この記事は9月27日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「駒井ハルテック【5915・プライム】橋梁・鉄骨の両輪で社会インフラ支える 収益力向上と環境事業加速で業績拡大へ」を一部編集し、転載したものです。
駒井ハルテックは、鉄骨など鋼構造物の設計、製造、施工を手掛ける橋梁、鉄骨専門の大手ファブリケーターだ。橋梁と鉄骨の2事業を軸に展開しながら、国内で唯一の中型風車メーカーとしてインフラ環境事業にも取り組む。金属業界全体で材料価格の高騰が大きな問題になるなか、中村貴任社長は「収益力向上が今期の勝負」と話す。
▼中村 貴任社長
業界トップの施工実績 建築・土木両方手がける
駒井ハルテックは、1883年創業の駒井鉄工と1921年創業のハルテックが、2010年に合併して誕生した。主な事業セグメントは、「橋梁事業」「鉄骨・鉄構事業」「インフラ環境事業」の3つがある。2022年3月期の連結業績は、売上高295億5,200万円、営業利益15億1,000万円。売上構成比率は、橋梁が41.9%、鉄骨が55.8%と2事業を軸に展開している。
業界トップクラスの施工実績を誇る橋梁事業は、鋼橋の設計、製作、現場施工をワンストップで担う他、橋梁の維持補修、耐震補強工事まで総合的なサービスを提供する。受注の8割以上が公共事業で、明石海峡大橋をはじめ道路橋、鉄道橋など数多くの実績を持つ。
鉄骨事業では、国土交通省が認定する国内最上級「Sグレード」の工場を保有し、超高層ビルの難易度の高い鉄骨製作を手がけている。Sグレード認定工場は全国でも19しかないが、同社では富津と東北の2工場で認定されている。施工実績は、東京スカイツリー、新国立競技場など著名な大型案件に数多く参画する。
「橋梁と鉄骨の両方をやっていることが我々の強みです。近年の都市開発では、ビルと地下鉄など土木建築一体工事が多い。当社では技術的にも建築と土木で補完しあえます」(中村貴任社長)
材料値上げで収益圧迫 収益力向上が今期課題
20323年3月期の業績予想は、売上高490億円、営業利益7億円の増収減益を見込んでいる。売上高はコロナ禍からの経済活動正常化を見据え、大幅に回復する見込みだが、利益面では鋼材価格やエネルギー価格の高騰など外的要因により減益の予想だ。
「鉄鋼はそもそも仕入れ値が高く、それに加え運送費も上がっています。値上げが収益を圧迫している要因が大きく、どこで落ち着くかまだ見えない。収益力向上が、今期の勝負になります」(同氏)
収益力強化のためには、DX化による工場改革を進め、生産性向上とコスト削減を図っている。具体的には、業務の見える化による製造過程の最適化や検査の遠隔化などだ。今後はAIによる自動化なども計画している。
また、材料値上げは同社だけの問題ではなく、金属業界全体で大きな問題だという。
「業界団体を通じて、大手ゼネコンや設計事務所に対して値上げを販売価格に転嫁するための陳情を続けています」(同氏)
有資格者の育成に注力 年間約15人を新卒採用
もう1つ同社が注力するのが、技術者の人材育成だ。2010年から年間14、15人の新入社員の採用を続け育成している。橋梁の場合、有資格者が多い方が受注に有利になる。なぜなら大型案件の場合、長期の工事期間中に数人が現場に張り付くことになるからだ。
進行中の案件では、沼津~富士の東名高速の床版の取替工事で5人の担当者が現場に出ている。なおかつ橋梁には様々な構造があり、吊り橋型なら吊り橋型の経験者が求められる。
現在社内には有資格者が約50人いるが、競合他社では倍以上いるため大規模案件の参画を見送る場合もあるという。一級土木施工管理技士の資格を取得するためには、5年の実務経験が必要だ。
「橋梁はまず受注ができないと話になりません。経験者が定年を超えてきているケースもあるため、スピード感をもって人を育てないと難しいです。建設業は3K(きつい・汚い・危険)で人気がない時期もありましたが、最近は現場志向の女性社員もいて富津の橋を担当しました」(同氏)
2026年度売上高600億円へ インフラ環境事業に期待
今後の業績目標は、2026年3月期に連結売上高600億円、連結営業利益50億円を目指している。売上高の内訳は、鉄骨事業が2022年度比115%増の354億円、橋梁事業が同45%増の180億円、そしてインフラ環境事業が同60倍の60億円だ。
鉄骨は東京五輪後に首都圏の再開発プロジェクトが再開し、大型案件が増加しているため、2028年頃までは安定した需要が見込まれる。また橋梁も国土強靭化に伴う工事、メンテナンス工事、高速道路の4車線化などのインフラ整備が今後も進められる方針だ。
2事業の安定的な成長に加え、今後成長が期待されるのがインフラ環境事業だ。橋梁・鉄骨で培った高度な技術で、国内で唯一風車の製造を手掛け16年の実績がある。開発するのは、マイナス40度の寒冷地や台風など過酷な地形や気象条件でも稼働できる風車だ。これまで環境省やNEDO*による実証実験やロシア、ブータンなどの国内外で導入実績がある。
「風車はなかなか儲かる事業ではありませんが、やり続けた結果、再生可能エネルギーへの動きが今主流になっています。洋上風車の計画もありますが、どう参画し収益を上げていくかです」(同氏)
▼代表的な施工事例
▼国内で唯一風車の製造を手掛ける
*国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構のこと
2022年3月期 連結業績
売上高 | 295億5,200万円 | 前期比 2.4%減 |
---|---|---|
営業利益 | 15億1,000万円 | 同 231.0%増 |
経常利益 | 18億300万円 | 同 118.4%増 |
当期純利益 | 13億4,500万円 | 同 73.3%増 |
2023年3月期 連結業績予想
売上高 | 490億円 | 前期比 65.8%増 |
---|---|---|
営業利益 | 7億円 | 同 53.7%減 |
経常利益 | 7億5,000万円 | 同 58.4%減 |
当期純利益 | 4億円 | 同 70.3%減 |
*株主手帳10月号発売日時点