、明電舎など3,000社を超え、顧客の要望ごとに最適な製品の組み合わせを提案できる。これはグループ会社の製品に囚われない、独立系商社ならではの強みだ。
顧客の割合は自動車関連が50%。工作・産業機械が17%、電気・電子・半導体13%、卸売が11%、セラミック3%、その他6%と続く。売上構成比は商社機能が64%、ソリューションビジネスであるエンジニアリング機能が36%となっている。
足元の業績を見てみると、2022年3月期の売上高は677億4,900万円(前期比6%増)、営業利益は20億800万円(同6.1%増)で増収増益となった。
エンジニアリング機能の年間受注1万件のうち、既存顧客が占める割合は8~9割だ。残りは実績の評判を聞いての引き合いや、培ってきた技術を水平展開することで新規案件を獲得している。1件あたりの平均プロジェクト期間は約3カ月。工場の生産効率向上やラインの一部分の改良、工場全体の新設など、顧客からは大小様々な要望が寄せられる。
「お客様が抱える課題は複雑で、メーカー単体が製品を供給するだけでは解決できません。我々は商社とエンジニアリング機能の両方を持つため、様々なメーカーの製品やシステムを組み合わせて繋げ、最適な形にして提供できる。時には既存製品の改良や当社独自製品を開発して対応します。その対応力・技術力こそが当社の存在価値だと考えます」(杉脇弘基社長)
その対応力と技術力は営業・セールスエンジニア・エンジニアが案件ごとにワンチームを作る協働体制から生まれるという。同社は営業300人、セールスエンジニア120人、エンジニア150人を擁する。
顧客を熟知した営業が、案件の課題に合わせてより専門的な知識を持つセールスエンジニアと最適なエンジニアを招集。営業とセールスエンジニア双方がヒアリングすることで、提案の質を高める。エンジニアは設計開発・製造・システム導入などでその提案を形にし、顧客に提供する。
現在の技術部隊は270名。同社は1980年代から技術に投資を続け、難しい課題に応えられる体制づくりを進めてきた。トヨタグループをはじめとする厳しい製造現場で培われた最適解を探す力が『自分達の抱えている課題に対して、代わりに考えてくれる会社』として顧客との信頼関係構築につながっている。
激変の自動車業界で需要捉え「自らビジネスを作る」
明治電機工業の創業は大正9年(1920年)、およそ100年前に遡る。祖業はモーター修理と電気機器類の販売だ。当時は1,000馬力を超える大型モーターを修理できるのは東海地区で同社のみだった。この大型モーター修理を皮切りに大手メーカーからの受注が舞い込むようになり、工場への部品供給といった商社活動がスタートした。
戦後の高度成長期には大手メーカーとサプライヤーの双方の要望に対応、顧客の成長戦略に合わせて業績を伸ばしてきた。顧客の海外展開に合わせ、同社もアメリカ、イギリス、ハンガリー、中国、タイと拠点を広げている。
「近年は自動車業界をはじめとする環境が激変し、お客様・サプライヤー双方の価値基準が変わってきています。今後は変化をいち早くとらえ、自らビジネスを作り上げていけるよう我々も進化し、変化に対応できる体制づくりをします。また、製造現場での人手不足で求められる仕事の幅が増えており、業務の守備範囲を広げていかなくてはなりません」(同氏)
エンジニアリング機能の強化と水平展開が中計の要
同社は次の100年への成長のための計画Vision2030を策定。その土台作りと位置付けられた3カ年の中期経営計画の成長戦略は、エンジニアリング機能のさらなる強化と自動車分野での技術の水平展開を主軸とする。
「ガソリン車からEV車への改革が進み、現在はそれに対応するためのニーズが多くあります。強みである自動車分野を深堀りして更なる受注拡大を図ります。また、他社自動車メーカーにも進出を狙います。他の地域はまだ自動車部品が充実していない所もあり、水平展開による拡大を目指したい」(同氏)
中期経営計画の最終年度、2024年3月期の売上高800億円、営業利益33億1,000万円を目標に掲げる。
2022年3月期 連結業績
売上高 | 677億4,900万円 | 前期比 6.0%増 |
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営業利益 | 20億800万円 | 同 6.1%増 |
経常利益 | 24億3,900万円 | 同 12.8%増 |
当期純利益 | 17億8,000万円 | 同 17.5%増 |
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 735億円 | 前期比 8.5%増 |
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営業利益 | 27億1,000万円 | 同 34.9%増 |
経常利益 | 28億7,000万円 | 同 17.7%増 |
当期純利益 | 20億円 | 同 12.3%増 |
*株主手帳2022年12月号発売日時点