AIの登場・進化の歴史
AIの概念の誕生は1950年代にさかのぼる。AIの歴史にはその登場から2022年現在まで、3回の「ブーム」があった。それぞれどのような進化があったのか。
AIの誕生
AIの概念の元となったのは、イギリスの数学者アラン・チューリングが1950年に提起した「機械は考えることができるか」という問いにある。1956年にアメリカで開催されたダートマス会議で、数学者のジョン・マッカーシーが「人間のように考える機械」を「人工知能」と提唱した。これが、AIという言葉が現れた起源だと言われる。
第1次AIブーム(1960~1970年代前半)
当初は、パズルやゲームのような明確なルールのもと、「推論」と「探索」をするAIが研究された。推論とは人間の思考プロセスを記号で表現し、実行しようとすることだ。探索は、目的となる条件の解き方を場合分けして探し出すことを指す。
しかし、推論と探索でAIが処理できるのは簡単なゲームのようなものに限られ「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」と表現された。
この時代のAIで注目されたのは、1966年に開発された「イライザ」と呼ばれる言語処理プログラムだ。短いテキストで指示すると、まるで会話をしているような反応(結果)が返ってくるチャットボットの初期型に当たる。現在、スマートフォンで使われている「Siri」の起源でもある。
第2次AIブーム(1980年代)
1980年代には、人工知能に知識をルールとして教え問題解決させる「エキスパートシステム」が実現する。これが、第2次AIブームのきっかけとなった。
人間が問題に取り組むときには、今までの知識や経験の情報をもとに解決法を考える。エキスパートシステムはこれをAIで再現し、さまざまな知識ベースから論理に基づいた推論で正解と思われるデータを導く。
通販サイトで閲覧履歴からおすすめ商品が表示されたり、ニュースサイトで日頃よく見ているテーマに近い話題が頻繁に表示されたりするのは、エキスパートシステムを使っているからだ。
第3次AIブーム(2000年代後半~現在)
2023年現在、後述する機械学習の実用化と深層学習(ディープラーニング)の登場によって巻き起こった第3次AIブームの只中だ。このブームは昨今の技術革新の急速さとその影響力を如実に示している。
特に最近のトレンドとして、テキスト生成に関するAI技術が注目されている。OpenAIが開発した大規模言語モデル(LLM)のGPT-3やGPT-4、対話に特化した言語モデルのChatGPTは、人間に近いレベルで自然なテキストを生成する能力を持つ。ChatGPTを実際に使用してみて、これまでとは違う自然な文章に驚いた人も多いのではないだろうか。これにより、自然言語処理の分野で大きな進歩がみられ、人間とAIのコミュニケーションの可能性が広がった。
また、画像やイラストの自動生成技術も進化を遂げている。AIが人間の美的感覚を学び、完全とは言えないまでもクリエイティブな作品を生み出すことが可能となった。このような技術の進歩は、デザインや芸術の分野におけるAIの活用範囲を拡大している。
さらに、検索エンジンの技術もAIの進化によって大きな変化を遂げている。MicrosoftのBingは、AIを活用したより高度な検索結果の提供を目指しており、ユーザーのニーズにより精度高く応えることが可能となった。
一方、AI研究の権威であるレイ・カーツワイル氏が「2029年にAIが人間並みの知能を備える」「2045年に技術的特異点(シンギュラリティ)が来る」と指摘している。この予測が現実のものとなれば、AIは我々の生活、社会、さらには人類そのものの存在を根底から変える可能性がある。これからのAIの進化に対する期待と警戒は、これまで以上に重要となっている。